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借りそうで借りなかった物件の話

マガジン「実店舗を開くまでとそれからの1年」
7本目の記事です。

前回の「店舗探しの旅」の続きです。

今の物件の前に、かなり真剣に検討した物件がありました。
通称「三角」。
その時の話を書きたいと思います。

念願の物件が空き店舗に!

実は、店舗を借りたいと思った初期の頃から「ここが空いたら借りたい」と思っていた物件がありました。
6坪程度の広さ。中は三角の形をした変わった間取りでしたが、家からも通いやすい。
ちょうど物件を探し始めた頃に、店舗情報をチェック。直後に借り手がついてしまったけれど、家賃もある程度把握していました。

その物件が、空き物件になったのは、雨漏り被害を受けた2019年。
早速内見。築年数も古くなく、綺麗な状態。
これは奇跡的なタイミング!と思い、あちこちに相談して回りました。

けれど結果的に、断念。
理由としては2つありました。

  1. 西日がひどい。
    主な理由はこれ。
    パンなどの商品に西日が当たりすぎるのは、当然良くありません。
    後からテントを取り付けたり、タープをつけたりできたら良かったのですが、建物の構造上、対策を打つことができませんでした。

  2. 使いにくい構造
    メインの理由は一つ目の理由。
    こちらは後付けの理由となりますが、狭くて三角形の間取りのため、構造を作るのが難しそうでした。諦めるに至った際に「構造的に難しそうだったから、また次を探しましょう」と設計士さんに励ましてもらった記憶があります。

  3. 契約条件が引っかかった
    不動産に知識のある方に相談したところ、契約条件的に、飲食店舗に向かないと思うからやめておいた方が良いとのアドバイスをもらいました。

以上の理由をもとに、自分で諦めたはずなのに、その物件に借り手がつき、表から「空き店舗」の表示が消えてしまった時。
歩いている時にそのことに気づき、一緒に歩いていた夫から「そんなに恨めしい顔で見るんじゃないよ」と諭されたのは今でも覚えています。

結果的に、良かったこと

ただこの三角の時。専門的な方々にお話を聞いて回っていました。
そのことがその後、非常に良かった結果となりました。

設計士さん。
商工会。
利用していたシェアキッチンの社長。
過去に補助金申請を受けたことのある食仲間。
店舗経営している友人たち。

特に、緊急措置で使用していたいつもとは違うシェアキッチンで、設計士ご夫婦との縁ができ、その「三角物件」について相談させてもらえたことは大きな一歩でした。

時間をもらって相談するからには、自分がやろうとしていることを伝えなくてはいけない。
そのために、ネットや雑誌、本の切り抜きやコピーなどを集め、イメージを広げて相談しました。

その結果、自分自身がやりたいこともイメージでき、設計士さんからも、どういう方法があり、それにはいくらくらいかかるか、などの具体的な話にも言及してもらうことができました。
(反省点としては、イメージ写真などをもっと前からスクラップしておくべきだったな、という点でしょうか)

またその他の方々にも相談させていただく中で、事業計画へ具体的な問いかけをいただいたり、資金調達のアイデア、心構えなどをいただきました。
結果論ではありますが、そのおかげで、1年後今の店舗に出会った時に、多少スムーズに動けたんだろうと思います。

相談できる人や場所

開業前は、どうしても資金面で不安があることが多い。
そんな中でも、自分の考えを整理していくにあたって、相談できる相手は必ず必要になってきます。
私もできるだけフラットな視点で相談に応じてくれる方々にお話を聞いて回りました。

商工会/商工会議所

国の機関ではなく、あくまでも民間法人ですが、設立に国の許可が必要であるなど、公共性の高い施設です。会費を払っていない段階でも、相談に対応してくれるかと思いますので、事業を始めたいと思っている方は相談してみると良いと思います。
個人事業主登録をして間もない7年ほど前に、隣の市である立川市の商工会議所が開催した「創業塾」にも参加したことがあり、そこで事業計画書の作成の仕方などについて学ばせてもらいました。
市町村民だけが対象ではない場合もありますので、お住まい地域周辺の情報を確認してみるのもひとつの手かと思います。
自店舗オープン後は会員になり、補助金の相談、経理や労務など、多岐にわたって相談させてもらっています。

創業支援機関(東京都の場合)

都が運営する創業支援施設「TOKYO創業ステーション」。
予約をしてリアルでの個別相談も可能。オンラインでの講座なども開催しています。
今の店舗を見つけてすぐに「店舗探しの秘訣」というオンライン講座が開催されていて、受講しました。
各地域でも同様の施設や施作があるのかもしれませんので、チェックしてみてはいかがでしょうか。

また、店舗のある東大和市には「中小企業大学校」があり、その施設内に「ビジネスト」という施設があります。

こちらの創業支援施設でも、創業相談会など、随時開催されています。
レンタルスペースなどもあり、ステップアップに使ってきた仲間も大勢います。

設計士/工務店への相談

私はたまたま縁があって、とてもセンスの良い設計士さんと出会うことができたので、物件を見つけてすぐに相談することができました。
また、設計士として過去に働いていた友人に、ランチ代だけで相談させてもらったりもしました。(本当にありがとう)

ただ、開業に関する情報誌などを見ると、ココナラなどのサイトで検索して見つけた、という情報もありました。知人にいなくても諦めることはないと思います。

ちなみに、物件が見つかってからは、時間との戦いです。
店舗契約をすぐにしなくてはいけない場合もあり、工事完成するまでは、空家賃が発生します。
また、物件に合わせて工事費なども変わってきます。
電気やガスの取り回しなどのことを明確にするためにも、早めの段階から工務店や設計士さんに物件情報を共有した方が賢明です。

計画段階でもまだ先の話と思わずに、時間に余裕がある内に「ここ素敵だな」と思う店舗を見つけたら、依頼先を聞いてみるなどして、相談相手を探しておくと良いと思います。

なお、図面が書ける工務店に直接依頼をすれば、設計士への相談料はプラスされません。ただ、設計士さんに依頼をするということは、店舗設計のみならず、工務店との間の専門的な話の調整もしていただけます。
どういう場所にしたいか、ということを踏まえた上で、どちらに依頼するのかを決めていくべきなのかと思います。

機械メーカーなどへの相談

今回私は、テストベイクの際にオーブンメーカーの担当者さんから「栗栖さんみたいなパン屋経験がない人はなおのこと、買った後も相談相手になってくれる人から買った方がいいよ」と教えてもらい、日本ニーダーさんに相談の上、厨房機器を一括して購入しました。
元々自分で持っていたこね機も日本ニーダー社製のもので、開店後追加投入した発酵機に関しても日本ニーダー社製のものにしました。なので購入後、機械の利用方法などについても相談させてもらっています。

なお、大手厨房機器メーカーなどに、物件を見つけた段階で図面とやりたい内容を伝えると、数日で必要な機材と見積もりを出してくれる場合もあります。

振り返ってわかること

三角物件は今振り返ると、広さがない変形型の物件だったので、1人で黙々と作り続けるしかない場所になっていたと思います。
コミュニケーションを取っていないと気持ち的にしんどくなる私には、向かない場所で、借りないことが必然だったのかもしれません。

ただその頃、より具体的に、専門の方々にアドバイスをいただいていく中で、本やネットで見て、自分の中で妄想していたことが、妄想から実現可能性を広げるための「計画」に変わっていった。
振り返ってみて、そんなふうに感じました。

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お読みいただきありがとうございました。
次回もどうぞお楽しみに。


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