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#よく見ると星のかたちをしてる砂の粒

漫画と小説。先日の谷口菜津子さんの新刊と、2008年の柴崎友香さんです。


📗教室の片隅で青春がはじまる / 谷口菜津子

自分の人生を最高だと思いたい女子高生たちのお話。登場人物みんな健気で頑張り屋さんでちょっと懐かしくて、みんなえらくってギューとしたい子たちばっかり出てくる。わたしがいちばん大好きなのはオタクを隠してスクールカースト上位にいるニカちゃん。作品を褒めるのに泣けるかどうかは関係ないのだけども、胸がいっぱいになるかっこよさを見せつけてくれるので好き。その頑張りが頼もしくてかわいくて、すぐ泣いてしまう。どんなことをどんな場面で言うのかいつもわたしは感想を書くときに明かしまくるけどぜひページをめくって感動してほしいので内緒にする。

表紙にもいる宇宙人の女の子も出てくるのがまたかわいくて魅力あって好き。しかもかっこいいお兄さんの男の子も出てくる。どんな姿でもみんな悩んでがんばってる。

いろんな子がそれぞれの願望とか大事にしたいことの間で頑張りながら悩んだり決断したり応援したり、よく思い返したら学生時代に自分もみんなも持ってたかもしれない、思い出とも呼べないような曖昧なキラキラが、ちゃんとなりたい自分のかたちをして詰まってる、大事に本棚に並べておきたいお話たちだよ。


📗星のしるし / 柴崎友香

柴崎友香さんのお話に出てくる登場人物たちは、いつも誰かのおうちや馴染みのごはんやさんに集まって、おしゃべりしながら鍋パしたりお酒を飲んだりエスニック料理を食べてみたり、入れ代わり立ち代わりしてる様子がいつもいつも憧れの象徴みたいな感じなんだが、この本もそうであった。

主人公は特別大きい主張をすることのない性格の果絵さん。祖父が亡くなって家族や彼氏や会社のひととわちゃわちゃ(柴崎さんのお話はわちゃわちゃって表現が合ってると思っている)するんだけど、占いやセラピーみたいのに行ってみたり、楽器を借りに知り合いたちが入れ代わり立ち代わり訪れる彼氏の朝陽の部屋の動きと、自分の気持ちの抑揚のなさを並行して眺めてる感じかなと思った。柴崎さんのお話は景色とそれに伴って動く人間たちの動向を、どこか俯瞰してみてる主人公の様子がよく出てくると思うけど、その切り取り方が短編映画や写真のようで好き。

それによって主人公の気持ちに劇的な変化が起きて人生が一変するようなストーリーはなくとも、友人たちと食べるすきやきやそのときの会話が目には見えないダイヤルになってて、いつの間にか主人公の人生に蓄積されてるような、先を想像させる終わりなのも、自分の生きてる世界のどこかにこの登場人物たちがいるような身近さを感じられていいんだと思う。


2021/7/4 9冊

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