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オークス 有力馬血統考察


ステレンボッシュ

 シーザリオ、エアグルーヴ、ウインドインハーヘア、ダンシングキイ・・・。歴史的な名繁殖がずらりと並ぶ血統表は、なかなか壮観です。エピファネイア×母の父ルーラーシップの組み合わせは、5頭すべてが勝ち馬。該当馬は多くないですが、今のところ安定した成績を残しています。大舞台で実績を残したのは本馬が初めてです。
 エピファもルーラーも、長めを得意とするスタミナ寄りの種牡馬。さらに本馬の場合は、2代母の父のダンスインザダークもスタミナ型。かなり重厚な血統構成です。今年の桜花賞は、近年のようなイン有利のスピード馬場ではなく、重厚な差し脚が通用する環境でした。本馬にとって条件が味方したところはあったと思います。ただし中盤の緩みはそれほど大きくなく、ちゃんとマイル戦らしいレースにはなっています。そのなかで王道型マイラーのアスコリピチェーノに勝ったように、血統表の字面ほど鈍重な馬ではありません。牝馬らしい先天的な素軽さや、牝祖であるウインドインハーヘアのしなやかさのおかげでしょうか。もちろんこの血統背景を思えば、距離が伸びてパフォーマンスを落とす感じはしません。今回も楽しみです。


スウィープフィート

 スワーヴリチャードは『ダンジグ』の血と相性良好。重賞勝ち馬のレガレイラ、コラソンビート、本馬のほか、アーバンシックやパワーホールなど、活躍馬の多くがこの血をもっています。本馬はチーフズクラウン経由でダンジグを補給。現在このパターンの該当馬は本馬1頭しかいません。ハーツクライやジャスタウェイがチーフズクラウンと好相性だったことを考えると、おなじハーツ系のスワーヴも親和性が高いのではないでしょうか。
 チューリップ賞では後方から全馬をまるごと撫で斬り。その姿はまるで祖母・スイープトウショウのようでした。ただし母の父にディープスカイが入っているため、本質的にはワンペース寄りかもしれません。単に後ろで溜めたからと言って、切れ味が増すわけではないと思います。位置取りありきの競馬ではなく、自身にとって適切なペースで、心地よく走らせてあげられるかが重要でしょう。
 桜花賞は直線でスペースがなく、追い出しに手間取りました。スムーズであれば、もっと上位争いだったはずです。もう少し流れに乗せたほうがよさそうには感じますが、気持ちのスイッチが入りやすく、序盤から促してしまうと制御が難しいのかもしれません。現状では後方でなだめる競馬が無難でしょうか。ここは開き直って、ディープスカイが日本ダービーを勝ったときのような競馬で、大外一気を決めたいですね。


ライトバック

 キズナ×母の父エクシードアンドエクセルの配合は、該当する3頭すべてが2勝以上。今年の皐月賞をレコード勝ちしたジャスティンミラノもこの組み合わせです。「ストームキャット≒パトローナ」3×3によって、スピードを引き出していることがポイントでしょう。またエクシードアンドエクセル内に含まれる『ロモンド』の血がキズナと好相性。これも親和性の高さを生み出す大きな一因となっているように思います。
 桜花賞では上がり3F最速、32秒8の鬼脚を使って3着。この切れ味の源泉は、祖母に含まれる『ダルシャーン』の影響でしょう。しっかりと溜めれば、鋭い決め手を使える競走馬です。
 エクシードアンドエクセルは現役時代に短距離GⅠを勝ったスピード馬。スプリンター特有の前進気勢が強く、本馬にも伝わっています。ところが気持ちのまま走らせてしまうと、エネルギーの消耗が激しく、ダルシャーンの切れ味にエネルギーを回すことができません。エクシードアンドエクセルがもたらす能力面、そしてダルシャーンから伝わる切れ味、どちらも本馬にとって強力な武器です。しかしふたつの美点を両立させることは容易ではなく、使い方を誤ると諸刃の剣になりかねません。序盤はあえて流れにのせず、後方で気持ちをだましながら直線まで温存させる。この乗り方が、いまできるなかでの最善手という感じでしょうか。距離延長でペースがさらに緩くなる今回は、より難易度が増しそうです。


クイーンズウォーク

 キズナは『インリアリティ』の血と好相性。種牡馬としてデビューした初年度から多くの活躍馬をだしています。ただし近年はそれほど大きな実績を残していませんでした。中央重賞の勝利でいうと、21年のマーメイドSを勝ったシャムロックヒルが最後。本馬は久しぶりに誕生した重賞勝ち馬となります。
 本馬の母・ウェイヴェルアベニューは、ミスタープロスペクター4×4・5のクロスを内包。アメリカ血統のスピードを豊富に含んだ繁殖牝馬です。父のキズナはミスプロを1滴ももちません。この血を使ってスピードを固定させる構造は、かたちとして悪くないでしょう。
 ササッと素軽い脚さばきで走る反面、やや淡白さが見え隠れします。アクションが大きいほうではありません。母方にあるラーイの特徴がでた競走馬という印象です。デビューからクイーンCまでの3走でみせた直線の脚は、なかなかの見どころがありました。ただしラーイっぽい馬であることを考えると、これがベストな戦術という感じはしません。本来は好位に付けて、競馬センスを活かすかたちが良いのではないかと思います。先行力はあるので、川田騎手がどういう組み立て方をしてくるのかにも注目です。


チェルヴィニア

 ハービンジャー×母の父キングカメハメハの組み合わせは、ブラストワンピース、モズカッチャンという2頭のGⅠ馬をだすパターンです。近年はそこまで大きな実績を残していませんでしたが、昨年から勢いが復活。本馬や、大阪杯で2着になったローシャムパークの登場によって、久しぶりに存在感を強めています。
 本馬は3代母に名牝・ハッピートレイルズをもつ良血馬です。この一族は豊富なスタミナが持ち味。近年で言うと、19年のアルゼンチン共和国で1、2着となったムイトオブリガード、タイセイトレイルはともにこの牝系の出身でした。本馬の母であるチェッキーノもフローラSを勝ち、オークスでも2着に好走しています。本馬はスラッとした細身の体型で、マイラー然とした競走馬ではありません。マイル重賞を勝っていますが、本来は中距離のほうが走りやすいのではないでしょうか。
 ハービンジャー産駒の良血馬は“ヌルい競馬”ほどパフォーマンスを上げてくるタイプが多いです。本馬もその可能性があるかもしれません。ゆったりとしたペースで溜めれば素晴らしい脚を使えることは、アルテミスSの勝利で証明しています。では激しい流れになったときにどうでしょうか。前走は久しぶりの実戦だったため度外視できますが、疑惑は残ったままです。
 距離延長は間違いなくプラスでしょう。桜花賞と比べてペースがヌルくなるため、体の負担がかなり楽になります。母系のスタミナ的に距離の不安もありません。1度使ったことで状態が上向いていれば、勝ち負けもじゅうぶんに期待できそうです。


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