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店舗探しの旅

マガジン「実店舗を開くまでとそれからの1年」

6本目の記事です。



7年越しの店舗探し

店舗は一度決めると、なかなか変えられません。
稀に軽やかに移転拡大していく方もいるけど、圧倒的少数派のように思います。

私がそう思って決められずにいたわけではないことは以前書いていた通り。

自宅教室か、講師か。
店舗かまかないか。
店舗やるの?やらないの?
体力大丈夫?などなど

悩みながら、振り返ると店舗探しを7年に及んでやっていました。
もはや趣味?ライフワーク?みたいになっていた気もします。

はじめての内見

はじめて内見したのは2014年。
初のイベント販売で売れ行きが良く、即完売。
「自分の場所が持てればもっとやれるのでは!」と勢いづいて、「空き物件」の札がかかった店舗を見つけ、不動産屋さんに問い合わせ。
内見の予約を入れました。

行った物件は極小だけど、店内に冷蔵庫などの機材も残っていて、初期費用も抑えられそう。
手の届かない家賃の金額でもない。

きっとここだ!
ぼんやりしながらもアドレナリン満載で夫に相談しました。

返事は「時期尚早」。
一蹴されました。
相談したシェアキッチンの社長さんからも「一般的に、家賃の10倍、売上が必要」と言われました。合わせて「恋にも似たような、この人しかいない、みたいな感覚になりがち」という言葉も。

悔しい気持ちもありましたが、その後土地勘のあるママ友からも、駐車しにくさや、入れ替わりの早い物件だと思うとのアドバイスをもらい、諦めることにしました。

事業計画書もなく、具体的な商品展開も何もないまま、借りてなくて本当によかったと、今ではつくづく思います。

「具体的に」イメージするために必要なこと

その後も近隣の不動産屋さん数件に時々情報を聞きに行っていました。

はじめは「この主婦が?と思われているんじゃないか、、、」と尻込みしながら話を聞いていたように思います。

ただ、シェアキッチンでの売上が少しずつ増えていくに従い、より具体性を持って考えるようになっていきました。

家からの距離。駅からの距離。
どのくらいの広さが必要か。
家賃と広さの相場。
レイアウトはどうする?
機材の配置はしやすそう?
換気はきちんと取れそう?
などなど。

特に、シェアキッチン近くのテナントが空くことになった時に「クリカさんどうですか?」と声をかけてもらったことがありました。
撤去日なども踏まえて、いついつまでに答えが欲しいとのこと。

より具体的に考えないと、答えが出せない。
ということで、息子繋がりの、厨房機器メーカー勤務のパパさんに相談し、店舗物件の間取りを元に機材見積もりを立ててもらいました。

結局その時は、家からの距離のことを考え、自店舗としては遠いという理由から断念しましたが、その時具体的な見積もりを立ててもらっていたことで、その後いろんな物件を見た時に、イメージが湧きやすくなりました。

大切なのは「数字」。
寸法しかり、金額しかり。数字があると、規模を大きくしたとき、小さくした時、それぞれの場合に必要なことが、ざっくりですがわかるようになります。
事業計画書も書きやすくなります。
絵空事だった夢が、少しずつリアルに近づいていきました。

(ちなみに蛇足ですが、その見積もりを立ててもらった数年後、自店舗立ち上げの際に、業務用冷蔵庫を購入しました。担当はそのパパさんに依頼。営業のお仕事のなんと奥深いことかと感じたのでした。)

業界雑誌などにも具体的な金額や寸法、問い合わせ先がのっています。
相手はお仕事でされていることなので、臆せず聞いた方がいいよ、と数年前の自分には伝えてあげたいです。

自店舗オープンまでに読んでいた本

自店舗オープンまで開業に向けての本なども何冊も読んでいました。
その中から今回3冊ご紹介します。

若干発行年が古いですが、どんな点を参考にしたのかをざっくりと書き記しておきます。
最近も同様の本が出ているかもしれませんので、関連本などで調べてみるといいのかもしれません

加えて、最近はyoutubeなどでも開業の情報が上がっています。
体系立ててまとめられている書籍と併用するのがおすすめです。

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1冊目。
2013年発行「小さなパン屋さん、はじめました。」
女性オーナーの店舗に絞ってあります。
店舗レイアウトの他、開業資金などの具体的な金額も掲載。
機材に関しては写真で掲載(メーカー名の記載なし)
「自分でお店を持つことを考えてみようか?」と思い始めた頃から、何度も眺めていた本です。
初めはぼんやりと。
最終的には虫眼鏡で見る勢いで細かく読み解いていきました。
現在は移転拡大している、私が敬愛するケポベーグルさんも載っています。

2冊目。
2015年発行「小さなお菓子屋さんとパン屋さんのはじめかた」
1冊目よりも規模が大きい店舗も掲載されています。
開業資金、導入機材(メーカー名記載)、従業員数などの他、看板やショップカードのデザインなどカラー写真で多数掲載。
販売当時の価格 1,580円(税抜)

1冊目2冊目共に、開業までの一般的な流れも掲載されています。


3冊目「菓子店パン店開業読本」

販売当時の価格 2,500円(税抜)
従業員のいる、規模が大きい店舗も多く掲載。
特に私が読み込んでいたのは「厨房設備ガイド」の特集ページ。
オーブンやホイロ、ミキサー、機材がメーカーや商社ごとに掲載されています。(一部金額も掲載)

パン屋経験のある方は、勤務先のオーブンを自店舗にも採用したりされるようですが、経験のない私は、そもそもどんなメーカーがあるのか、どのくらいの金額なのかが全く分かりませんでした。
なので、この「厨房設備ガイド」のページから、各社サイトなどに辿り着くことができました。

この他、雑誌「cafe sweets」で毎年?特集されている「菓子店、カフェ 小さな店のつくり方」特集も毎回楽しみにしています。
雑誌は最新情報が見れるのが何よりありがたいです。
なお、カフェスイーツの広告欄にも、厨房メーカーの広告が多く掲載されているので、参考にしてサイトなどを確認していました。

シェアキッチンの被災

さて、特に自分の店舗を具体的に考えることになったのは2019年

利用していたシェアキッチンが台風をきっかけに雨漏り被害を受け、数ヶ月使用することができなくなった時です。

管理会社の計らいで、救済措置として、これまでとエリアも違うシェアキッチンを、店舗改装の間借りられることになりました。

これまで使っていたシェアキッチンは、オープンしてから数年経っていました。
そこから進化した新規立ち上げのシェアキッチンを使わせてもらったことで、それぞれの良さを体感することができました。
合わせて、場所が変わったことで、ずっとやりたいと思っていた「食堂営業」にも挑戦。ベーグルを封印。
結果的に、ベーグル屋として営業する方がニーズが高いことがわかる結果になりました。

店舗見学という形での店舗探しの旅

この時、友人のベーグル屋さんやバイトしていたカフェ、小商い先輩のお菓子屋さんが、被災を心配して、コラボ営業や見学を提案してくれました。

貴重な時間をもらったので、それぞれの厨房では、目の裏にその様子を焼き付け、時に焼かせてもらったりして、お店自体を体感させてもらいました。

被災というアンラッキーな事態でしたが、いくつもの厨房を体験させてもらえる、自分探しの旅のような、夢のような数ヶ月でした。

なお、その中で具体的に感じていたこと、考えていたことは、こんなことだったように思います。

・どんな営業スタイルか。
・どんな動線をとっているのか。機材のレイアウトは?
・厨房内、販売スペース、それぞれスタッフ何人動けるか。
・オーブンの特性
・何を選び何を選ばなかったのか(これ以外と大事)
・食堂もやるとしたら、備品はどのくらい必要か

ちなみに数ヶ月後、元々利用していたシェアキッチンが再開。
別の場所を借りるか、物件を借りるか、など悩みましたが、結果的には元のシェアキッチンに戻ることになりました。

オープンしてから起こる「共通点」

店舗見学、という点から繋がる話として、今の店舗物件を借りることが決まった後も、近隣のお菓子屋さんやパン屋さん、カフェなどを紹介してもらい、見学をさせてもらいました。

みなさん口を揃えておっしゃていたのは、稼働し始めると、規模感が大きくなり、収納スペースや機材が不足する、ということ。
そのため、冷蔵庫、冷凍庫、食洗機、+αで使用することになったミキサーなど、機材を追加購入されている方がほとんどでした。

そのため、DIYで棚を増設したり、開店に向けての施工を頼んだ工務店に追加工事を依頼することもあったそうです。
クリカ食堂も多分に漏れず、開店から1年の間に機械をいくつか追加しました。追加工事はしていませんが、棚の増設や模様替えは繰り返しています。

このことから言えるのは、まずは足りないくらいのところからスタートして、本当に足りない時に追加する可能性がある、という視点を持っておくといい、ということ。視点を持たせてもらったお陰で、対応がスムーズにできました。

もしかすると、いまだにライフワーク?

こうやって店舗探しの旅を続け、図面だけの物件や見学した店舗も合わせると40件近くは見たのではないでしょうか。

経験値のある方であれば、こんなに時間をかける必要もなかったかもしれませんが、私には必要な時間だったと思っています。

仲間が自分のお店を持ったりするたびに、おめでとうと言いつつも、焦りや嫉妬を感じなかったというと嘘になります。
人間なので当然ありました。
でも、出会う時は出会うし、出会わない時はタイミングではなかった。それだけのことだったのかもなと今では思います。
チャンスが来た時に幸せの神様の前髪を掴めるよう、準備だけでもしておくことは大事だなということもわかりました。

そして7年続けた店舗探しの旅のおかげで、街を歩いて空き物件を見つけると、いまだに「ここ、どうかな?」と妄想してしまうようになりましたw
継続して私の趣味?ライフワーク?として、習慣になってるようです。

そして改めて振り返ると、たくさんの経験者の先輩たちが「厨房を持つこと」を後押ししてくれるように、それぞれの聖域であろう厨房の見学を提案し、アドバイスを下さいました。
感謝しかありません。
本当にありがとうございました。

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お読みいただきありがとうございました。
最近、読んでるよ、のお声をちょこちょこいただいています。
「いいね」も励みになりまくっています!
本当にありがとうございます。

次回もどうぞお楽しみに。




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