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ヴィクトリアマイル 有力馬血統考察


ナミュール

 ハービンジャー×ダイワメジャーという構成は、硬いタイプを想像させる字面です。ただ本馬は小柄ながら全身を使ったフットワークが目を引きます。これは母・サンブルエミューズの現役時代を彷彿とさせる走り。前脚を掻き込んで推進力を得る走法は、3代母・キョウエイマーチから代々受け継がれてきた、この牝系特有の個性です。本馬はハービンジャー産駒というカテゴリではなく、牝系の資質を色濃く受け継いだ、母似の競走馬と見るべきでしょう。
 古馬になってマイル路線に戻し、かつての尖った才能が復活。昨秋にはマイルチャンピオンに輝きました。その後も香港、ドバイで好走しており、生き生きとした走りを見せています。牝系の影響が強いぶん、本質的にはマイル~1800mくらいが走りやすいのでしょう。
 昨年のヴィクトリアマイルは向正面で接触を受け、大きくブレーキを踏む不利。不完全燃焼のレースになってしまいました。心身ともに充実した今年こそは、良い走りを見せてほしいです。


マスクトディーヴァ

 ルーラーシップ×母の父ディープインパクトの組み合わせは、多くの活躍馬をだすニックス配合です。以前は牡馬専用の印象がありましたが、いまは牝馬の勢いが目立ちますね。本馬とビッグリボンの2頭が重賞を勝っています。今回のレースに一緒に出走予定のドゥアイズも同配合です。
 父のルーラーシップ、母のマスクオフ、さらに母の父のディープインパクトは、いずれも柔らかく大きいフットワークで走る馬でした。それに対して本馬はフットワークの幅が小さめ。父、母、母父のどれにも似ていません。おそらく本馬は祖母のビハインドザマスクに似たのだと思います。ビハインドザマスクは現役時代に1200~1600mの重賞で3勝を挙げた馬。ルーラー×ディープというスタミナ構成の本馬において、スピードを支える貴重な牝祖です。バランス的なことを考えると、祖母の部分が表面化してくれたことも、成功の要因と言えるかもしれません。血統表の字面以上にマイル適性が高いタイプだと思います。
 これまでは後方から末脚を伸ばすスタイルでした。しかし前走の阪神牝馬Sで一変。好スタートから先行させる王道の競馬で勝利しています。この馬であっさり先行するモレイラ騎手って、いったいどういう感覚で乗っているんでしょうね。意味わからん(笑)


ウンブライル

 この一族はファルブラヴ特有のピリッとした気性を受け継ぎやすいところがあります。本馬もデビュー戦は前進気勢が強く、少し促しただけでガツンと掛かってしまいそうな、危うさをはらんでいました。ところが2戦目以降は行きっぷりが悪く、むしろ促されて追走するほど。気持ちが入らないという、この血統にしては珍しい状態でした。対策として、ニュージーランドトロフィーからブリンカーを着用。効果てきめんだったようで、以降は走りが安定しています。
 父方のセクレタリアトとシリアンシー、母方のシアトルスルーによる「ボールドルーラー×プリンスキロ」的なスピードが主体。軽い脚さばきで走るタイプです。決め手を長く使うことができるので、東京のような直線の長いコースは合います。ただしスピードの性質がやや淡白。総合的な意味での決め手性能は高いですが、極端な瞬発力勝負のような、一瞬だけの最高速度を問われるかたちだと、切れ負けするかもしれません。


モリアーナ

 「切れるけど非力」な血の代表とも言えるハビタットを5×5でクロス。体質がどのように出ているか、デビュー前から注目していた馬です。実馬を見た印象は、良い意味で肉体に硬さがあるということ。母の父に据えられたダイワメジャーがしっかりと根づいている証拠でしょう。ただしタフな競走馬ではありません。やはりこの馬の本質は、ハビタット5×5のクロスがもたらす切れ味なのだと思います。
 エンジンのオンオフが極端なタイプ。ギアを段階的に引き上げていく走りは苦手です。東京らしい外差しの競馬だと、途中で燃料切れをおこすかもしれません。とにかく残り400mまではじっと動かず、一瞬の隙をみて、溜めに溜めたハビタットで斬る。これがベストな脚の使い方だと思います。例えが少し古いですが、スマートオーディンのような必殺の一太刀をもつ競走馬です。


スタニングローズ

 父のキングカメハメハはあまり自己主張するタイプではありません。本馬の適性も、母の影響が濃く出ているように感じます。その母のローザブランカですが、ノーザンダンサー、ボールドルーラー、プリンスキロをクロスした繁殖牝馬。軽快な脚さばきが特徴で、癖の少ないスピードを(子の)本馬に伝えています。好位につけられる機動性や、自在に折り合える操縦性の高さを兼備。いつも有利な位置でレースを進められるのが強みです。
 古馬になってからは苦戦ぎみ。同世代の牝馬には武器として使えた立ち回りの上手さですが、トップホース相手には通用しづらく、器用貧乏キャラになっています。それでも本馬の強みは競馬センス。好スタートをきって、好位で減点ゼロの競馬をすることです。故障から久しぶりの復帰戦となった大阪杯は、結果こそ8着でしたが、本馬らしい競馬はしていたと思います。マイルは少し忙しいかもしれませんが、一度使っての前進は期待できそうです。


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