背徳純愛小説『藍に堕ちて』第七話「藍華と蒅」
「ちょっと蒅《すくも》! アンタまたなんで作務衣なんかで来るのよ! どこも寄れないじゃない!」
裕が不機嫌そうにそう言うと蒅と呼ばれた男性が立ち上がった。彼は面倒くさそうな顔でじろりと裕を睨んでいる。
「うるせえぞ、裕……そっちの人がお前の先輩か?」
低い低音だった。けれどよく通る良い声だ。
黒い短髪に鋭い三白眼。作務衣を身に纏う身体はしっかりとしていて背も高く、一般的に見ても格好良い感じの男性だ。けれど、どこか近寄りがたい雰囲気があり、職人さんだというのも頷けた