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続・コミュニティについて ~コモンの「自治」論の感想文~

最近、だいぶコミュニティづいています。今回は”コモンの「自治」論”という本の感想文を兼ねてコミュニティについて書いていきたいと思います。(サムネイルは先日行った仙台駅のHACHIという洋食屋さん。美味しかった😋)


ますますコミュニティが面白い

3月から4月にかけて様々な方にコミュニティについてインタビューをさせていただき、自分の体験だけではなく、コミュニティのいろいろな側面やコミュニティに対しての様々な捉え方を知ることができました。

インタビューの中間結果についてはこちらのnoteをぜひ読んでみてください。

インタビューをまとめていく中で、コミュニティに関しては「ギバー」「テイカー」「マッチャー」という概念を用いて説明したのが以下の図です。

コミュニティの分類

さらに、先日は釧路に行って946BANYAというコミュニティスペースを見学させていただきました。現地に行くと本当に解像度が上がりますよね。

”コモンの「自治」論”を読んで

そんな中、しばらく積読だったこちらの本”コモンの「自治」論”を読みました。この本は「人新世の資本論」でも有名な斎藤幸平さんと精神科医で京大の准教授である松本卓也さんが編集された本で、全7章で様々な方が「自治」をテーマに書いた内容を1冊の本にまとめています。

大学の自治、資本主義の中での自治や、杉並区長の岸本聡子さんが書いた地方自治の話しなど、内容は様々ですが「自治」がテーマになっています。
ちなみに「自治」というとどうしても「政治の話かな?」と思ってしまいがちですが、ここでは「自らを治める」「自分の意志で決める」「自由」というように政治に限定しない、わたしたち全員が対象となりえるような「自治」について取り上げています。

そしてもうひとつのキーワードが「コモン」です。コモンは経済学で言うところの「共有資源」ですが、こちらも少し範囲を広げて教育や医療・福祉、インフラ、そして関係資本といった「社会共通資本」を対象としています。そういった社会共通資本は、誰かが作り出して別の誰かに一方的に提供するという構図ではなく、お互いがお互いのために作り出し守っていくというイメージがあります。ですので本の中では「コモンとは自治のことである」という表現もあります。

本の中ではこの「自治」が失われつつあり、主体的な行動ができなくなっている、主体的な行動をしなくなっているとあります。その原因はいくつかありますが大きなもので言うと、資本主義の元での経済活動が行き過ぎてしまった人新世という時代においてコモンが解体されたことで、自治の力を奪われてしまったということです。

構想と実行の再統一

自治を取り戻すためのキーワードが「構想と実行の再統一」です。自治が失われた状態では「構想」すなわち考えたり企画することと、「実行」が切り離されています。実際に自分の身の回りで考えてみても、口コミ評価が高いお店に行き、身の回りの物をDIYすること無く購入し、UberEatsで食事をしている、という状態で、自分で考えて実行しているようで実際は自分で考えたり自分で作ってはないことに気づかされます。

ここで自ら構想をしていくことが必要になってくるのですが、そのときに大切なのはきちんと政治と接続していくこと、ボトムアップ型のアソシエーションが重要ということでした。これは先日、釧路でみたように「自分の意志」で行動するということがすなわち構想と実行の再統一とつながってくるなと思っています。

「自由とは自分を制限できること」

もうひとつ取り上げたいのが「自己制限」というキーワードです。自治には「自分で意思決定できるという自由」があります。それは「他者に制限されるもの=他律」ではなく「自律」です。しかしこのとき「自律」は「制限がないこと」ではなく、「自分たちに積極的に制限をかけれること」といっています。すなわち自律とは自己制限であるということです。

自律と自己制限は相対する概念のような気がしますが、自律的自治においては「他者との共生を考慮した制限を課していくこと」が重要です。「単に自分が良ければそれでよいという自由」ではなく、「他者を常に想像することができる」ということです。そうやってできた制限は別の人にとっては他律になるのでは?とも思いますが、この本では自律と他律は相対するものではなく「他律を常に反省的に捉えて(=当たり前のものとせず)、自律的な実践をしていくことが重要」といっています。

「他人が決める=他律」か「自分で決める=自律」という二項対立ではなく、他律と自律を常に行ったり来たりしながら自律的な自治を営んでいくという意識が求められているのでしょう。

まとめ

この本では「自治」をテーマに様々な切り口での事例や論理を知ることができました。どれも現時点の身近な内容で、スルスルと読むことができました。これはおそらく私たちが「自治」というものを求めているからではないでしょうか。
「自治」とはもちろん日本に古くからある概念ですが、単に「自治体」「自治会」のような「ローカルな政治」という意味だけではなく、改めてその言葉が示す範囲や自分たちの捉え方を考えるのがよいと思いました。
この本では「自治」はややこしく・めんどくさく・どろくさいともいっています。しかし同時にそのめんどくささから逃げずに自ら構想し自ら実行していくことの大切さと勇気をもらいました。

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