見出し画像

読書記録:諸田玲子『其の一日』

短編小説を何か、と思って手に取りました。諸田玲子『其の一日』(講談社文庫)。

江戸時代の史実からある一日を切り取って想像を膨らませ、主人公の心情を綿密に読み取るような一編一編になっていました。お受験的な日本史しか学んでいない私には知らないことばかりで、読んだあとに主人公とその周辺について調べては思い巡らすのも楽しかったです。

私は歴史上の人物について、勝手な印象を抱いていることが多いように感じます。暗殺されたということは悪いこともしていたのだろう、とか。井伊直弼についての印象は何となくそんな程度で、彼が行った政治については調べるまで忘れていたし、ワードツリーも「桜田門外の変・・・井伊直弼」という貧弱な枝を持つのみです。

「釜中の魚」で取り上げられてた桜田門外の変の前日からの一日は、井伊家の密偵の女性を主人公とすることで井伊直弼の生涯を振り返るような構成となっています。自分の未来には希望がない、埋もれてしまう人間だと見限っていたところからの大出世は、彼にどんな志を抱かせたのか。幕末へと時代がうねり始める時期、誰が政治をしたところでそれは難しいものだったでしょうが、多くの選択肢のなかで結果的に最悪を選び続けてしまったようにも見えます。

しかしそんな彼を愛し続ける女性がいたという著者の描き方によって、私の想像する井伊直弼がダークサイドからすくい上げられて、一人の苦悩する人間の姿へと変化したように思います。そしてよく知りもしない人物を、勝手に善だ悪だと決めつけることは恥ずかしいなぁと思い直しました。

あぁしかし、徹底的に悪役として描いているような作品も読んでみたい気もする。調べてみよう。歴史小説が心に染み入るお年頃なので、これからもどんどん手を出していこうと思います。



以下、雑記
*****

東の幕内力士たち

両親を連れて、大相撲観戦に行ってきました。父は相撲ファンながら両国国技館には行ったことがないとのことだったので、なかなかの親孝行が出来たのではないかと思います。と言っても取れたチケットは14日目の二階の後ろのほう。かろうじて正面だったから見やすかったかしら。

千秋楽にて横綱照ノ富士の優勝が決まりましたが、久しぶりに千秋楽で番付通りの組み合わせになり、なかなかに見ごたえのある場所だったなぁと思います。私の推しは負け越してしまったけれど。ぐぬぬ。

しかしながら国技館のある両国は外国人観光客の多さが桁違いですね。両国駅を降りてすぐに四方を外国人に囲まれて、ここはいったいどこなんだ?と不思議な気持ちになりました。それに比べると、私の住んでいる名古屋周辺はあまり集客に成功していないようにも思います。どちらが良いかはさておき。

少子化による人口減少は、私のような「スポーツ何でも好き人間」には悩ましいことです。大谷選手がグローブを配って、子供たちに『野球しようぜ』と語りかけることで野球人口の減少を食い止めようとするくらい、メジャーなスポーツすら危うい状況なのでしょう。いわんや相撲をや。

日本旅行であの日見た大相撲に憧れて、というキッズが一人でも相撲レスラーへの道を歩いてくれたら喜ばしい限りですが、日本人力士が活躍せねば結局盛り上がらないというジレンマもあり、一国のマイナースポーツの行く末はあまり明るくはなさそうです。

怪我による休場力士も多かった今場所。ひとまずはスポーツ科学を積極的に取り入れ、健康を損なわないような環境を整えてほしいなぁと思います。子どもたちが安心して力士を目指せるように。命をかけることを美徳とするような時代でも無いですし。

そんなことをぼんやり考えているうちに、1月が終わろうとしています。2月に入るということは、我が家の野球シーズンの始まりです。夜はキャンプ中継の再放送を熱心に見る夫にテレビが占領されるので、私の読書もはかどることでしょう。合間でウィンタースポーツも見なければ。ぬふふ。

今回も読んでいただきありがとうございました!

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?