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『君たちはどう生きるか』は全世代向けの児童文学だった。

宮崎駿監督の新作『君たちはどう生きるか』を観てきました!

めっっっっっちゃ面白かった!

ラストではなぜか涙がポロポロと出てしまって、「宮崎駿最高!」「ありがとう!」という気持ちになっていました。

多少ネタバレを含みますが、感想を書いていきたいと思います。





自分は公開初日に行ったのですが、そこには期待と不安がありました。


まずは期待。おそらく最後になるであろう、宮﨑駿監督の作品。広告を一切打たなかったので、開けてみないとわからないプレゼントを開けるような気持ちでした。

また、宮崎駿監督は以前インタビューで「この世は生きるに値すると子ども達に伝えたい」と言っていたことがあり、当時大学生だった自分はとても感銘を受けて、読書を楽しむようになりました。そんな監督が『君たちはどう生きるか』というタイトルの最後の作品をつくる。もうね、めちゃくちゃ楽しみだったんですよ。

一方で、不安もありました。面白くないんじゃないかって。前作の『風立ちぬ』は全然内容を覚えていないくらい、つまらなかった。なんで主人公はあんなに執拗にタバコを吸うのだろうくらいしかマジで覚えていない。今回もそうだったらどうしよう…。

また、最近のアニメは作画がよく、ufotableの『鬼滅の刃』やMAPPAの『呪術廻戦』に慣れていたら、ジブリは古く見えてしまうんじゃないか。そんな不安もありました。

あと、是枝監督の『怪物』をワクワクして観に行ったら、鑑賞後にくっっそ重たい気持ちになってしまったので、ちょっとね、ハードルを上げ過ぎちゃいけないな、なんて思ったのであります。


期待と不安が入り交じる中、いざ鑑賞。


最高でした。序盤はゆったり進んで『風立ちぬ』みたいな作品なのかな?って思ったけど中盤からファンタジーで、まるで『千と千尋の神隠し』。セルフオマージュもたくさん出てきて、最後には感無量で泣いていました。

面白かった点をちょっと列挙しておきます。

・弓を引くシーンは『もののけ姫』っぽかった
・わらわらはこだまっぽかった
・船をこぐ女性が出てきたときは、『千と千尋』っぽいなって思った
・青鷺、ペリカン、セキセイインコ、鳥がいっぱい出てきてかわいかった
・作画の心配いらなかった。ジブリらしく、食べ物も美味しそうにやわらかく描かれていた

Twitterで「これまでの宮崎駿作品をカルピスだとしたら、今回の作品はカルピスの原液だ」という意見を目にしました。とても面白い意見です。

個人的には、『君たちはどう生きるか』は宮崎駿監督が全世代向けにつくった児童文学って感じがしました。

全世代とは書いたけど、子どもにはちょっと難しいかもしれないと思います。

これまでのジブリ作品と共に育ってきた大人にこそ刺さるような、児童文学。


分からない部分も多々あったのですが、随所にジブリらしさがあり、とっても楽しかった。


作中に出てきた老人が宮崎駿自身なのかもしれない、13個の積み木がこれまでの作品を表しているかもしれない

考察したくなる内容はたくさんあります。でも、そんなことはどうでもいい。

それ以上に、

宮崎駿監督、やってくれたなと。


広告なしで、期待と不安で入り交じったまま鑑賞したけど

どんどん引き込まれて、最後には拍手したくなるような、

「物語」の力に圧倒されました。

もうね、ありがとうと言いたい。お疲れさまでしたと言いたい。そんな気持ちでした。


「この世は生きるに値する」は宮崎駿監督が出発点のメッセージではなく、これまでいろんな小説や映画から「受け取ってきた」らしいです。

そして自分もそれを受け継いでいると。

今回の『君たちはどう生きるか』では、直接的な「このように生きよう」というメッセージはありませんでした。もちろん説教もなし。

でも、作品全体を通じて「生きること」は描かれていました。

自分で頭に傷をつけたから、そのことに責任を持とうとした眞人。

その選択をしたら火事で死ぬことになると知っても「眞人を育てられるって最高じゃない!」とその生き方を選ぶヒミ。

生きることには苦しみが伴うし、美しいことばかりではないけど、

それでも「この世界」を精一杯生きていくんですよね。


いやー、よかった。ホントありがとう。


「よくわからなかった」という意見もあるけれど、僕はそのわからなさも含めて、とっても面白かったです。そんな感想を持ちました。


最後に。今回改めて思ったことがあります。


それは、前情報を一切頭に入れずに、期待と不安が入り交じった中で映画を観るというのは、とても贅沢な行為だということ。


面白いかもしれない。つまらないかもしれない。エンターテイメントを楽しんだとスッキリするかもしれない。見たくない現実を突きつけられて、落ち込んでしまうかもしれない。


でも、その可能性に飛び込むって素敵。とてもいいお金の使い方。そんな風に思いました。


感想は以上です。

宮崎駿監督、本当にお疲れ様でした。そして、ありがとうございました!!

おわり。

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