国樹田 樹

国樹田樹(くにきだいつき) 出版世界の片隅でひっそり生きている凡人。 旧名義『更紗』に…

国樹田 樹

国樹田樹(くにきだいつき) 出版世界の片隅でひっそり生きている凡人。 旧名義『更紗』にて紙書籍七冊・電子書籍十三作刊行。 小説や雑記を掲載します。時々絵も。 よろしくお願いします。 HP→https://kunikidaituki.wixsite.com/tokiwaan

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  • 背徳純愛小説『藍に堕ちて』

    人は誰しも、愛されたいのだ。 この恋は不義か、それとも純愛か―? 三十二歳の兼業主婦、泉藍華(いずみらんか)は結婚六年目。 けれど、もう四年も夫とセックスレスだった。 仲が悪いわけではない。ただ身体を重ねないだけ。 レスや家事の負担など多少の不満はあれど、結婚はそういうものだと諦めていた。 自分より年下の後輩が妊娠により時短勤務となっても、子供だけが夫婦ではないとも考えた。 だが残業を早めに終えて帰宅した彼女は、玄関から聞こえてくる夫の声に立ち尽くす。 ※作者は不倫を推奨しているわけではありません。お話のテーマに『略奪』があるため、こういった設定となっております。 (作者個人としては浮気・不倫した人は去勢されてしまえ、という考えです。ただ不遇な人は報われてほしいな、とも思います)

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仕事歴&自己紹介

名前:国樹田樹(くにきだいつき) 旧商業名義:更紗 ファンタジーから現代恋愛に至るまで、雑多に書き綴っています。 基本頑張る女性ヒロインが多いです。 育児の合間のひと時に、残業後の寝る前に、幸せな気持ちになっていただければ嬉しいです。 どうぞよろしくお願いします。 *旧商業名義「更紗」について* 2017年11月~2022年8月まで活動。 2022年12月より国樹田樹名義に改名し再活動開始。 ◇実績◇ 紙書籍 単行三冊・文庫二冊・コミカライズ二冊刊行 電子書籍 十三冊

    • 背徳純愛小説『藍に堕ちて』第十七話「藍色変化」

      「私……古いものや、長く続いているものが好きなんです」  強い引力に引き寄せられるように、藍華の口からするりと本音が溢れ始めた。  駄目だとわかっているのに、止められない。  「昔は工芸品の豆皿とかを集めていたり、しました」  綱昭と結婚する前のことだ。  藍華は元々、洋食より和食の方が好きだった。一人暮らしの頃は毎日そうしていた。  仕事帰りに立ち寄った陶器市で買った角皿は懐かしくも温かみのある竹の葉柄で、他に唐草模様の小鉢やひょうたん柄の取皿など、日本らしさのある

      • 背徳純愛小説『藍に堕ちて』第十六話「解放」

        「じゃあまずは、作業の流れと柄の付け方について教える」  銀色の大きな作業台に移動した蒅は、白いハンカチを広げて置くと説明を始めた。  彼は壁を指差し、飾ってある柄入りの布地を見るように藍華に促す。 「ここにあるのが柄の見本だ。 折ったり縛ったりしてこういう柄をつける。どれがいいか選んでくれればやり方を教える」  隣にいる裕はまだ不満げだが、藍華の体験を邪魔しないよう気を遣ってくれているらしく並んで聞いている。 (どの柄も綺麗……だけど)  壁には額縁に入った柄見本

        • 身体に根付いた行動

          こんにちは。国樹田です。 猫ちゃんの画像はみんなのギャラリーからお借りしました。 シルエットなのでわかりませんが、どんな柄の子なのでしょうか……黒猫ちゃんなら昔実家で飼っていた子と横顔がよく似ています。 さておき。 少し前、腰を痛める出来事がありました。子供の送迎が終わり玄関の鍵を開けた後、手からつるりと滑って鍵が落ちてしまった時、あ、と思いかがんだ瞬間にぐき、となったのです。 ああ、あるある……と思って下さる方もいるのではないでしょうか。 海外では通称「魔女の一撃」とも呼

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        • 背徳純愛小説『藍に堕ちて』
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          背徳純愛小説『藍に堕ちて』イメージPV

          人は誰しも、愛されたいのだ。 これを不倫と呼ぶか、純愛と呼ぶかはあなた次第。 Japanese romans novel title「Japan blue love」 author:ituki_kunikida Music:MaouDamashii ◇あらすじ◇ 三十二歳の兼業主婦、泉藍華(いずみらんか)は結婚六年目。 けれど、もう四年も夫とセックスレスだった。 仲が悪いわけではない。 ただ身体を重ねないだけ。 レスや家事の負担など多少の不満はあれど、結婚はそういうものだと諦めていた。 自分より年下の後輩が妊娠により時短勤務となっても、子供だけが夫婦ではないとも考えた。 しかし残業を早めに終えて帰宅した彼女は、玄関から聞こえてくる夫の声に立ち尽くした。 内側から聞こえてくる知らない女性の甘えた声と、続く激しいリップ音。 あんなキスを夫としたのはいつだろうか……。 夫に拒否され裏切られた藍華は女としてのプライドも、抱いていた愛情さえも傷つけられ泣いた。 そんな折、同僚に誘われた彼女は徳島県へと旅行することに。 同僚に案内された染工房で出会ったのは、顔に火傷の痕がある職人、蔵色蒅(くらしきすくも)。 藍染体験がきっかけで知り合った二人は、反発し合いながらも互いの傷に触れ、惹かれ合っていく。 薄い色ならまだ、引き返せた。 けれどもう、色は濃く深くなってしまって…… セックスレス、実家の問題、義母との関係、出産、仕事……現代女性を取り巻くさまざまな難題の中、誰にも心を癒してもらえなかった女性は、ただ一人の手に堕ちる。 藍がめに布が沈むように、深く濃く染まりながら、堕ちていく――― note、エブリスタにて連載中。 本編 https://note.com/kunikida_ituki/n/nf8d096457bd9?magazine_key=mb381622a6df5 絵は自作。 素敵なBGMは魔王魂様からお借りしました。

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          背徳純愛小説『藍に堕ちて』第十五話「藍波」

          「手袋はどうする?」  夜の海のような濃紺の染液がたっぷり入った藍がめの前で、蒅に聞かれた。  彼は工房の壁際に並ぶ棚に向かうと、引き出しを開けて何やら取り出している. 裕はまだ戻っていない。母親との通話が長引いているようだ。 「そのままでは駄目ですか」  揺れる水面を見ていた藍華が顔を上げて尋ねると、蒅がふり返り彼女の手元に目をやった。 「あんた、肌は強い方か?」  棚から何枚か重なった白布を持ってきた蒅は、染液の隣にある広い作業台にそれを置くと、再び藍華のそば

          背徳純愛小説『藍に堕ちて』第十五話「藍波」

          背徳純愛小説『藍に堕ちて』第十四話「淡藍薄布」

          「あんた、酷ぇ顔だな」  そんな無礼な言葉を、他人から投げつけられたことなど、今までなかった。  だが藍華はいま目の前にいる男から実際に言われたのだ。 (急に、なに?)  唐突すぎて反応の遅れた思考がたちまちめぐり始める。怒りのせいだ。  しかし何か言う前に、顔を青くしていた裕がすごい剣幕で怒り始める。 「ちょっと! アンタってば先輩に何てこと言うのよ! 一体どういうつもり!?」 「どういうつもりも何も、俺は思ったことを口にしただけだ」 「それが悪いって言ってんの

          背徳純愛小説『藍に堕ちて』第十四話「淡藍薄布」

          背徳純愛小説『藍に堕ちて』第十三話「真剣」

          「蒅ー! 来たよー!」  蒼い秋空の下、工房前では裕の声が大きく響いていた。  藍華達が到着したのは午前九時ごろ。  場所は裕の家から車で十分程度走ったところだ。  徳島が誇る一級河川、吉野川から分流した川沿いにその工房はあった。  玄関口には年季の入った板看板が掲げられ、黒い筆文字で大きく『蔵色藍染處(くらしきあいぞめどころ)』と書いてある。  工房の隣には大きく古めかしい日本家屋が建ち、恐らく築百年はゆうに超えているだろう。  裕曰く、蒅の家は何代も続く藍染處で

          背徳純愛小説『藍に堕ちて』第十三話「真剣」

          背徳純愛小説『藍に堕ちて』第十二話「返信」

           朝日と共に目を覚ました藍華は、まだ六時前という早い時間ではあったが久方ぶりにすっきりとした朝を迎えた。  階下からは、すでに家人の物音が聞こえている。  きっと裕の母親が朝食の準備をしてくれているのだろう。  手伝いに行くため、簡単に身支度を整えた。  するとふと、いつもよりも動きやすいことに気付く。   (身体、軽い……?)  十分に眠れたからだろうか。  疲労がすっかり消えていた。  普通、他人の家でこうも身体が回復することはないだろうが、藍華には逆だったらしい。

          背徳純愛小説『藍に堕ちて』第十二話「返信」

          書きたいものを書きたいように

          書きたいものを書けばいい。 書きたいものを書いてはいけない、だってそういうのに限って売れないから。などと言う編集者さんがいたら、ちょっと注意したほうが良いかもしれません。 (特に相手にしっかりした実績があるかどうかはきちんと確認しましょう) 正直なところ、数年作家として商業活動をしていた私としては「書きたいものを書かねば悔いが残る」としか言えないからです。 (※私の商業活動履歴については自己紹介記事をご覧ください) 簡単な例を挙げてみると、「売れるもの」を意識して妥協して書

          書きたいものを書きたいように

          背徳純愛小説『藍に堕ちて』第十一話「自己嫌悪」

           いつもより濃く見える茜色が、スマホの黒い画面を照らしている。  反射した光はどこか刺々しく、ささくれた藍華の心を刺すようだった。 (……やっぱり)  ふう、と息を吐いて、窓の外を見る。  強い秋風に揺れる黄金の海原。美しいが、やがて刈り取られる運命を思うと虚しく、妙な不穏ささえ感じる。  それは、今が逢魔時と呼ばれる時間帯だからだろうか。  階下からは、ほのかに味噌の香りが漂ってきている。のどかな筈なのに、自分の心には早くも木枯らしが吹いている気がした。  裕曰

          背徳純愛小説『藍に堕ちて』第十一話「自己嫌悪」

          食事と効率

          原稿を書いていて都度思うのですが、食事と仕事の効率、つまり成果も含めて、これらは密室に関係している気がします。 お腹いっぱいだと眠くなる……のはほとんどの方がそうかもしれませんね。 私の場合、なるべく腹八分目で済ますようにしていますが、どちらにしろ食べた後は基本的に原稿は書きません。 以前一週間ほど検証してみたのですが、食べた後に書いた文章と、空腹時に書いた文章ではまるきり出来上がりのレベルが違っていたのです。 お腹が空いている時は集中力が上がるような気がするので、恐らくその

          食事と効率

          背徳純愛小説『藍に堕ちて』第十話「声音」

          「あ〜やっぱ畳って最高! 帰ってきたって感じするー!」 「こら裕! ここは藍華さんのお部屋なんだから、貴女は自分の部屋で転がりなさいな!」 「え〜、あたし先輩と一緒がいいな〜」    まるで駄々っ子のように言いながら、裕が畳の上で寝っ転がっている。  彼女の母親はそんな裕を渋い顔で嗜めると、やれやれと言いたげに首を振った。   それから藍華を見て「ごめんなさいねぇ。この子ったら。お仕事でもご迷惑をかけてるんじゃないかしら」と続けた。 「いえ、私の方が助けてもらってばか

          背徳純愛小説『藍に堕ちて』第十話「声音」

          リリー・マルレーンを聴きながら

          朝は大抵、何か音楽を聴きながら作業をしています。 それはCDプレーヤーだったり、PCやタブレットから流れてくるYou Tube音楽であったりと様々で。 昔はよくラジオを流しつつ勉強などをしていたものですが、昨今は時間やダイヤルを合わさなくともスマホでネットラジオを聴くことができるので手軽で快適になりました。CDもAmazon Musicを使えばプレーヤー自体が必要ありません。 しかしやはり懐かしいのは、夜も更けた時間帯、お気に入りの声優さんのラジオに周波数を合わせ、けれども田

          リリー・マルレーンを聴きながら

          背徳純愛小説『藍に堕ちて』第九話「指輪の重さ」

          「もしかしたら先輩、あいつに気に入られちゃったかもしれませんねぇ」 「え?」  裕の実家に着いて早々、蒅は二人を降ろすなり「仕事に戻る」と言って帰ってしまった。  彼のブルーカラーのSUVを見送った後、振り返った裕の言葉に藍華は首を傾げる。  そうは思えなかったからだ。  あの後はずっと裕と蒅の二人が口喧嘩を繰り返していただけで、藍華は彼とさほど話してはいない。最初に会った時に少し会話した程度だ。  しかも蒅はあまり感情が顔に出ないのか、終始無表情に近かった。変化が

          背徳純愛小説『藍に堕ちて』第九話「指輪の重さ」

          手描きの効果と半デジタル

          普段はiPadで絵を描いているのですが、時折ふと「ああこのシーンは手描きだな」と感じる時があります。 デジタルは便利で、紙も使用せず環境にも優しい気がしますが、手描きにはデジタルでは表現できない臨場感というか、何かそういう絶対的に揺るがせないものがある気がするのです。 そんな私は最近はもっぱら下書きは手描きで、ペン入れと着色はデジタルで、と使い分けています。 自分では勝手に半デジタルと呼んでいたり。 画像はモノクロですが、自己出版用に用意している作品の表紙です。 コピー用紙に

          手描きの効果と半デジタル