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72についてのお話

こんにちは。身近な数字のアドバイザーのナカナカです。
今日のテーマは72、「72の法則」についてのお話です。

「72の法則」とは、投資した元本を2倍にする場合の投資期間を概算で求めるための法則のことです。100万円を金利4%の複利で運用した場合は18年でほぼ200万円になる、というように、72を金利で割ると投資元本がおよそ2倍になる期間(年数)が求められるのです。

ポイントは複利で運用した場合ということです。ちなみに、元本100万円を単利4%で18年運用した場合、利息は4万円×18年の72万円ですから元利合計は172万円、200万円には及びません。「72の法則」は投資における複利効果を簡単に学ぶための便利な法則ですが、私も子供たちの世代も学生時代に「72の法則」とか、単利、複利の計算を学んだ記憶がありません。

ところが、江戸時代の寺子屋や商家では、生活に必要なスキルとして本格的な金融教育が施されていました。当時の教科書である「塵劫記(じんこうき)」には、ネズミ算がイラスト入りで紹介されています。複利でお金を借りた場合に借金がどれほどになるか、逆に複利でお金を貸すとどれだけ利息が得られるかなど、ネズミが爆発的に増えるイメージから実感できるようになっています。私もネズミ算を習った記憶はありますが、金融の複利計算と結び付けて考えることはありませんでした。

必要に迫られてとはいえ、江戸時代には田畑の面積や河川工事などに関する算術を寺子屋レベルで学んでいたなんて、驚きです。そういえば「武士の家計簿」や「決算!忠臣蔵」などの時代劇映画を見ても、算用方とか勘定方という役職の武士が詳細に帳簿をつけ、そろばんで複雑な計算をしている様子が描かれていますね。江戸時代の武士や商人、庶民の金融リテラシーはかなり高かったようです。

明治維新を生きた渋沢栄一は、養蚕や藍染の原料である「藍玉」の販売で学んだ金融の知識を日本経済の発展に活かしたことは有名です。金融教育は明治に入っても続けられ、尋常6年生(現在の小学6年生)で歩合、損益、租税、利息、公債株式などを学んでいたことが当時発刊された国定教科書からも明らかです。しかし、大正時代に入ると学習要綱から複利計算などの項目が削除され、学校教育で資産形成に必要な金利や複利を学ぶ機会がなくなってしまいました。

日本を代表する経営者である松下幸之助や「国民所得倍増計画」を掲げた内閣の総理大臣池田隼人は、小学校で複利計算を教えてもらった世代というのは興味深いことです。「国民所得倍増計画」とは、1961年から1970年までの10年間で国民所得を2倍にするという計画で、「72の法則」から金利を割り出すと7.2%の経済成長を想定していたわけです。今の日本では考えられない数字ですが、結果としてこの期間の経済成長率は想定を大きく上回る10.9%となり、国民所得は2倍以上になりました。

低金利が続く現在の日本で「72の法則」を使ってみましょう。0.01%の預金金利で複利運用ができたとしても、資産が倍になるまで7200年と現実的ではありません。しかし、仮に100万円を投資信託で運用したらどうでしょう。分配金を再投資する複利運用を選択した場合、ある程度長期で運用すればトータルリターン4%以上のパフォーマンスが得られた投資信託は少なくありません。4%で運用できれば100万円が倍になる期間18年は視野に入ってきますから、資産形成における複利の効果が実感として理解できるのではないでしょうか。

かつて、家庭でも教育の現場でもお金の話はタブーとされていました。現在は「社会の中で生き抜く力」として学校教育に金融教育プログラムが実施され、2022年4月からは高等学校での金融教育がスタートしています。誰もが江戸時代の日本人に負けない金融リテラシーを身につけるようになる日は近いかもしれませんね。

政府広報オンライン 知らないと損をする? 最低限身に付けておきたい「金融リテラシー(知識・判断力)」
ov-online.go.jp/useful/article/201404/1.html
和算資料ライブラリー
https://www.ndl.go.jp/math/s2/0.html

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