カーコラム 「走り屋御用達 ブレーキパッドと言えば "FERODO(フェロード)」
古い世代の走り屋にとって、最も馴染み深いスポーツパッドはなんと言ってもFERODO(フェロード)だろう。
FERODO(フェロード)は英国の部品メーカーだが、その昔、日本の日立化成と自動車部品の摩擦材(ブレーキパッド、クラッチ板など)の分野で技術提携を結んでいた。
その昔、PF60型ジェミニZZ R、A175Aランサー・ターボⅠ1800GSR、AE86トレノ2ドアセダンGTの3台は、ブレキーパッドはすべて日立フェロード、英国FERODO(フェロード)社製のパッドを使用していた。
ZZ Rとランタボは、フロントに日立フェロードM2424Fを使っていた。因みに最後のFはフロント用を意味する。このパッドは初期制動重視なのでフロント用しかラインナップされていなかった。
N2424Fは、FERODO(フェロード)社のMタイプをベースにしており、主として高性能市販車での高速走行及びスポーツ走行を目的としたブレーキパッドだった。
このパッド、効きに関してはそれこそ鬼のように効いた。160km当たりから、軽くブレーキペダルに足を乗せただけで100kmあたりまで一気に減速可能だった。ともかく、高速道路では無敵のパッドだった。
しかし、その異様に高い摩擦係数のため、めちゃくちゃ摩耗が早く、元気よく走ると2000キロ毎の交換が必要だった。
ライフの面を考えなければ極めて良く止まり、安全なブレーキパッドであった。
FERODO(フェロード)と言えば、走り屋やラリー屋の定番と言えるDS11(フロント)、DPM(リヤ)の組み合わせだろう。
その黄金のコンビネーションをAE86の時に初めて体験した。
DS11(通称イレブン)は、摩擦係数そのものは高いわけではないが、高温域での摩擦係数の変化が少いのが最大の特徴だ。つまり、耐フェード性に優れたパッドである。
DPMは、N2424Fに似たフィーリングと性能を持ったパッドで、耐フェード性はDS11には及ばないまでも、低温時から高温まで安定した摩擦係数を維持し、タッチも変わらない。
DS11とDPMの組み合わせは、リヤDPMの摩擦係数の方がフロントのDS11よりも高いので、ブレーキシステムのPバルブを調整して圧力配分をややリヤ寄りにしてやると、リヤのロックを早めることができた。
このセッテイングは、積極的にリヤをスライドさせるジムカーナやラリー、それに峠のドリフト走行などでは極めて有効だった。
AE86などFRに場合は、コーナリングアプローチの際のブレーキングによりリヤを振り出し、そこからアクセルコントロールにより一気にドリフト状態に持ち込めた。
また、リヤにドラムブレーキを採用しているクルマ向けにはAM4という傑作ブレーキシューがあった。
AE86のGTはリヤがドラム式なので、AM4を使用するドライバーは多かった。
AM4を組み込んだリヤドラムブレーキだと、サイドブレーキをチョこっと引いただけで面白いようにリヤはロックした。
余談になるが、昔は高性能パッドを組み込むと「焼き入れ」という儀式があった。
焼き入れの目的は、パッドの成型時に余分な可塑剤や油脂分を燃焼させ、摩擦材の成分を安定させることにある。
さらに、熱によりローターとパッドの当たり面を馴染ませることももう一つの目的だ。
AE86の時に焼き入れやったが、走行中、常に左足でブレーキを軽く踏んでいるのは結構大変だった。
信号で止まると真っ白い煙と異臭がモアモアと立ち上り、隣のクルマや歩道の人々から好奇な視線が矢のように飛んでくる。
ブレーキローターは熟した柿のような色になり、そりゃもう大変だった。
現在では、摩擦材の均一化や面つけ加工などが製造の段階から施されているため、焼き入れなど過去の話になってしまったが、パーツの最終仕上げ段階をドライバーが行うという焼き入れ儀式は、当時のスポーツドライバーにとっては極めて神聖且つ意義深い儀式だったのである。
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