暮 勇

趣味で細々と詩や小説などを書いてます。 どうぞよろしく。 Bluesky(https…

暮 勇

趣味で細々と詩や小説などを書いてます。 どうぞよろしく。 Bluesky(https://bsky.app/profile/isamikure.bsky.social)

マガジン

  • 短編小説集

    暮が書いた小話を纏めたもの

  • 読書記録

    暮の読書感想文集。

  • 詩集

    散文の様な詩を集めたもの。

  • エッセイ集

    日々思ったことをつらつらと。

  • 映画鑑賞記録

    暮が観た映画の感想集。

最近の記事

【短編小説】ルーシー・マーズの憂鬱

 今日は満月の日。  キャラバンがやってくる日だ。  その日が来るたび、私は憂鬱になる。  パパとママは世界に大きな爆弾が落ちた日から、この地下シェルターで暮らしている。近所に住んでいた5家族と一緒に、農業や人工肉の精製など様々な役割を分担している。  私のパパは、このシェルターを管理する代表のような役割をしている。シェルターの保全状況の確認や物資の量を細かく記録し、分配する。それでこのシェルターは今まで上手く回っている。  でも、どんなに上手くやったって、足りない物は出て

    • 【読書記録】ドラキュラ(ブラム・ストーカー)

       トランシルヴァニアの城に潜むドラキュラ伯爵。彼にはイギリスへと海を渡る壮大な計画があり…。  今回は光文社による新訳版を読ませて頂いた。その為原文の独特の雰囲気とは多少変わってるかもしれないが、非常に読みやすかった。  現代における吸血鬼像を作り上げたと言って過言ではない不朽の作品だけあって、科学と民間伝承の絶妙な融合具合が読んでいて違和感覚えず、すんなり読めた。  また、各主人公の日記や手紙を読み解いていく形式なので、一編一編が程よく区切られており、短編気分で読めるの

      • 【詩】いのち、尽きるまで

         いのち、尽きるまで  それほど時間は  ないのかもしれない  いのち、尽きるまで  私にはこの細やかな  文字の羅列しか、残す物はない  いのち、尽きるまで  待つつもりはなく  私は脳を、回し続ける  いのち、尽きるまで  いのち、尽きるまで… 

        • 【詩】熱光線

           ちりちりと肌を焼く  あの熱光線が憎らしく  空に唾は吐かずとも  太陽を斜に睨みつける  ぎらぎらと目を焼く  あの熱光線が眩しくて  日陰者の私はおどおど  木陰に隠れて太陽を見る  じりじりと汗を流さす  あの熱光線が鬱陶しくて  地に這う小さな命たちは  なす術もなく太陽に焼かれる  ちりちり、ぎらぎら、じりじり  あの熱光線は夏の空から  情けのない熱射を浴びせ  我が天下なりと、傲然とす

        【短編小説】ルーシー・マーズの憂鬱

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        • 短編小説集
          19本
        • 読書記録
          5本
        • 詩集
          15本
        • エッセイ集
          8本
        • 映画鑑賞記録
          2本

        記事

          【詩】違う世界で

           あなたの世界は  ロジックが全てで  無機的な美しさを求めて  日々奔走している  私の世界は  雑多でごちゃごちゃ  有機的な彩りの中で  日々鎮座している  私の世界とあなたの世界  求めるものが違うのは  重々わかってはいるけれど  そんなあなたの世界の中に  たった一滴の雫のような  詩の世界があればいい  私は私の世界に座り  いつもあなたに雫を垂らす

          【詩】違う世界で

          【詩】満たす

           ゆっくりと、息を吸う  肺臓を満たすのは  静かに身を寄せる、あの人の香り  私を惹きつける、いい香りなのか  私を夢中にさせる、悪い香りなのか  そんなことも、分からないまま  ただ捨て子の様に身を寄せ合って  何も語らず、何も発せず  またゆっくりと、息を吸う  そうやって何度も肺臓を満たして  まるで赤子の様に満足して  体を丸めて、目を瞑るの

          【詩】満たす

          【詩】ビールとライブ

           ハイネケンの一口が  私の思考を鮮明にする  煌びやかなステージ  がなり立てる楽器  同じリズムで揺れる観客  その中で独り、ビールを飲む  観客に向かって歌う男  あれは一体、どんな思いか  客を揺らす優越感か  孤独を恐れて客を呼ぶのか  私には分からず、ビールを煽る  ハイネケンの飲み口の  銀色の蓋に、ライトのブルー  反射するそれはアンニュイで  揺れることのできない私を  表すようで、晒し出すようで  私は虚しく、ビールを飲み干す

          【詩】ビールとライブ

          【短編小説】猫の流動性に関する調査記録

           皆さんご存知の通り、宇宙の遥か彼方に“ネコリス”という惑星があった。“あった”ということは、既に存在しないという意味だ。まずはこの“惑星ネコリス”の消滅について話をしようと思う。  ネコリスの主成分は水であり、陸地になるような物は存在しない。  ネコリスを有名にしたのは、その水の特異性にあった。人類がネコリスに降り立って以降、今日で言うところの猫の姿をその水がとり、人類の前に現れるようになった。  初めは、現地調査チームが設計した居住スペース外の海上にそれらしい、しかし歪な

          【短編小説】猫の流動性に関する調査記録

          【短編小説】猫の移動に関する調査記録

           猫はワープする。それも任意の場所に。  今日は近所の公園で寝転んでいると思ったら、明日にはアメリカの路地裏で仲間とよろしくやってることだってある。  我々は猫を追跡した。それも徹底的に。  野良猫を捕まえて、GPSチップを皮下注射し、路上に放した。猫専用の追跡システム開発と、監視の為、世界中に研究所の支社を設けもした。  もちろん猫達に怪しまれない様に、予防接種の中にランダムに紛れ込ませることで、皮下のチップを掻き出されにくくしてある。  こういった方法で猫が世界中ありとあ

          【短編小説】猫の移動に関する調査記録

          【詩】瑕疵

           当たり前が出来なくて  泣いて悔やんだ若かりし日々  私には瑕疵があるのだと  恥じて隠れて生きた日々  当たり前が出来ずとも  構わないと思える日々  私の瑕疵もまた私だと  胸を張って生きる日々  人には言えぬ瑕疵がある  ただその傷口から滲み出る  喜怒哀楽が、詩を紡ぐ  ならばこの瑕疵愛して生きよう  そう思うのに、数十年  かかった日々も、また愛し

          【詩】瑕疵

          【短編小説】どこにでもいる猫

           エレベーターの扉に嵌ったガラス。  そこに映る肩越しの風景。  見慣れたマンションの玄関の入口に、猫が一匹、座り込んでいた。  色は全身真っ黒で、艶のある毛並みをしている。黄色いまんまるの瞳で、私のことをじっと見ている。  この辺りに野良猫が居るとは聞いたことがなかったので、迷い猫なのかもしれないと思い、振り返って確認しようとした。  振り向いた先に、猫の姿は無かった。  その日を境に、私の視界に猫が映り込むようになった。  例えば、デパートのショウウィンドウ越しだったり

          【短編小説】どこにでもいる猫

          【詩】ヒーロー

           ヒーローとは  強いものであり  格好良いものであり  悪に対する正義であり  疑いなく、大衆の味方である  ヒーローなるもの  大衆であらず  人であらず  個であらず  その様は勇敢であり  その様は無謀であり  その様は孤独である  ヒーローなるもの  それは皆の代弁者であり  それは何者であることも、許されない

          【詩】ヒーロー

          【詩】詩人の最後

           言葉を紡ぐ、たったそれだけで  どれほど、苦労することか  言葉を並べる、たったそれだけで  どれほど、頭を悩ませるか  きっと最後の最後まで  苦労して、苦悩して  言葉を頭から引きづり出して  尽きぬ言葉に涙しながら  詩人は最後を迎えるだろう  文字列に埋もれて溺れ  溢れた言葉で喉を詰め  御せぬ語彙で首を絞め  きっと碌な死に方をしない  そんな詩人の最後の瞬間に  是非とも哀れみの言葉を

          【詩】詩人の最後

          【短編小説】猫の贈り物

           私は誇らしかった。  散々待って、観察して、日が翳る頃になってようやく獲物を仕留めたのだから。  それに、その獲物をここまで無事運べたことも、私が今胸を張る理由の一つだ。この界隈には他者が獲った獲物を横取りしようとする不届な輩も少なくはない。そんな修羅の様な道のりを私は何人も寄せ付けることなく無事運び終えたのだから、それを少しくらい誇ってもバチは当たるまい。  しかし私が最も自身を誇りに思うのは、この獲物を我が物とせず、贈り物にするという寛大さにあった。本当は新鮮なこの獲物

          【短編小説】猫の贈り物

          【詩】生きるもの

           生きるものよ  肺臓を空気で満たし  管には真紅の血潮を迸らす  筋と骨の奇跡の構造物  肉と臓腑の塊を  たった2本の細い足で立て  この地を同種で染め上げる  脆弱で強情な我ら人間  “生きる”とは一体何かを  限られたメモリをフル回転させ  考え続ける我ら人間  欲も解脱もひっくるめて  その思考もまた奇跡の産物  我ら貧弱な葦であれども  それでも生を、全うす

          【詩】生きるもの

          【読書記録】シャーロック・ホームズの凱旋(森見登美彦)

           ヴィクトリア朝京都を舞台に、スランプ中のホームズ。ワトソンや周囲がすったもんだする中、ホームズはある決断をする…。  イギリスみたいな京都主な舞台なので、京都を知ってる方なら色々と想像しやすいと思う。  登場人物はホームズシリーズを読んだことがある方なら一目瞭然の有名人ばかり。安心して読める。  本文内の最初の方でも触れている通り、”非探偵小説的“なので、ミステリに興味のない人も気軽に読める内容となっている。  とはいっても、後半少し展開が複雑になったりもするので、予め

          【読書記録】シャーロック・ホームズの凱旋(森見登美彦)