「音楽は鳴りやまへんねやで」

この言葉は、駒沢のガネーシャ様と呼んでいるバイト時代の先輩が
たばこの煙とともに246の夜空に放ったひとこと。

当時は音楽活動をしていたが、それでも「していた」と言えるほどの実績はなく、ライブでの集客も2~3人。
付き合っていた彼女と結婚も考えていたころで、就職するか夢を追うか、20代フリーターにとって、いつの時代も共通の悩みを抱えていた。
駒沢のガネーシャ様とはいつも駒沢大学駅徒歩3分くらいにある大戸屋の2階にある焼き鳥屋で飲む。
そこで、バイトや音楽の話題をサカナに酒を飲み、3時間ほどしゃべったら向かいのマルエツで明日の朝のパンを買う。ガネーシャ様は原作通りの関西弁で「食べたいもんなんでも入れや」と言ってくれる。ガネーシャ様より少し安い菓子パンをかごに入れさせてもらい、会計後、あたかも当たり前のように「はいよ」と手渡してくれるのだ。
その後246の交差点、もうつぶれた洋服の青山の入口を陣取って、あることないこと話すのが定番の流れだった。

この日も同じ流れで行きついた246。
音楽やめますとははっきりと自分の口から言いたくなくて「就職しようと思います」と別の言葉を選んだ。
駒沢のガネーシャ様はたばこをふかし、「音楽は鳴り止まへんねやで」とポツリとつぶやいた。
それはきっと、就職を選んでも音楽は辞めなくていいんだし、自分が手放したとしても、この先もずっとずっと音楽は寄り添ってくれるよと言ってくれたように聞こえた。

0か100じゃなくていいし、何を選んでも環境が変わっても自分は自分であり続けるということだと思うので、明日以降にぼんやりとした不安を抱えている人に響くといいなと思います。

それでは。



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