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長期政権が腐敗するワケと権力者の「自分は知らなかった」のウソ

前回、松本人志の文春砲事件をうけて、JTCでの権力論を考えてみました。

ちょうど今回は、ビッグモーターの件で金融庁の調査を受けていた損保ジャパン社に対して、業務改善命令が下り、同社を長年率いてきた櫻田CEOが退任することに。

今までは、権力者に阿り忖度しないようにするには、会社に、権力者に、生殺与奪を握られないことが大切だと言ってきました。

会社員は複業せよと。収入源を分散化すべきだと。そうすれば、Youtubeで安定した収益を手にする中田敦彦のように、業界内で権力者に意見できるようになります。

ひいては、その様な煙たい存在が、組織を健全に保つことに一役買うのだと。

今回は、櫻田CEO損保ジャパンの事例を通じて、そもそも権力者が絶対的な存在になって長期政権を築くメカニズムについて考えてみたいと思います。

権力者が長期政権を築く方法

長期政権の例

・櫻田CEO 損保ジャパン

・松本人志

・ジャニーズ事務所

・安倍政権

・プーチン、習近平、金正恩、、

絶対的な力を得た権力者は、その業界で長期政権を築きますね。合法か非合法かはさておき、力があるので、権力の座に何年も何年も居座ることになります。

通常JTCでは、毎年決まった時期に人事異動があります。特定の重要ポストに誰が座るのか。「人事異動」という名の椅子取りゲームが毎年繰り広げられることになります。

ひとたび、実力者が権力トップの座に就くと、その取り巻き連中を重宝し始めます。

重要ポストは、自分の取り巻きに行き渡るように、非公式に裏工作が行われます。そして、重要ポストを権力者の子分達が埋めていきます。

最初は、任期的に重要ポストが空いていないこともあるので、全てのポストを権力者の取り巻きが占める訳ではありません。

しかし、権力者に力があれば、体制が長期化し、重要ポストも全て自分の息がかかった取り巻き連中が席巻していきます。

毎年、毎年、重要ポストの椅子取りゲームを繰り返していくうちに、権力者に対抗する勢力は一掃されていきます。

権力者自ら、対抗勢力を一掃することもあります。次第に、直接手を下すまでもなく、周りが勝手に忖度して、権力者に都合のいい体制を整えていきます。

そして、誰も権力者に意見などしない組織ができていきます。権力者の周囲はイエスマンばかりです。

権力者に耳の痛い話をするKYな役員は失脚されられます。部長職は出世の道を断たれ、グループ会社に追い出されます。

そうした上で、権力者は「自由闊達な企業文化」を実現しようと、現場でタウンミーティング的なものを開催したがります。

意見のぶつかり合いが新しい文化を生み出すと。大歓迎だと、のたもう訳です。

現場は知っています。権力者に耳障りな意見でも言おうものなら、後で粛清されることを。当然、権力者の意にそうような月並みな意見しか出てきませんよ。

櫻田CEO記者会見にて

「なぜなのかということについては、それはあなた(自分自身)がいたからだというように受けとめるんですけども。私自身がやってきたことは、現場に行って、良いぶつかり合いが大事なんだということで、違う意見同士がぶつかると。ぶつからないところに何もいいものは生まれないということをくどくど言ってまいりましたし、お互いに褒め合うような会議になったときは、『それ駄目なんじゃない? もっと本音でやろうよ』ということを何度も言ってきたつもりです」。

「損保ジャパンから何の報告も、あらゆる案件についてなかったのかというと、決してそういうことではなく、多くの重要な案件はあがってきておりましたので、本件だけがなぜなのかという気持ちは今でもありますが…」

記者会見の一幕

毛沢東の百家争鳴

中国で絶大な権力を握った毛沢東。「百家争鳴」という政治運動を展開します。

百家争鳴運動

「例え中国共産党に対する批判が含まれようと、人民からのありとあらゆる主張の発露を歓迎する」という政治運動。

これを受けて国民は様々な意見を発表したものの、百花運動の方針は間もなく撤回された。

結局この運動において共産党を批判した者はその後の反右派闘争で激しく弾圧された。

そうです。「言いたいことがあったら、何でも主張してねw」とやっておきながら、それを鵜呑みにして、共産党のために意見してきたピュアな人民を炙り出し、一気に粛清です。

この展開を恐れて、絶対的な権力者の下で長期体制が整うと、誰もが口を噤むようになります。権力者が何も言わなくても、周りが勝手に忖度する様になります。

櫻田体制のジャパン社でも同じ様な光景が繰り広げらえれていたことは、推して知るべしです。

自分は知らなかったのウソ

「損保ジャパンから何の報告も、あらゆる案件についてなかったのかというと、決してそういうことではなく、多くの重要な案件はあがってきておりましたので、本件だけがなぜなのかという気持ちは今でもありますが…」

権力者の周りで、取り巻きが勝手に忖度して、物事を決めていく。もしかしたら、権力者は本当に何も知らされていないのかも知れません。

安倍政権での森友問題しかり、今回の損保ジャパンのビッグモーターの一件しかり。本当に権力者は、何も知らなかったのかも知れません。

でも、長期政権になればなるほど、周りがイエスマンだらけになり、勝手に忖度し始めることは自明の理です。

だからこそ、長期政権の権力者は「知らなかった」では済まされず、「知らない」状態をむしろ好き好んでいたと言われていも仕方がないのです。

「知らなかった」ではなく、知ろうとしなかった時点で、知っていたのと同罪ですよと。

だって、イエスマンだらけの長期政権において、耳障りな意見や都合の悪い事実の存在を推定して、拾いに行けるのは権力者だけなのですから。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

権力者が長期政権を築くと、毎年の人事制度を通じて、イエスマンが周囲を埋め尽くしていきます。

そして組織が硬直化して腐敗していきます。

権力の側から言うなら、最高権力として特定の個人が君臨できる期間は制限すべきです。どんな権力者でも、自らの統治期間を延ばすことはできないと厳格に定めるべきです。

そして、権力が腐敗しはじめる前に、内側から意見できるように、自浄作用が発揮されるように、従業員の副業を推進すべきです。(収入源が会社だけなら、誰も恐くて意見しませんから)

どの業界でも、権力が長期化するとロクでもないことは事実です。

私たちは、権力が長期化している際には、組織内でどのような悪癖が蔓延しているかを常に想像してみるようにしたいですね。


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