見出し画像

2022.3.29 TUE 息子が圏外

きのう、息子の移住を果たしてきました。
朝、自分の部屋に残っている最後の荷物をがさがさ紙袋に詰め車へ。

朝ごはんはフレンチトーストを焼いた。3人揃う休みの日の朝はだいたいこれで、ドリアンさんのパンをじゃぶじゃぶ卵液にひたしてバターで焼いて、バナナや苺を山盛りにして、プレーンヨーグルトと蜂蜜たっぷりかけてむさぼり食う。幸せの味。だが今朝はしーんとして食べる。

いきなりの故障車渋滞につかまる。息子は後部座席で寝てしまった。
車のCDプレイヤーが壊れ、なんとなくラジオをつけているがチューニングが合っていないのか、なにをしゃべっているのかわからない。
かといってSpotifyとかでイキのいい曲を流す気にはなれない。

昼前になんとか到着。寮監さんにご挨拶。お世話になります。
先週オットだけ先に来てあらかたの荷物は運び込んでくれていた。パンフレットで見ていたよりぜんぜんきれいでぜんぜん広く、ぜんぜんいやな気配がしなかった。掃除もメンテナンスもきっちりされていた。いいじゃなーい。

さて収納家具「つっぱりワイヤーシェルフ」の組み立てだ。
組み立て目安:2人で60分 けっこうかかるな。
オットと息子が二人で説明書を読み上げながら組み立てはじめた。
わたしはミニキッチンで荷ほどき。しかし暮らす才能のないわたしはまたつまんないミスをしていた。突っ張り棚の長さがたらないよう。仕方なく他で使おうと思ってた突っ張り棒二本で棚をこしらえ鍋を置き、キッチンツールをひっかけてぶらさげたりしてなんとかカタチになった。

えらく苦戦してるので収納家具組み立てに加わる。壊しそうな勢いでガンガン叩きながらなんとか一機完了。その勢いでもうひとつ。今度は慣れているから前より早い。いやしかしこれ一人じゃ無理だよ。こういう引越しの仕方は間違っていたのかも? 同じ日に入寮の他のご家庭では、設置すればよいだけのカラーボックスや棚などを運び込まれていた。

格闘の末組み上がる。奇跡的に壁面にシンデレラフィット。棚板を置き、時計を掛け、ハンガーに服をつるし、デスクにライトを設置し、本やパソコンを置いて配線した。完成。まるでニトリのカタログみたいだ!そのまんま真似して買い揃えたんだからそりゃそうだ。ニトリにほめて欲しい。

布団も設置して4時。疲労困憊。しかし心地よく住みやすそうな部屋になった。東向きの窓も明るく、静かで、下には桜も見えた。鳥が鳴いてた。
明日からこの景色を眺めて暮らすのか。気持ちよさそうでよかった。

ちょっと車でこれから通う大学に行ってみた。入学式には72時間以内のPCR陰性証明書の提出が必要だとかで、自宅からオンラインで見ることにしたから、ちょっと行ってみようかと。門のところで車を止めて、ささっと記念写真を撮ったりして。中には入らず戻る。

寮の近所のスーパーに行ってみる。住宅地なのでショッピングモールが充実していて100均の店もあった。店内には同じく新生活を始めたばかりなのだろうか、息子と同じくらいの子たちがうろうろしながら生活用品を選んでいた。足りないものをちょこちょこ買う。
スーパーで今夜のご飯を買う。息子は刺身とカツ丼をチョイス。
寮では平日の朝夕食事提供があるが、土日はない。ちょこちょこっと作って食べられるようにパスタとか、冷凍うどんとか、インスタントの味噌汁とか、卵とか・・・ 冷蔵庫も届いたので安心。

もう一度部屋に運び込んだら、さあ、パパちゃんとかーちゃんはもう帰るね。
「ハグしてくれ」
オットが息子とぎゅっとした。ずるいぞ、わたしもぎゅーっとした。
でっかくなって、こんなにでっかくなったのか、ぎゅーっとした。

玄関先で手を振って、もう言葉が出てこない。
「またね」
いつまでもずっと、車を見送る息子の姿が見えた。

市内は渋滞。
あいつ、どうしよるかね。シャワー浴びてみたりしてるかな。
お刺身食べよるかね。刺身のお醤油皿ないはずじゃけどどうやって食べたんじゃろ。シーツとかちゃんと洗濯するかね。
くだらないことをぽつぽつ話してると、涙がぱたぱた落ちた。
どこかSAに寄ると息子が薄まりそうで、そのまま爆速で自宅まで帰った。

帰宅して、3つ揃えてあるスリッパをみたら、もうどうしようもない気持ちになった。
「息子がいない」
息子の部屋は今朝出て行ったままで、机の上には残していったいらないものが散らかっていて、その生々しさが、なのに息子はもういないんだと思ったら、いてもたってもいられなくなって、捨てたりしまったりして片付けた。
荷物がなくなった部屋はがらんとして、音の響きがちがう。
なのに息子の匂いがする。今朝までここで寝ていたのに。
息子がいないよう
ああ、どうしたらいいんだ。涙が止まらない。

風呂に入り軽く食事をして、へとへとなので寝ようとしたけど、涙があふれてきて、一度起き上がり、暗いリビングをうろうろして、どうしようもなくてまた布団にもぐった。

えらく早く目が覚めた。隣の部屋から気配がしない。
息子の部屋のカーテンを開ける。窓から見える桜が満開だ。
台所には息子のマグカップがあって、洗面台には息子の歯ブラシがなくて、
本人いない。さみしい。

生まれて産院から帰ってきて18年、ここにいたのに。
生まれてすぐ、自分が産んだのにどうしたらいいのかさっぱり分からなくて、ちゃんと育てられるか超不安だった。さっきまで自分の中にいたのに出てきたらまるでわからない。どうして泣くのか、なんで寝ないのか、ずっとチューニングを合わせるように一緒にいた。
産後仕事に復帰したとき、精神的にやられて弱り切っていたら、息子が病気になった。いつのまにか体調や感情がリンクするようになっていたのか。
ああ、わたしが元気で幸せじゃないと、息子にしわ寄せがいくのか。
だからなるべく、能天気に、笑って一緒にいられるようにしてきた。
中学生高校生ともなればそんなに話もしない。なんなら必要なプリントだって出さない。だけど、たまにくだらない話を聞いて笑うのがよかった。
話さないけど、しんどそうだなとか、上機嫌だななんてことはなぜかわかった。風邪ひく前兆は本人より早くキャッチできた。
なのに、息子がいない
息子から受信できない
息子が圏外になっちゃった

昼前に、「おはよ〜」というふざけたLINEスタンプをいっこ送ってみた。
「おはよ〜」
「二度寝してたあ」
       布団どうだった?よく寝られた?
「一度寝たらぐっすり」
       さすがです!!なんかたべたら
「パスタつくるわー」
       美味しく作ってーかーちゃんも昼ごはんにするわ
「おっけー了解まかしとけ」
のあとに
ふざけたパンダが
「だっこしてくれーっ」っていうスタンプがきた。
100年後にぜひ、っていうスタンプ返した。既読になっておわった。

かーちゃんが、泣いて暮らしてると思ったら心配だろう。
親は元気で勝手に幸せそうにしてると思っていてくれ。
だから、気にせず、新しい生活に飛び込んで慣れてくれ。
はやく友達ができたらいいね。

べそべそ泣いてたらオットが自分に言い聞かせるように言った。
「息子は勉強しに行ったんだから、頑張るんだから」
だよね、悲しむ要素はないんだよね。
きっとお互いに慣れる。親もがんばらないとね。

でも今日は泣きはらして目が開かないので店は休みます。



この記事が参加している募集

新生活をたのしく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?