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2021.9.1 WED 白桃ウーロンはアニメだった

半開き喫茶・雲間のテイクアウトメニューとして「白桃ウーロン」なるものを作った。「白桃ウーロン」でググってみたらおわかりだと思うが、そういう超メジャーなお茶屋さんのお茶がある。
「上質な台湾烏龍茶に、みずみずしい白桃の香りをつけた、不動の人気アイテム」なんだそうだ。飲んだことないけど。

それを香料じゃなくほんとの白桃でやったらどうなるかなと興味がわいた。黒い興味である。
たぶんスパイスとかハーブとか入れたらもっと美味くなると思うがここは白桃の香りだけすくいとりたい。フレッシュなピューレにした。ベースのお茶はいろいろ試してその時々で違った。青々しく花のような香りの台湾梨山高山烏龍茶だとほんとに清らかだったし、阿里山金萱だと南国フルーツのような甘さが響きあってグラマラスだった。
結果、美味かった。けっこう人気だった。

お茶に香りつけるなんて邪道だと思っていた。まあ今も思ってる。
中国のジャスミン茶なんかあれはまた別の文化であって、花を摘み茶とあわせ葉っぱに香りを吸わせそれを繰り返す「イン」という工程の繊細さ大変さに頭がさがるのであれは素晴らしいと思ってる。
紅茶にベルガモットや矢車菊やいろいろ美しいものを加えていくのもそういう文化をよく知らないのでそういうものかなと思う。
だが
なんでお茶からキャラメルとか桜とか苺とかメロンとかメイプルとかの香りがぷんぷんせねばならんのだと思う。
大昔、かつてアイドルだった方が書いた台湾本に「ミルクの味がするお茶!阿里山金萱茶♡」という紹介があり、「ミルクの香りのお茶ください!」と観光客が押し寄せたと聞く。ほんで茶葉にミルク香料かけたやつが飛ぶように売れたとも聞いた。
そういう邪道に腹が立ったことも着香茶への憎悪につながってるのかもしれない。

だって!
お茶の木から摘んだ芽を、しんなりさせていく過程で、人の技で、なんであんな香りが生まれるの!?なんでお茶から花のような香りがするの!?なんでこれは甘い香りなの!?これは蜜、これはクチナシ、これは桃、これはマスカット・・・なんで着香してないのにこんなに香りが花開くの!?
という永遠の謎によってお茶の沼に沈められたんじゃないか。
それをよくもインスタントに香りつけやがってと思う。

今回白桃ウーロンを作ってみてよくわかった。
なんでみんなそういうのが好きなのか。
白桃ウーロンはアニメだったよ。
キラキラで、目がぱっちりお星様いっぱい、髪はピンクでふわふわなびかせて、足がすらーっと長くって、眩しくて、みんなから愛されてるんだ。

以下CV(キャラクターボイス)はぜひ村瀬歩さんでお願いしたい。

「わたし、白桃ウーロン!
 キラキラ〜っで、ふわふわ〜っで、い〜い香りっ!
 みんな大好き!愛され白桃ウーロン!
 そう
 みんなこういうのが好きなんでしょ。
 写真撮ってインスタにアップするんでしょ。
 ほんとのわたしなんて、どうだっていいんでしょ・・・
 台湾烏龍茶本来の、あの香りなんて
 桃みたいなキラキラ足さないと振り向いてもらえないんでしょっっっ!」


「ハイキュー!!」で足を踏み入れてしまったアニメ沼だったが、ここのとこ時間もたっぷりありAmazonプライムのせいで新たなアニメを見漁っている。
中でも「東京卍リベンジャーズ」と「かげきしょうじょ!!」は今までの全話追いかけて見てしまった。
「東京卍リベンジャーズ」は特攻服着たヤンキーが殴り合うタイムリープもの。「かげきしょうじょ!!」は宝塚歌劇団をモチーフに未来のスターを目指す少女たちの物語。いいかげん世界観違いすぎる。

しかしこれらの作品には共通するものがある。
それは
「みな若く、未熟で、まだ何者にもなれていないものが、トップを目指し血とか汗とか流す物語」
なんですよ。
うん、みんながんばれ
だけどさ、キラキラしすぎて眩しいんすよ。

なんかさー、こう、中年が主人公で、人生経験もひとまわりしてあちこちガタがきてるような人がさー、それでもこう、なんとかやっていくような物語のアニメとか漫画ってさー、ないのかなー
ねー、なんか知ってる?そんなの。ないよね? たいがいキラキラだよね

とオットに言うと
「あるよ、『孤独のグルメ』」
と即答された。
ほんとだ。あったな。
松重豊さん主演のドラマが有名ですけど、キラキラはしてないよね。
特に高級なレストランとかじゃなく、ふつうの町中華とかで心湧き立たせて「これこれ。いいじゃないかこの組み合わせ。俺のカラダが海になりたんぼになる・・・」などと言いながら黙食するのだ。

ああこれ、お茶の楽しみ方も、こうなんだよなぁ。

キラキラ〜っで、ふわふわ〜っで、誰かに見せたり愛されたりする必要もなく、上にのぼり詰める必要もなく、自分の心が喜ぶ、それで自分が幸せ。

だからそういう喜びは内に秘めていればよいだけになっていくので、外に向かわなくなるというか、誰にもわからなくなっていくのだろう。

「白桃ウーロン」は終了しました。
次はなにかな、引き続き「抹茶トニック」と、あと「煎茶モヒート」とか。ちょっと無理してキラキラめいたのも出します。




 
 

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