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ドラマ「相棒シーズン13」(相棒:成宮寛貴)【第17~19話(最終話)感想】立つ鳥跡を濁すこともある

シーズン13 第17話「妹よ」

毎度お騒がせの陣川さん(原田龍二)。そんな彼の妹・美奈子(水崎綾女)と連絡が取れなくなったことからこの話が始まる。彼に言わせれば自分とは全然似ていないというが、惚れっぽいところや正義感が強いが無鉄砲なところはとてもそっくりだった。でも何もかも同じかと言えばそうではなく、妹の方が兄より一枚上手だった、という締めで終わる。前後の深くシリアスなお話に挟まれて、とてもライトである意味ほっこりするようなお話。そういう意味では陣川さんも「相棒」には欠かせない人なのかもしれない。

シーズン13 第18話「苦い水」

今回は国会議員・片山雛子(木村佳乃)にまつわる話。彼女も社美彌子とはまた違う意味でなかなか癖の強い人だという印象だ。実際、右京の得意技「最後に一つだけお聞きしたいことが」攻撃を見事にかわすほどだ。そんな彼女はある事件に巻き込まれていた。

実はこの回でのカイトくんと片山議員は「はじめまして」と挨拶をしていたことから初対面だということが分かる。それと同時に彼が彼女に関わる最後の回でもあるということになる。にも関わらず、ここにきてもカイトくんの相棒引退を全く匂わせてもないようなのがやけに気になってしまった。彼らの初対面のシーン自体には不自然なところはないかもしれないが、最終話への漠然とした不安が生じた。

それはひとまず置いておいて、この話はかつての片山雛子と事件の被害者でもある饗庭丈弘(伊嵜充則)との苦い恋物語でもあった。チョコレートにまつわるだけにビタースイートテイストな結末を迎えるわけだが、片山雛子のことが少しわかった気がして、そして少し彼女のことが好きになった。

シーズン13 第19話(最終話)「ダークナイト」

さて、今回がシーズン13の最後を締めくくる話となる。と同時にカイトくんが右京さんの相棒を務める最後の話でもある。それは視聴者目線では知ってることだが、どのように彼が引退へと至るのだろう。前回までの話を見てきていても、伏線のようなものもほぼ感じられずにいた。敢えて言えばカイトくんの彼女の悦子に関する何かだろうか、というぐらいだ。

だが、どうやら違うらしいと冒頭ですでに分かってしまった。今回の表題になっている「ダークナイト」がカイトくんだったからだ。「ナイト」ならいい。だが、「ダーク」がその上に付くのだ。悪い予感しかしなかった。

そんなダークナイトが世間を賑わせていた。警察が裁けない「悪」を殺しではなく暴力で成敗する存在だったため、世間には彼を正義の味方と思う人もわりあい多かった。だが、ある時に彼が殺人を犯してしまったことで世間の評価は一変する。

本物のダークナイトであるカイトくんはそれが偽物の犯行だともちろんわかるのだが、それを右京に伝えるわけにはいかない。右京も直接は言わないまでも、いつも通りならばカイトくん=本物のダークナイトと知ってるか、少なくとも感づいているに違いない。いつ偽物が偽物と公に判明することになるのか。その過程を楽しむという意味では面白い話ではあった。

でも、それがカイトくんである必要が果たしてあったのだろうか。大いに疑問が残ってしまう、そんな彼の相棒としての幕引きだった。今まで感想でも再三書いてきたように、彼が引退するきっかけになるような箇所は特には見付けることができなかった。今回の話を見終った時点で考えてみても、最終話までの話で彼がダークナイトだと匂わせるような伏線はなかったように思う。

そうして考えていくと、どうにもこの幕引き話は納得がいかない。急ごしらえの引退話の印象しかない。おそらく「大人の事情」が絡んでしまったのだろう。それにしても、もっとなんとかならなかったのだろうかと思えてならない。今回の話は放送当時でもおそらくマイナスな意味で話題になったことだろう。テレビでの再放送でもこの回が放送されたのは見たことがない。

ドラマ「相棒」は今まででかなり膨大な話数が放送されてきただけに全話まとめての一挙放送はされることはなく、「相棒セレクション」と題して、各シーズンの中から傑作と選んだ回だけをピックアップして再放送されている。シーズン13中からもいくつか放送されていたが、肝心の最終話だけはさらりとかわしていたように放送されてこなかった。だが、この最終話を見たことでなぜなのかが分かった気がする。「傑作」とは評されてないからなのだろう、と。(実際のところは知る由もない‥)

わざわざ「相棒シーズン13」を全話見る必要があったのか、とさえ少し思ってしまった。だが、それでも見て良かったと今は思う。今まで見ていなかっただけにもしかしたら納得のいく引き際話があったのかもしれないという妄想ばかりをしていたが、それが見事に破られた今はそういう意味でひとつスッキリしたからだ。

「立つ鳥跡を濁さず」とは言うが、必ずしもいつもそんな風にキレイに終わることができるわけではない。今回のカイトくんのように右京と「修復不能」な関係で終わることだってあるのだ。そのことを教えてくれた、そういう最終話だったということだ(と思うことにしよう)。

右京の相棒としての引き際では、カイトくん以外では亀山と冠木亘は見てきている。どちらも唐突感はあった気がするが、今回に勝るものはなかったと言える。ただ、ラストで右京がカイトくんに
「しかるべきときがくればまた会えますよ」
と言っていたが、カイトくんとしてだけでなく、彼を演じた成宮寛貴さんとしてでもまた会える日が来ると信じていたい。

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