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『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』感想とおすすめの本など

三宅香帆さんの『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』がとても面白かったので、その感想を。また、この本に連なる書籍を挙げていきたいと思います。

※ネタバレありなので、ご容赦ください。あと、長文です!

ざっくりとした解説をすると、「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」という問いに正面から立ち向かう一冊。『花束みたいな恋をした』を導入として、労働と読書が両立できない現代に焦点をあてる。

そこには歴史があるのではないか?と考え、なんと明治時代から現代までにおける「読書」の立ち位置を解きほぐしていく。すごい。

最後は自己実現とバーンアウトにも触れていて、自分の興味、関心とガッチリ合って、「わかる…!」ってなった。


Twitterでもnoteでもくり返し書いていますが、自分は仕事との距離の取り方を間違え、メンタルダウンを経験しています。休職期間は3年にも及び、もう仕事に復帰するのは無理なんじゃないかと思うこともありました。

セルフケアを身に着けたり、リワークに通ったりしながら心と身体の調子を整えて、なんとか復職。その後も浮き沈みありつつも、セルフケアを駆使して、なんとか3年と4ヶ月働いています。

本書に出てくる「半身で働く」という言葉は、自分が心掛けている60点主義と通じる部分があると思いました。

60点主義は完璧主義になりがちな自分を落ち着かせる言葉です。完璧を目指すより、まずは60点くらいを目指して終わらせる。

または、仕事で50点しか取れなくても、夕食を作れたら20点追加。仕事と家事や趣味、トータルで60点を取れたら自分を褒める。そんな風にしています。


すみません、前置きが長くなりました。

仕事一辺倒になってバーンアウトしてしまった自分にとって、働くってなんなんだろう、再発せずに継続的に働くにはどうしたらいいんだろう、というのはずっとテーマでした。それに関する本や作品に触れてきたので、このnoteにまとめておきます。

①花束みたいな恋をした

まず、『花束みたいな恋をした』はAmazon prime Video で観られます。本書にも触れられていた通り、ただの恋愛映画ではないので、全人類一度は観るべきだと思ってます。

②スマホ時代の哲学

哲学者の谷川嘉浩さんの本。スマホを切り口に、寂しさに振り回される僕達について論じた一冊。読書の手前にある、慌ただしい現代社会について考えたい人におすすめ。

仕事の後、余暇の時間もSNSや漫画、ゲームなど、マルチタスクで日常を埋めてしまう、激務で満たしてしまうんですよね。

本は読めないけどTwitterはできる。パズドラならできる。果たしてそれでいいのだろうか問題。

それに対する処方箋として「何かを作る、何かを育てる」を提案してくれているので、それも含めて面白い本です。

③暇と退屈の倫理学

哲学者の國分功一郎さんの本。暇とは何か、退屈とは何か。それを考える上で、狩猟時代から現代まで振り返っています。労働の在り方と余暇の過ごし方、もっともっと考えたい人におすすめ。

僕達は部屋の中でじっとしていられなくて、日常的な不安から逃れたくて、ウサギ狩りに出かけるような暮らしをしてしまっているのではないか。ちょっと難しいけど、挑戦したい人はぜひ。

④人生のレールを外れる衝動のみつけかた

4月に発売された、哲学者の谷川嘉浩さんの新書。タイトルだけだとキャリアを降りるようなイメージを持ちますが、むしろキャリアを形作る一冊。

現代に暮らしながら見つかる「本当にやりたいこと」はひとつではないし、間違っているかもしれない。「自分の中にある衝動や偏愛にもっと声を傾けていいんじゃないの?」という一冊。生まれたてホヤホヤの本なので、いろんな方に読んでほしい。フリーレンの話とか出てきます。

⑤欲望の見つけ方

翻訳本。人は他人が欲しがるものを欲しがる。他人を模倣して、何かを手に入れようとする。「おしゃれなカフェでMac book を広げて仕事している人」になりたがったり、「フォロワーが多いインフルエンサー」になりたがったりする。注意を奪い合う現代人が何に踊らされているのか。この辺りは本が読めない要因のひとつだと思うので、おすすめ。

⑥なぜ私たちは燃え尽きてしまうのか

翻訳本。本書でも紹介されていた、バーンアウト当事者の元大学教授が執筆した本。実はまだ読んでいる途中なのですが、引用してあって「おぉ!」ってなりました。当事者による徹底的な分析が面白いです。

⑦自衛隊メンタル教官が教える心をリセットする技術

本が読めないのはシンプルに疲れているからってのもあると思います(経験談)。メンタルヘルスにちょっと不安を抱えている人におすすめの一冊。重要な問題について考えるためにも、まずは疲れをとろう。そして小さく動こう。

⑧セルフケアの道具箱

カウンセラーの伊藤絵美先生による本。うつ病になってしまった人だけでなく、メンタルヘルスに問題を抱えながら必死で働いている人にも役立つセルフケアがたくさん紹介されています。なんとか働いていきましょうね。

おわりに

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』の感想をと言いながら、結局は自分の話、そしておすすめの本を紹介するという悪行を働いてしまいました。

でも、確かに繋がっているのです。仕事で自己実現をしようとしてしまう、それは個人だけの問題じゃない。僕たちが生きる社会の問題であり、現代の問題。

それを考えるには、どうしても過去を紐解く必要がある。落ち着いて、現在を観察する必要がある。

最後に紹介した2冊は、現代社会で働くこと、あるいは生きていくことに疲れ果てた人に贈りたいです。僕みたいにメンタルダウンしてしまって、長い闘病生活に入る前に、休める人は休んでほしい。

慌ただしい日々の中で、立ち止まって、休んで、仕事と暮らしをやっていく僕達の日々が、ちょっとでも楽しくなればいいなと願っています。

おわり。

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