095 ちょっと古くて新しい漫画の話を

従兄がフェイジョアを育てていて、毎秋、持ってきてくれることは以前書きました。

これは去年の晩秋の話です。
(1月に11月の話を去年のことって書くのに、ちょっと抵抗ありますよね)

ちょうど従兄がフェイジョアを持って来てくれた数日後、飲みに来てくれた母娘がいました。

娘さんのほうは前に一人で来てくれたような。。。
「確か、近所に住んでいるって言ってなかったっけ?」

「はい。夕食後に、二人でちょっと飲みに行こうかと。うちでは母と私しか飲まないものですから」

仲のいい親子っていいですね。家で夕飯を食べたあと飲みに出かける、これって理想的な生活スタイルじゃありませんか。

昔、NHKのテレビドラマで見ていた「あした天気になあれ」(1972年)。

ちばてつやの漫画ではなく、ハッピーエンドのフォークソングでもなく、日テレのドラマでもなーい。荻島慎一が主役で、相手役は誰だっけなぁ。。。
十朱幸代?

?の多い稿だこと。日々、ボクの記憶は砂上の楼閣状態ですのでお許しを。

あのドラマでは、いつも夕飯後、歩いていける近くのカフェ(バー)に行って、コミュニティ内での何気ない会話や恋が進んだり戻ったり。。。

よかったなぁ。ボクの憧れでした、ああいう世界。大人になったらああいう生活を送ろうと東京に出てきたのかも。
そうか、そうだったんだ〜。

それにシモンズの歌った主題歌「あした天気になあれ」サイコー!

九条Tokyoでも時々かかっています。

なんの話でしたっけ?
(またまたクエスチョンマークが、、、)

そうそう、母娘の話に戻ります。
少し飲んだ後、食事は家で家族で済ませてきたというので、最後にフェイジョアをご馳走しました。

今回からは、フェイジョアをただ食べておしまいではなく、食べ終わった皮を湯呑みに入れて、熱湯を注ぎます。
すると、あーら不思議。

その香りの爽やかさ。柑橘系の高貴な香りに混じって、少しすると熱帯のフルーツならではの濃密な匂いが混じって。混沌とまではいかないのですが、なんなんだ、これは〜!って感じ。

一瞬、人類になろうとした類人猿の覚醒を思い出したような錯覚にとらわれます。
ちょっとオーバーかしらん。でも、偉いですよね。樹上のフルーツだけ食べていれば安全だったのに、何匹かは木から降りて、草原の輝きの向こうを目指した。。。

その香りはお湯の温度の変遷とともに移り変わっていきますから、さらに不思議。
格式を要する一服のお茶の時間より味わい深い、濃密な体験と言っても言い過ぎではないかも。カモ。カモーン。

カモーンといっても、フェイジョアは今年の晩秋まで待たないと店にはないのですが。。。

このフェイジョア、収穫時になると自然落下するそうです。
従兄は果実一つ一つをネットで吊っているとか。そんな貴重なものを、毎回どっさりと。ありがたやありがたや。

「これが、あのフェイジョアですか?」
彼女は確かにそう言いました。

「ええ〜、あのって。。。フェイジョアを知っている人を初めて見たよ」
ちょっとした感動ですね。これは奇跡カモーン。

「昔読んだ漫画に出てきました」
「ええ〜、、、」

そんな昔からフェイジョアってあるんだ。ビックリです。
それも漫画に載ってるって、、、

ここまでが去年の晩秋の話です。
そして、ここからがようやく今年のお話になりまーす。

新年早々、彼女が一人で飲みに来てくれました。
このシリーズでは常連客については書かないと決めているのですが、今日は漫画が主役ですから、ってことで。

「これが、フェイジョアが載っていた漫画です」

一瞬、キョトンとなったボクは、そうだ、去年、フェイジョアの出てくる漫画の話を聞いたんだったと思い出しました。
2ヶ月も経っていないけど、もう去年の話ですよー。

手にとってパラパラとめくると、ありました。従兄の庭で見たのと似た木が描かれていて、食べ頃になると自然落下する賢いフルーツだと描いてあります。

おー。。。
この感動音声は、27年も前に発行された漫画にフェイジョアが載っていることではなく、その漫画を探して買って持ってきてくれたことに対するものです。

ボクはなんてステキなお客さんを持っているんだろう。。。しみじみシジミ(もう、いいってばぁ。。。)

彼女がこの漫画を読んだのは「花とゆめ」に連載されていた時で、ボクにプレゼントするために、古書を探して買ってきてくれたものです。
うれしー。。。
泣いちゃうかも。

ボクが独身なら結婚したいかって?
そういう話じゃなーい。

フェイジョアが出てくる話は「愚者の楽園」という短編で、この作品は『美貌の果実』(川原泉、白泉社、1995年)に収められています。

タイトル名にもなっている「美貌の果実」は行基上人まで出てくるワイナリーの話で、ちょっと泣けます。
もち、「愚者の楽園」もいい話ですよ。
この漫画、いい話ばかりだわ〜。

さすが「花とゆめ」。その雑誌名からして、甘ちゃんのボクに合ってるのかも。。。

でも、この漫画に収められている作品は、どれもまるで短編小説のよう。それも極上の。

短編小説といったら村上春樹の短編小説を原作にした映画「ドライブ・マイ・カー」、観ました?

妻以外の主要三人が、いきなりあの村上ワールドのモノローグを始めるんです。映画ではそれをどう映像にしているのかと期待していたのですが。
見終わったあと、確かにこれは「村上春樹」の映画だわ〜と思いました。

ボクは村上春樹がデビューした時からの読者で、『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』の後の世界をいつ書いてくれるのかと待っているのですが。。。

あれ?
なんの話をしていたんだっけ、、、

そうそう『美貌の果実』、川原泉サイコー。

連載自体は1986年ですから、今から38年も前にフェイジョアを知っていた人がいたなんて、、、
それだけでもビックリだわ〜。
インタビューに行きたーい。。。

『美貌の果実』は九条Tokyo店内に附設されているミニ図書館にありますから、気になった方は、ぜひ読みに来てください。

負うた子に教えられるって、まさにこのことですね。
「投げ銭サイエンスカフェ」や「誤配だらけの読書会」といい、若い人に教えられることの多い日々でした。このコロナ渦中も。

政治家や聖職者、教職者って、1年くらい飲食店のマスターを一人でこなしてみるって、案外いいかも。勉強になりますよー。

おそらく、コロナ渦もいよいよ最終盤でしょうか。
今回のマンボウは緊急事態宣言には移行せず、このまま呆気なく終息して、5番目の風邪ウイルスになることを願いつつ、九条Tokyoは極力年中無休で開けてお待ちしています。

zoomも使いつつ
1/29 15時からは「歴史トーク」
2/11 15時からは「マイ・フェチTop3」
2/13 15時からは「詩の朗読会」
2/19 15時からは「誤配だらけの読書会」
2/20 17時半からは「話食マルシェ」
   埼玉の有機農家・井伊さんが作る在来大豆5種を食べ比べ
と続きます。

大小田直貴監督のドキュメンタリー映画「まちの本屋」は
シネマ・チュプキ・タバタにて、1月末まで上映中ですよ。

カモーン、エブリ・ソウル。


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