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短歌 花降る(二月〜四月)

  夕さりて池も朧や影ひとつ
     雲間の月に寝転ぶ「SLIM」
                                  (月面探査機SLIM)

  細胞の破壊と再生その間
      魂の音生まれ続ける

  同じ木にまた新しき花の咲く
      友の本音も上書きされて
 
  朧夜に白木蓮のにじみたる
      風も尋ねんものや思うと
           (まひろを想いて)

  別々の人生の時間割それぞれの
       初めと終わり変わらぬものを

  花束の白の含みし色合いに
       日々の濃淡知らされている

  シャボン玉吹く少女らは百年の
       明日を吹く息強くあれかし

  初蝶や待っていたよ何処生まれ
       棲み家教えて花植えに行く

  電車はや着く家まで目の中の
       今日のさくらの満開を歩く
 
  父が子に花降る中を詫びし日の
       遠くも近き今日の花降る

  親は子に詫びたきことの二つ三つ
       思い当たりし花降れば尚

  オルゴール螺子巻く昼の静かさを
      ゼンマイゆっくりほどけて眠る

  今年また同じ処に母子草
      母とは別の無念を吾も

  不確かな記憶増やしている日記
      明日の空欄ほっとしている

  温かき噓の温度よ珈琲は
      砂糖ミルクも無しで頂く

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