僕の心のヤバイやつ10巻感想
本記事は僕の心のヤバイやつの1~10巻のネタバレを含みます。
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僕の心のヤバイやつの10巻が発売されました。
8巻で告白して交際がはじまって、9巻で少しすったもんだがあって、気が付いたらもう10巻刊行です。
時間が経つのはすごくあっという間で、少し前まで思春期初恋のもどかしさ、いたらなさのいとおしさが遠い遠い前のようです。
今や二人は受験勉強真っ只中の夏の日に居て、より現実的でひっ迫した問題にぶち当たっている最中。
避けては通れぬ進路の話、そして大人になって人生の道を一緒に行くなら切っては切れない性の道。
そう。性の話です。
10巻は徹頭徹尾セックスの話でした。
9巻からぼんやりと子どもがいたらどんな感じか、と少し夢見るような話をした後に、じゃあ実際どうするのさ いたすのさ?とくるわけです。
僕ヤバは取り巻く世界が市川京太郎の見る教室の世界からだんだんと、山田の仕事を取り巻く環境、自分の姉が進学にどう取り組んだのか、その人間関係はどうなのか、どんどん広がっていきました。
小さな出会いと新たな始まりの箱であった図書室を飛び出して、恋敵のナンパイや足立との決着をつけ。子どもの世界にケリをつけたらそれはもう駆け足で。
デートプランに悩み、受験に悩み、キスに悩み、肉体関係に悩み、時間は進み逸る気持ちはどんどん大きくなる。
とりまく人物もおちゃらけコミュ力おばけのお姉から受験を経験して乗り切った姉の像に変わり、小さい子との絡みはお守りでありつつも少し夢見るような未来の予想図が現れ、酸いも甘いも経験してそうなバンドやってるおっちゃんが現れ、挙句にはセックスを楽しみでするだけのクズな野郎まで現れる始末である。
見ていた一面は、これからぶつかる現実に角度を変えてどんどん違った一面を市川と山田にぶつけてくるようになりました。
キスはロマンチックだし、一生の思い出だし、にんにくの匂いではダメだと思うけれど、それはやっぱり小さい事柄なのだ。
肉体関係。
結婚やその先の家族をどうするかを考えるとき、それは逃れようもなく立ちはだかってくる。
(市川にとっては)考えることも多くて真剣に抑止を働かせて考えなければいけないことで、それとは別に(山田は)愛を感じるもののためのコミュニケーションとしても必要な事なのだ。
正直こんな大事でもない(いや、大事なんだよちゃんと考えようね)という風に考えている存在を見せつつも(モモちゃんたちな)、それを見てもなお市川は大事にしたいし、山田は感じたいっていうズレとギャップがある。
この今と未来に対する双方の求めるものとのギャップが、コンドーム探偵とかいうトンチキ緩急の先に用意されていて、おそらく今回のテーマだったのでしょうか。
今の自分の不安を解消するためにセックスというわかりやすい形を求めた山田に対して、市川が自分もしたいという自らのキスと意思表示を通じてそのわだかまりを解消したうえで市川特有の未来を見るが故の形でいつかの約束を取り付けた、というのがまあストーリーとして見事ですねという言葉以外に当てはめられるものではありません。
現実問題の今、未来、その双方を解消するという視点で見ると、中学生がやれセックスがどうのという話を超えて、僕たちの今と未来をどうするかという話に置き換わって、なんとも年不相応にいまだにプラトニックな市川と山田です。
すごく丁寧で、ずっと僕ヤバに息づいてるグラデーションの先にある話だなと思いました。
うーんすごい。すごいしか言えない。
もう一回読もう。
まとめ
一話ごとの出来事を見ると刺激的で非日常的な部分も多いですが、そういう中でストーリーのテンションを保ちながらも演出を入れていけるのはすごいなと思います。
特に単行本という形になり通しで見やすくなるのもあり、よりその流れがわかりやすくなり感動も大きなものとなりました。
あまりネタバレになることは書けませんが、今回の巻末の作者あとがきはこの10巻のストーリーが大切であったものがよく感じられるものであり、味わい深いものがありました。
是非手に取って読んでいただきたいです。
僕ヤバはすばらしいです。
そして、特装版も是非入手してください。
散逸していた様々な設定、読者質問、その他おまけまんが(半開きさんも!)あるので僕ヤバ好きなら絶対損はないです。
読むだけで興奮できるし、なんなら太田の家族構成までもチラ見えできてちょっと切ないです。
今回も素晴らしい巻でした。
Karte28のころに手に取った私からすればここまでずっと面白くて、感動して、劇中の出来事に一喜一憂していた身ですけれど、この先果たして身が持つのかわからないほどのドキドキとか天に召されるほどの血圧上昇とかが待ち受けていることでしょう。
今後ともずっと楽しみにしていたい作品です。
ありがとう僕ヤバ。これからも読みたいです。
今回の報告は、以上です。
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