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両面コピーについて思案を巡らせると、三島由紀夫がそこにいた話

バカな人間が真剣に物事を考えるとどれだけバカらしい答えに行き着くかを晒す試みです。


「両面コピーってどうやるの?」と聞いてくる彼らに対して、

私は

「この両面コピーと書いてあるボタンを押してください」としか答えることができません。


人生の先輩である彼らが、そんな当たり前の答えを求めて質問しているはずはない。

何かしらの深い意図や事情があるはずだと気づいたので、そのことについて真剣に考えてみます。


考えうる可能性はこんなところでしょうか。

  1. 他にも用件がある

  2. 字が読めない

  3. 国家転覆を狙っている


今のところの予想としては(1)が最有力と言えそうですが、

馬鹿なので全ての可能性に真剣に向き合いたいと思います。


1.他にも用件がある

実体験として、必ずしも業務連絡や、別の仕事の依頼などが発生するわけではありません。

しかし、ここでいう用件に「コミュニケーション」というものも加えて考えると筋が通りそうです。

「コミュニケーション」の目的はこんなところでしょうか。

A.大抵のことがツーカーで通じるように、深い意志疎通を育む
B.相手の人間性を値踏みする

ツーカーで通じ合うには、思考や力量を双方がある程度さらけだした方が手っ取り早いはずなので、

「私はこんな当たり前のことすらできないのだが」

と、わざわざへり下って見せていることを踏まえて考えると、Bの方が自然に思えます。


とすると、彼らのなんと器の大きいことだろう。


彼らは適正な判断を下すためであれば、自分を小さく見せることを厭わないと言うのです。

そしてなんという演技力だろう。尊敬に値します。

あやうく軽蔑の眼差しを向けそうになりますが、こういった深い思惑があったのであれば今後は我慢した方がよさそうです。



2.字が読めない

続いて、ボタンに書いてある両面コピーという文字が読めないのではないかという仮説について。

インターネットで検索してみると、日本の識字率は99%とのこと。

しかし、もう少ししっかりと色々な記事を見みてみると、

我が国では近年まともな統計をとっていないようなので、どうやらこの数字はアテにならなそうです。

とはいえ、どうせ適当なら100%としてしまってもよさそうなところを、わざわざ99%としているところを鑑みるに、やはり文字の読めない人が一定数存在する事実があるのでしょう。

となるとこの可能性も捨てきれないことになります。

どんなメールが来ても必ず電話で確認をとることや、事前にどんな資料渡しておいても打ち合わせ時に内容が一切頭に入っていないことなど、

彼らは字が読めないのだと考えれば、さまざまな謎に合点がいく。

本件以外の例にも広く当てはまるということは、本命かに思えた(1)よりもこちらの方が有力と言えそうです。


3.国家転覆を狙っている

私は尊敬すべき人生の諸先輩方が、実は字が読めないだなんて信じたくありません。

だから暫定一位に躍り出た(2)を否定するために思案を続けます。

彼らは私の倍以上の時間を経験しているわけだから、越えてきた試練や修羅場の数も当然倍以上のはず。

私には計り知れないような深い意図があって両面コピーの方法を聞いてきていることは疑いようがない。


そして、あらゆる方向性から検討を重ねた結果、

私の尊敬する彼らは、残念なことに私の味方であるとは限らないということに思い至った。


直感的に身の危険を感じた私は、彼らのことをよく知っておくために、彼らが青春を捧げたという全共闘運動とやらの伝説の討論なるものを動画サイトで見ました。


はっきり言って何を言っているのかさっぱりわからなかったのですが、

あえて私の理解の範疇でその光景の言語化を試みると、彼らは意志と意志で直接会話しているように思えました。

討論という以上、言語を交わし合っているのは確かですが、それはあくまで便宜上のことであり、言語で簡潔しているようには到底思えませんでした。

その場で思いついた言葉を無作為に投げあっているようしか聞こえないのですが、双方のツラガマエは真剣そのもので、相手の意をよく汲み取り、尊重し合いながら互いに真理に辿り着こうという気概が感じられる。

つまり彼らは、

我々の言語で言うところのテレパシーのようなもので意思疎通を行なっているようです。

そう考えれば、部外者には到底理解できそうにないあの会話が部外者から伝説の討論などと呼ばれていることにも頷けます。


そうに違いない。なぜこのことにもっと早く気が付かなかったんだ。


今現在、我々は言語や文字、数学によって意思疎通を行なっています。


つまり、この世界は少なくとも、彼らが全共闘運動によって求めたテレパシー世界ではないのです。

テレパシーによる意思疎通が可能な彼らにとって、言語や文字、数学などというものは、意思疎通や情報伝達の際には無用の長物であるに違いない。


そう考えると、(2)についてもある意味では的を射ていたのかもしれない。


彼らはテレパシー世界を諦めたのだろうか。


それが否であるからこそ、

彼らは両面コピーの方法を我々に聞いてくるのである。


彼らは全共闘運動によって暴力の無力さと、急激な変革の無謀さを学んでいる。

より狡猾で長期的な計画によってこの世界を変えようとしているのだ。

その計画の概要はこうに違いない。


両面コピーの方法を尋ね続けることで、この世界の成長速度を抑制するというのが、

まずはわかりやすい理由のひとつだろう。

しかし、狡猾な彼らがこの行為によって狙っているのはたったそれだけのことではない。

一挙手一投足に十重二十重の目的が秘められている。

テレパシーで繋がる彼らが大挙して、いたるところで同時多発的且つ長期的に何度も何度も両面コピーの方法を尋ねることによって、

勤勉なコピー機メーカーは自社のコピー機になんらかの問題があるのではないかと、ありもしない問題に悩まされることになる。

ありもしないニーズに応えようとすることで、本当に必要な機能の探求からややズレたところで技術が発達してしまう。

もうお気づきの方も多いと思うが、

ガラパゴス携帯という物は、彼らのこういった地道な工作活動の賜物なのである。

日本が携帯電話産業で明らかに世界から取り残されたということは周知の事実。

今現在の時価総額世界最大企業がAppleであることを考えると、この損失の大きさは計り知れない。

さて、彼らは嫌がらせでこんなことをしているのだろうか。

そうではない。前述の通り、彼らは言語や数学から解放されたテレパシー世界を目指している。

それこそが人類の進歩であると考えている。

我々は、データによってより整理整頓された世界に向けて日々前進しているつもりでいるが、

テレパシーという完璧な情報伝達能力を持った彼らの目には、後退しているようにしか見えていないのだ。

そんな日本を、世界を彼らは憂いているのだ。

既にアカシックレコードを読み取るに至った彼らは、完全なる意識の統合を目指しているのだ。



というSF小説を書こうと思うのですがどうでしょう。





は?

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