084 この人の考えを聞きたい‐-そんな人がまた一人逝ってしまった

氷の種類って、20くらいあるって知ってました?

イチゴミルクにメロンソーダ、宇治金時、、、って、それは違う氷の話です。
でも、透明な蜜をかけたかき氷のことを、どうして「せんじ」って言うのでしょう?
ええー、あれは東海地方だけで、一般には「みぞれ」とか、東京では「すい」だってー? んなぁ。。。

我々が知っている、いわゆる「氷」は通常の気圧状態では摂氏0度で溶けてしまいます。
しかし気圧を高くすると、氷はほかにも19種類も存在しているそうです。
しかも、そのうちの5つは2000年代に入ってから発見されたものだそうです。
科学技術の進化の賜物ですね。

こおりゃあスゴイ、って駄洒落を言いたくて、この話を始めたのではありません。
最近やってきたお客さんが、氷の研究をしている専門家だったのです。

当然、投げ銭サイエンスcafeの講師に誘いました。
ボクが感動したのは、氷を研究している若者がいるってこともですが、即okしてくれたことです。

「その20種類の氷、かき氷にして食べ比べた~い」と言ったら、即、否定されました。

「とんでもない気圧の下でしか存在していませんから、食べたいと言っても、人間のほうが耐えられません」

そうか、そうだよね。人間って、とてもはかないものだもの。コロナ一つでこんなにおびえて、、、

「氷」をテーマにした投げ銭サイエンスcafeは、9月5日(日)15時からです。お楽しみに。かき氷は、出ないかなぁ。。。でも、「るみ子の酒珈琲リキュールがけアイス」はご用意しましょう。

話変わって、別の日のこと。
今度は若者3人がランチにやってきました。

3人の話の内容を聞くともなく聞いていると、どうも実験が大変だと言っています。
夏季休暇に入ったこともあり、人の手配がままならず、この後もずっと研究室に戻って番をしないといけないそうです。

「なんの研究をしているの?」

「マウスの研究をしています」

???

マウスを使って実験するってことはよく聞きますが、マウスそのものの研究ってこと?

「マウスの何を研究してるの?」

「マウスは最先端医療などの研究に使われていますが、マウス自体について、まだまだわかっていないことが多いんです」

「ふーん」
ボクは、最近あまり開催されていないけど、ボクの大好きな【歴史トーク】というイベントで、線虫の研究について発表してくれた田村君のことを思いました。

線虫を使った研究でノーベル賞が3回も授与されています。いわば、裏で研究を支えた大功労者(虫)ですね。ボクの大嫌いな虫ですが、畑の作物を食い散らかすボクの天敵ではないので許しますが。

それと同じことかぁ。。。

3人ともサイエンス系の研究者で、もう一人は食べたものがどう身体を作ったり、病気にならないかを研究しているそうです。両親から受け継ぐ遺伝と食事、どちらが大きな影響を与えるのか、その相関関係は、など。

「そうだ、本を紹介しあって、誰の紹介した本が一番読みたくなったかを競うビブリオバトルってあるよね。君たち3人がそれぞれの研究テーマを紹介し合って、誰の研究に一番興味を持ったかを競うビブリオ・サイエンス・バトルをやらない?」

「おっもしろそう」
「でも、少し時間をください。こいつには負けたくない」

勘違いしないでください。ボクは競うことに意味があると思っているわけではありません。
それに、その研究がなんの役に立つかにも、あまり興味はありません。

研究の内容そのものと、それに惹かれる志というか、心の向かい方に興味があるのです。

先日、立花隆さんが亡くなりました。

『サル学の現在』面白かったなぁ。
あまりに分厚くて重いので、3分冊に千切って読んでいたら、大笑いされたことがあります。
ある人には、作者に失礼だろうって怒られました。

かつて仕事で本の企画・編集もしていましたから、本を破るというのには、ボクにも抵抗があったんですよ。でも、あの分厚くて難解な内容を家で読むだけではいつまでかかるのか。
ボクは一日も早く読み終わりたくて、毎日肌身離さず持っていたいと泣く泣く千切って三分冊にしたのです。。。

『宇宙からの帰還』も面白かったですよねぇ。
『ライトスタッフ』と並んで、宇宙好きのボクにとっては、忘れられない一冊です。

彼の関心の広さと深さは誰にも遠く及ばないものでしたが、埴谷雄高が亡くなった時、これで何か解決のつかない疑問を持った時、訊く相手がいなくなってしまったと立花隆が書いていたのを思い出しました。

ボクにとって、大岡昇平、埴谷雄高、司馬遼太郎、井上ひさし、永六輔、そして立花隆と、世界の行く末を考える時、指針となる言葉を残してくれる人がまた一人いなくなってしまいました。

九条Tokyoで毎月開催している【誤配だらけの読書会】メンバーで運営管理しているミニ図書館の、ボクの棚にはこう書いてあります。

埴谷雄高は「いつか人類が進化して、みんなが石になりたいと願ったら石になれる時代が来る」」と言ったけど、この不寛容の時代を見て、どう言っただろう。この難問に答えてくれそうな埴谷雄高も大岡昇平も井上ひさしも、もういない。大江健三郎も立花隆も答えてくれない時代に、我々は黙って読書を続け、答を探すしかない。

しばらく沈黙を続けていたとはいえ、その立花隆さんが逝ってしまった。。。

世界はいつか終わりがきます。ホモサピエンスがこの星の、宇宙の支配者でもありません。
でも、前の世代から受け継いだ世界を、少しでもよくして次代に繋げないと。でないと、ホモサピエンスは生きていく価値がないのではないか。

そう考えた時、天啓のようなキラメキを与えてくれる言葉を、彼らはもう発してはくれません。自分たちで考え、つくっていくしかないんですね。

さあ、この不寛容で、一方向に傾いでしまいそうな脆弱な時代に、立花隆さんのどの本を読み返すことにしようか。
だって、彼が書いた本は百冊以上もあるって言われていますから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?