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息子が教えてくれたこと~本当に大切なことは、自分の心が知っている

今から6年ほど前。 
おそらく息子が
小学2年生の時のこと
だったと思います。

区内の幼稚園から
仕事の依頼がきました。

仕事内容は
多動傾向にある
R君という男の子への
支援でした。 

私は結婚するまで、
幼稚園で働いていましたが、
その後は
ずっと専業主婦でした。

息子が小学校に入学してから
幼稚園や
放課後教室などで
月に数回、
働くようになりましたが、
今回のように
毎日というのは
初めてのことでした。

正直不安はありましたが、
息子の帰宅時間までには
帰って来れること、
半年間という
期限付きであることなどから
思い切って
引き受けることにしました。

もちろん家族にも
相談しました。
息子も
自分の生活に
差し支えないと分かると
9月までならいいよと
賛成してくれました。


久しぶりの現場。
支援員という
初めての経験に
戸惑うことばかりでした。

悪戦苦闘の日々。

でも、そこには、
たくさんの喜び、感動、
学びがあって…

いつしか
R君は
私にとって
かけがえのない
大切な存在に
なっていました。

契約期間終了まで
あと2ヶ月を切った
8月のある日のこと。 

園の方から
R君の支援を
12月まで延長したい
との相談を受けました。

途中で先生が変わるより
私が継続して支援した方が
R君の負担も少ない。
出来ることなら
引き受けたい
そう思いました。

ただ、
この話を引き受ける
ということは
同時に
家族との約束を破る
ということでもありました。

特にも息子は
9月までならと言う理由で
賛成してくれていたのです。

果たして
息子は、許してくれるだろうか。

それまでの数か月間、
約束通り
息子が家に帰るまでには 
必ず家にいるように
していました。
家庭でも
出来るだけ仕事を
しないように
心がけてきました。

そう、
自分では何とか
うまくやってきたつもりでした。

園の方には
「家族と相談させてください」
と話し、
その日、帰ってすぐに、
息子に話しました。

「お母さんのお仕事、
9月までだったでしょ。
それがね、
12月までお願いできないかって
言われたの」

すると息子は
すぐにこう言いました。

「9月までの約束だったよね」

「そうなんだけど…
もう少し見て欲しいって。
3ヶ月だけ別の先生に変わるのも
何だか可哀想だし。
だから、お母さん
引き受けようかと思うんだけど…
どうかな?」

そしたら
息子は怒ったように 
こう言いました。

「お母さん、
幼稚園のお友達と
○○、どっちが大事なの!」


はっとしました。


息子が生まれた時から
私はずっと家にいて、
息子にとって
母親が家にいるのは
当たり前のことでした。

息子が1年生になって
働くようになったとは言え
月に数回程度。
それも息子が学校に
行っている間のこと。

今回のように
毎日、
私が働くというのは
初めてのことでした。

私はとても不器用で
一度に多くのことが
出来ません。

気持ちの切り換えも出来ず
家に帰ってからも
R君のことを考えていることが
しょっちゅうありました。

R君の話題は
時々、食卓にものぼりました。

そんな時
息子は、いつも
ふうーんと
素っ気ない返事を
返してきました。

これまで、
息子中心だった生活の中に
突然侵入してきたR君。


お母さんの心の中に
自分以外に大切な子がいる。

一人っ子の息子にとって
それは初めて感じる危機感。
そう、
R君への嫉妬だったのだと
思います。

私なりに
上手くやってきたつもり
だったとは言え、
私の心が
仕事やR君に
大きく傾いていたことも
事実でした。

上辺は上手く
取り繕ったように見えても
息子は
私の心が
自分から離れていっていることを
ちゃんと感じ取っていたのでしょう。

私が何より大切なもの。
それは家族。
私は、
子どもと向き合う時間を
大切にしたくて
今の生活を選んだのです。

それは、 
小さな頃から
ずっと憧れていた生活でも
ありました。

私は
息子にはっきり言いました。

「もちろん○○が大事。
そうだね。約束だったものね。
お母さん、明日、断ってくるね」


翌日、すぐに
期間延長の話は断りました。

「先生の代わりは
いくらでもいるけれど、
お母さんの変わりはいないからね。
こちらこそ、
無理を言ってごめんなさいね」

そんな温かい言葉に
心からほっとしました。

とは言え、
R君には
申し訳ない気持ちで
いっぱいでした。

でも…

私の変わりはたくさんいる。

新しい先生とのこれからを
応援していこう。


最後の日。
R君に言いました。

「あのね、
今日でお別れなの…」

そしたら
R君は悲しそうな顔をして
目をパチパチさせて
こう言いました


「さみしいな…」


R君、ごめんね。
先生ね、
大切な息子を選んだの。



それからも
度々仕事の依頼を
受けました。

その度に
家族と、
とりわけ息子と
相談してきました。

そんな息子も今では

「仕事?
良かったじゃん!
なんか買ってくれる?」

とすっかり、
お金の亡者になり
母の仕事に対して
ウエルカムになりました。

今の息子を見る度に
こんな風に
いつか必ず
離れていくのだから
あの時
息子の思いを突っぱねてまで
無理をして続けなくて
良かったと思います。



仕事の関係で
度々小学校に行く私は
その後、
小学校で
R君に再会しました。

久しぶりに見たR君は
心も体もぐんと
成長していました。

そんなR君の姿を見て

あぁ
こんなに大きくなったんだ…

嬉しくて嬉しくて
胸がいっぱいになりました。


あの時、私は
息子とR君を
天秤にかけ
息子を選びました。

学校や幼稚園の先生が
我が子を優先することについて
皆さんはどのように
お考えでしょうか。

大切な行事の時などに
担任の先生が
家庭の都合で
欠席することに対して
色んな声を耳にします。

「こんな日に、
普通、担任が休む?」

私も実際
入学式などが、
我が子のそれと重なり
我が子を優先する先生
を見てきました。

でも、
普通って何?
正解って何?

そんなこと
本当は
誰にも分からないのだと
思います。

ただ、
大切なことがあるとしたら、
その答えが
自分が心から
納得したものかどうか
ということではないでしょうか。

いつだって
大切なことは
自分の心が知っている
そう思います。


だから私は
これから先
選択に迷った時
自分の心に問いかけたい。

あなたはどうしたいの?
と。




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