2024年5月11日(土)ブッフォンの「ゴール拡大論」に賛成!

柄にもなく、早朝から下記のようなコラムを書いてみた。興味あればぜひ!

今年のはじめ、「サッカーのゴールを大きくしよう」と、元イタリア代表ゴールキーパーで昨年引退したジャンルイジ・ブッフォンが語ったことで一時、大きな注目を集めた。
昔と比べたら、ゴールキーパーの体が大型化していて、ゴールを決めるのが難しくなっているというのだ。サッカーは、ほかのボール競技と比べてゴール数が少ないが、それがさらに少なくなっていくことで、サッカーの魅力が薄れていくのを心配した発言だろう。
たしかに、サッカーのゴールの大きさは1866年に決まってから、全く変わっていない。なんと150年近く、高さ2.44m、幅7.32mのままだ。
オフサイドのルールにしても、選手交代の人数にしても、これまで何度も変更され、最近ではVARといった最先端のテクノロジーも導入されている。ブッフォンが、ゴールの大きさだけが変わらないのは、なぜ? と思うのは不思議ではない。
しかし、実はそんなことは無い。過去に世界のサッカー界を巻き込んだ論争はあった。それは、今から半世紀も前の1970年代。
訴えを起こしたのはアメリカのサッカー協会だった。
当時のアメリカは、野球やアメリカンフットボールが国民的な人気を集め、サッカーは後れを取っていた。テレビ局との契約も暑い夏のシーズンしか結べない(ほかの人気スポーツが気候の良い時期で契約を結んでいたため)といった状況であり、協会の運営も厳しく、生き残るためには観る側に魅力のあるサッカーへ変える必要があった。
ヨーロッパでも、当時の1試合の平均得点は、イングランドで2.5点、スペインで2.1点、イタリアで1.87点であり、アメリカ協会は、国際ルールを管理するFIFAに対して、「1試合6得点が入る」ことを想定したゴール拡大案を提案した。
ところが、FIFAはこれを全く取り合わず、ゴール拡大の夢は破れたのである。
当然FIFAも、ゴールの少なさなどのアメリカの訴えに理解は示したが、アメリカ協会の勝手にルールを変えようとする振る舞いや、フットボールで金を稼ごうとする考え方に危機感をおぼえて、強く反対したという。
もっとも、アメリカ協会側の提案も結構厚かましかったようで、ゴール拡大だけでなく、オフサイドルールの緩和、選手交代の自由(当時は2人まで交代可能だった)など、次々要望していたようだ。さらには、タイムアップを告げる合図に、陸上競技のスタート用ピストルの発射を使っていたといい、これにはFIFAも止めるように通達していたとか。
この1970年代の論争は、古い体質のFIFAとスポーツビジネスを前提とした新しい考え方を進めたいアメリカの対立であり、2024年の現時点からみたら、古い昔の出来事に思える。が、既に選手交代の人数が大幅に増え、オフサイドも緩和されていることを考えれば、ゴールサイズも拡大されてもおかしくないといえる。
しかも今回、ブッフォンの発言は選手の立場からの提案である。過去と異なり、サッカー界の政争とは離されたゴール拡大論に対して、聞く耳を持つべきだろう。

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