ドライビングテクニックベーシックPart.4「ブレーキング・応用編」

 「荷重移動」という言葉がある。スキーのテクニックでも聞いたことがあるだろう。スキーは荷重移動をうまく使ってターンしていくわけだが、クルマをうまく曲げるためにも、実はこの荷重移動が大きく関わってくる。

 もちろん、街中をゆっくり走行しているときは、どんなドライバーでもハンドルを切ればクルマは曲がっていくが、ここで語るのは、あくまでも全開で走っている際の曲げ方についてである。

 さて、初心者がもっとも陥りやすいのはアンダーステアを発生させてしまうことだろう。同じようにステアリングを切り込んでいるのに、なぜアンダーが発生してしまうのか。それは、タイヤのグリップ力に大いに関係がある。

 クルマはブレーキングすると前のめりの姿勢になる。これは、まさにフロントに荷重がかかっている状態だ。物理法則では、接地面の垂直荷重に比例して面圧は高くなり、接地面圧が高まればそれに比例して摩擦力も大きくなる。

 つまり、フロント荷重になることで、車重がフロントタイヤに大きくかかるようになり、必然的にタイヤの摩擦力、つまりグリップ力が高まるわけだ。フロントタイヤのグリップ力が上がれば、ステアリングを切り込んでもタイヤが滑らずアンダーは発生しない。

 そのため、クルマをうまく曲げるためには、確実にフロントに荷重を移してやることが重要。アンダーが発生してしまうのは、うまくフロント荷重になっていない、ブレーキングがうまくできていない、ということになる。

 もちろん、ただブレーキングするだけで曲がっていくわけではない。フロント荷重になったときに、タイミングよく転舵してやることが必要。誰でもコーナーに入るときにはブレーキングする。だがアンダーが発生してしまうのは、このステアするタイミングが合っていないことが多い。せっかくフロント荷重になっても、ブレーキを離してフロントから荷重が抜けてしまってから切り込んでいるわけだ。

 このほか、単にオーバースピードでタイヤのグリップ限界を超えてしまった、ということも考えられる。そのあたりを今一度見直してみる必要はあるが、ブレーキングもちゃんとしているし、ステアするタイミングも合っているのにアンダーが発生することがある。

 タイヤには摩擦円という概念がある。詳しい解説はここでは割愛するが、タイヤの縦方向のグリップ力と横方向のグリップ力は、それぞれを足して絶対に100%以上は発揮しないという理論だ。簡単に説明すると、縦方向のグリップ力というのはブレーキングか加速している回転方向のグリップ力なのだが、ブレーキングで100%近く使ってしまうと、横方向つまりコーナリングのためのグリップ力が発生しなくなる。100%のブレーキングというのはいわゆるロック状態だが、ロックしなくても98%とか99%など100%に近く使ってしまえば、そこでいくらハンドルを切り込んでも曲がることはない。

 「ブレーキング・基礎編」で、ロック寸前がもっともグリップ力が高いと述べているが、それはあくまでブレーキングだけの話であって、コーナリングするためには、ある程度横方向のグリップも残しておかなければならないのだ。つまり、ギリギリのハードブレーキングしながらハンドルを切り込んでもアンダーが出るだけ。実際にコーナーを攻めているときに、そこまで考えることはまずないとは思うが、もし曲がらないなら原因の一つとして考えてみて損はないはずだ。


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