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創作童話「ふしぎなくつ」 作:鵠更紗

「ふしぎなくつ」
マリッサは、ちいさなおんなのこです。
あるひ、もりをおさんぽしていると、くつのかたちをしたふしぎないえをみつけました。
 コンコンコン
マリッサが、ドアをノックすると、なかからおじいさんがでてきていいました。
 「いらっしゃい。おきゃくさんはどうぞこちらへ」
 マリッサは、おそるおそるなかへとはいりました。
 なかには、ちいさなくつ、おおきなくつ、ながほそいくつ、よこながのくつ、たくさんのくつがありました。
 「うわぁ、こんなにたくさんのくつ、はじめてみたわ」
 マリッサはめをまるくしていいました。
「わっはっは。ここは、くつやだからね。どれ、おじょうさんにぴったりのくつをさがしてあげよう」
 おじいさんはそういうと、くつをさがしだしました。
 「わたし、くつをかうおかねがないわ」
 「おかねなどいらないよ。わたしは、くつをつくるのがすきなのだから、いっそくプレゼントするとしよう」
 マリッサはいいました。
 「ありがとう。それならうんとかわいいくつがいいわ。ピンクいろをしていて、ふんわりしたリボンがついているくつ」
 「そうかそうか、それならこれはどうだろう?」
 おじいさんがてにとって、マリッサのまえにさしだしたくつは、ピンクいろをしていて、ふんわりとしたリボンがついていました。
 「わぁ、すてき」
 「さあ、はいてごらん」
 おじいさんにそういわれて、マリッサはゆっくりとそのくつをはいてみました。
キラキラキラ
くつがひかったようにみえました。
 「すごいわ。わたしのあしにぴったりよ」
「そうかそうか、それはよかった。そのくつは、ふしぎなくつといってな、どこへでもつれていってくれるのだ」
 「ふしぎなくつ?」
 「そうだよ」
 「どうすればよいの?」
 「くつにむかって、じゅもんをとなえるのだ」
「じゅもん?」
 「そう。くつくつ、くつくつ、クックックー、といってごらん。そうすると、いまじぶんがいちばんいきたいばしょまでつれていってくれるから」
 「おじいさん、ありがとう」
 マリッサは、おじいさんにおれいをいうと、くつのかたちのいえをあとにしました。
 しばらくあるいていくと、かえりみちがわからなくなっていることにきづきました。
 「どうしましょう。おかあさんがしんぱいするわ」
 そうおもって、ちかくのきりかぶにすわり、マリッサはうつむいてしまいました。
 「そうだわ、このくつにいえまでつれてかえってもらえばよいのね」 
 マリッサは、げんきをだしてそのばにたちあがっていいました。
 「くつくつ、くつくつ、クックックー」
 すると、くつがかってにあるきだしたのです。
 「くつさーん、そんなにはやくあるかないで。わたしのあしがとれてしまいそうよ」
 マリッサがそういっても、くつはとまりません。
 あっというまに、マリッサのいえのまえにつきました。
 「はぁ、びっくりした。あんなにはやくあるいたのははじめてよ。でも、くつさん、どうもありがとう」
 マリッサは、くつをぬいで、たいせつにしまいました。

 つぎのあさ、マリッサはまどのそとでピイピイとなくとりのこえでめざめました。
 「おはよう、ことりさん」
 「ピイピイ」
 ことりは、まだ小さく、1ぴきではとべないようです。
 「おかあさんどりとはぐれてしまったの?それならわたしがつれていってあげる」
 マリッサは、ふしぎなくつをはいて、やさしくことりをだきかかえました。
 「くつくつ、くつくつ、クックックー」
そう、じゅもんをとなえると、くつはいきおいよくあるきだしました。
 「くつさん、もっとゆっくりあるいてよ」
マリッサがそういっても、くつはスピードをゆるめません。
 しばらくいくとおおきなきのまえでとまりました。
 「ピイピイ」
マリッサにだきかかえられたことりがなくと、きのうえからおかあさんどりがおりてきました。
 そうして、ことりをせなかにのせると、ふたたびきのうえへもどっていきました。
 「ことりさん、よかったわね」
マリッサが、そういってかえろうとすると、おかあさんどりが、きのみをひとつくわえてもどってきました。
 「あら、ありがとう。すてきなプレゼントのおれいね」
 マリッサは、ゆっくりとかえろうとしていました。
 「ふしぎなくつね。
 くつくつ、くつくつ、クックックーっていえば、そのときいきたいところへはこんでくれるんだもの」
 マリッサがいいおわらないうちに、またくつがかってにあるきだしました。
 「こんどはなぁに?」
 マリッサにはひとりごとのつもりでも、ふしぎなくつのじゅもんをとなえてしまっていたのです。
 もりのおくへとくつにつれていかれました。
 「なんだかくらくてこわいわ」
 マリッサがふあんなきもちでいると、きのふもとに、しっぽがくるりんとカーブした1ぴきのリスがやすんでいました。
 マリッサをみつめて、
「キュウンキュウン」となきました。
 「あなた、おなかがすいているのね。このきのみをどうぞ」
といって、さっきおかあさんどりにもらったきのみをリスにさしだしました。
 するとリスは、そのきのみをカリカリといきおいよくたべました。
 「やっぱりおなかがすていたのね。よかったわ」
 マリッサはそういいました。
 すると、リスはもりのなかへとはしっていきました。
とちゅうで、なんどかふりかえり、マリッサをよんでいるようでした。
 「あら、わたしをどこかへつれていってくれるの?そんなにはやくてはおいつけないわ。そうだ、こんなときは。くつくつ、くつくつ、クックックー」
 すると、くつがリスのあとをおってあるきだしました。
 「ちょっとくつさん、はやいわよ」
マリッサのいうことなどきいてくれません。
 とつぜん、マリッサのまえにおおきないけがあらわれました。
 いけのなかには、ピンクいろのはすのはながたくさんさいていました。
はすのはなには、たくさんのみずたまがのっており、ピカピカとかがやいています。
 「なんてすてきなばしょなの。リスさん、おれいにこのけしきをみせてくれたのね。どうもありがとう」
 りすは、そのばからいなくなっていました。
マリッサは、しばらくそのけしきをたのしんでいました。
 そのとき、グウとマリッサのおなかがなりました。
 「あら、わたしったら、きょうはあさからなにもたべていなかったから、おなかがすいてしまったわ。そうだ、こんなときは、くつくつ、くつくつ、クックックー」
 すると、またくつがかってにあるきだしました。
 「ちょっと、くつさん、はやいわよ」
 そうして、マリッサがたどりついたばしょには、たくさんのリンゴがなっているおおきなきがありました。ころんとまるいりんごは、たいようのようにまっかないろをしていました。
 マリッサは、むしゃむしゃとおなかいっぱいリンゴをたべました。
 そうして、きのツルでかごをあんで、リンゴをもっていえにかえりました。
 もちろん、じゅもんをつかってね。
「くつくつ、くつくつ、クックックー」
  
              おしまい

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