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マッスルゴースト


#創作大賞2024
#ホラー小説部門

あらすじ

自殺した高校三年生の篤(あつし)の前に現れた謎の少年史郎(しろう)
淳の自殺の原因を何故か
知っており篤の復讐に協力してくれるという
しかしそれは篤の筋トレに付き合うというものだった
幽霊にも筋肉は必要
小石を持ち上げるにも莫大な筋力がいるという
復讐相手は自分を自殺に追い込んだ犯人である7人の人物
復讐成功までの期限は四十九日
史郎の肉体の限界を越えるハードな筋肉トレーニングが始まった

その日、とある高校で1人の生徒が学校の屋上から飛び降りた
丁度下にいた生徒に衝突しその生徒諸共即死
屋上には遺書が残されていた
遺書の内容は大学受験のプレッシャーによる挫折が書かれており、警察はもちろん、学校側も両親も受験ノイローゼによるものと結論をつけた
被害者は自殺した生徒の親しい同級生で、不幸な事故として処理された

それで現世ではこの生徒の自殺と自殺に巻き込まれた不幸な被害者としてこの話は終わった

現世では

「結局受験ノイローゼかよ」
深夜の校舎に佇む少年篤は泣いていた
「あの遺書はあいつらに書かされたものなのに」
無駄にエリート意識の高い両親に自分の能力を上回る難関の国立大学の進学を強要され、勉強に勤しんでいた
身の程知らずの進路に担任はよりによって同級生の前で口を滑らせ
「篤クンははこれからレベルのたっかい大学をご受験なさるぞ。皆、応援してやれよ」
笑いながら語る担任に
「じゃあ、俺たちは篤クンの勉強の邪魔をしちゃいけないな」
それからクラスメイト全員からの無視が始まった
必要な日直の仕事すら無視され、担任に叱られる
レポートを回収しようにも無視され、担任にわざわざ個人で押しかけ
「篤君が日直の仕事をしません。だから自分で提出しないといけなくて」
それを真にうけたのか担任は淳のみを責める
「いくら勉強が忙しいからって日直をサボって良い理由にはならないぞ」
篤の説明も訴えも担任は愚か、学年主任すら信じず
「ちゃんとクラスメイトとコミュニケーションをとることも必要だぞ」
と嗜められた
それでも無視はまだマシだったと篤は知る事になる
事態が悪化したのはホームルームでの担任お言葉だった
「篤から皆に無視されたと相談されたんだ。お前ら幼稚なことをするなよ。篤クン泣いちゃうぞ。お勉強が忙しくても篤クンはさびしんぼうなんだ。ちゃんと構ってやれ」
担任が笑いながら説明をし
「じゃあちゃんと構ってやらないとな」
それからは篤は教科書を隠され
出会い頭に肩をぶつけられ
服に隠された部分にを蹴られ、殴られた
「おいおい何やってんだよ。いじめか?」
担任が暴行の現場を見てもわらっていて
「違いまーす。篤クンの運動不足解消に戯れているだけです」
「程々にしろよ。クラスでいじめが見つかったら俺は研修に行かされて面倒くさいことになるんだから」
学年主任に相談しようとしたが担任が睨んでいて
「お前が勉強のし過ぎでおかしくなって被害妄想が強くなっていると報告しているんだから余計なことをするなよ」
両親には相談はできなかった
ただ成績の悪さを指摘された
「予備校になんて行きたいなんて言うな。大学の費用にいくらかかると思っているんだ」
「いじめ?お前の被害妄想だろう?担任から報告は受けいている。しょっちゅう問題行動があるらしいな」
「恥ずかしいから精神科に通いたいなんて言わないで。ただでさえあんたの成績が悪いせいでお父さんの機嫌が悪いんだから」
「あんたのせいでまたお父さんに叱られたじゃない」
頭ごなしに篤を否定する父親と父親の顔色を伺う母親
篤の精神は限界で遺書も用意していた
学校のクラスメイトからのいじめと取り合わないどころかいじめのきっかけとなった担任
息子の言うことも全く聞かず逆に追い詰める両親への恨み
遺書を鍵付きの引き出しに仕舞い込む
気持ちを整理したせいか頭がスッキリはした
しかし学校でも篤は遺書を書かされる
「なんかさ、そんなに思い詰めてるんなら遺書でも書いちゃう?」
言い出したのはクラスのボス的存在である兎夢(とむ)
「良いね良いね。受験ノイローゼ気味だし。僕ちん受験に疲れちったてきな?」
兎夢の仲間である
絵留(える)、理人(まさと)、正義(まさよし)、愛(らぶ)が賛同し
白い紙を差し出した
「はい、ここに受験が辛いから死にますさようなら。って書いてみ?」
篤は拒否したが
兎夢が机を荒々しく叩く
「さっさと書けよ!殴られてーのか!」
「おいおい兎夢〜!イジメイクナイって先生が言ってたじゃん」
「篤カワイソー」
「おい、お前のせいで俺がワルモノになってんじゃないか」
「兎夢カワイソー。篤、お前のせいで
兎夢がいじめっ子にされてんぞ」
「お前のせいで俺が責められてんじゃねーか。良いからあっさと遺書を書けよ」
兎夢が紙を押し出す
「わ‥わかったよ。書く位なら」
仕方なしに遺書を書いてみせる
「あー!こいつ遺書書いちゃったー!」
兎夢が紙を皆に見せるように振り回す
「これはもう自殺するしかないよな」
「自殺一択っしょ」
「はいじーさつ!じーさつ!」
兎夢達の自殺コールにクラスメイトは眉をしかめる
「流石にそれはまずいだろ」
クラスメイトの1人が勇気を出して注意するも
「じゃあお前篤の代わりになる?」
「私たちはそれでも良いんだけど」
兎夢に睨まれたが
「本当に篤が死んだら困るじゃん。だからそう言うのはやめたほうが」
それでも勇気を出すクラスメイト
「ぷっ!何マジになってんの?こいつが自殺なんてできるわけないじゃん」
「そうそう。こう言うのってただのワルフザケだし」
「そーそー。ワルフザケワルフザケ。篤だって自殺する気しかないだろ」
兎夢の笑い声に篤は決心した
そして昼休み
篤は階段を登り、屋上に向かう扉の鍵を壊し
て屋上に上がった
後者の裏側では兎夢達が喫煙中で
「お前達のお望み通り自殺してやるよ」
あの偽の遺書でなく本物の遺書が両親以外の親戚が見つけてくれるだろう
既に親戚には相談している
自分はただここから飛び降りるだけ
痛みは強いだろうがこれからも続く兎夢達からの暴行に比べたら一瞬だ
屋上の手すりを乗り越え、下を見る
いつものようにバカ話をしながら喫煙する兎夢達
「一生後悔させてやる」
ゆっくりと地面に向かって落ちていく
景色がゆっくりと進む
最後に見えたのは兎夢の驚いた顔
その後は教室にいた
自分と兎夢が死んだことを伝える担任
「篤と兎夢の通夜と葬儀は日にちが違うから間違えんなよ」
面倒くさそうに全員参加を促す
「こいつら何普通に過ごしてんの?もっとなんか考えろよ。お前らのせいで俺は死んだのに」
クラスメイトの服を掴むもクラスメイトは何も気づかず
篤の存在は透明人間のように無視される
「お前がそもそもの原因だろうが。何平気でいるんだよ。俺に謝れよ!なあ」
担任につかみかかるも篤の手は虚しく担任の体をすり抜ける
「あのさ、お前は死んだの。住む世界が違うから触りたくても触れないの。お分かり?」
不意に声をかけられ振り向くと学ランを着た同年代の少年
「誰?うちの学校の生徒じゃによね?」
篤の高校はブレザーで学ランではない
「俺はここの学生だったものだよ昭和の時代だけど」
「それでか。で、お化けが何の用?」
「お前もお化けだよ。俺は史郎。ここで自殺してずっと住んでいるいわゆる地縛霊だ」
にこやかな笑顔に違和感を感じる
「それよりお前はこいつらに恨みがあるんだろう?」
「ああ、俺はここにいる奴らに殺されたと言っても過言じゃない。こいつらが、両親が俺を殺した。全員殺したい」
篤の言葉に頷きながら聞く史郎
「だが、今のお前は相手を呪い殺す所か声すら聞いてもらえないぞ。あちらにとっては完全に透明人間だ」
史郎はすぐ近くの机の消しゴムを手に持って見せる
消しゴムが急に消えた生徒は消しゴムを探して辺りを見渡す
「お前にこれが出来るか?」
消しゴムを机に戻した史郎はやってみろと篤に促す
「物を持つコツは意識を腕や指先に集中させるんだ。慣れたら集中しなくても普通に持てる」
史郎に促されるまま消しゴムを持とうとしたが
「お、重い!」
小さな消しゴムが岩のように重くびくともしない
「俺たちは死んだ人間だ。肉体から抜けて無防備な魂だけの存在だ。物を動かすのにも肉体があった時のように筋肉を必要とする」
見てみろと史郎が裾を捲り上げ、腕を見せる
華奢に見えた腕は筋肉がつき、力瘤が隆々と盛り上がる
「腹は安定のシックスパックだ」
「そんなに‥」
確かに史郎は先ほど岩より重い消しゴムを軽々と持ち上げた
「心霊ものでよく首を絞めたり物を動かす幽霊は皆鍛え上げた魂の力で持ち上げているんだ。このよでもあの世でも筋肉は必要なんだ。むしろ生前よりも筋肉は重要なものだ

場所は変わって篤の通夜が行われている葬儀場
制服姿の生徒が並んで座っている
無表情の両親
神妙な面持ちの生徒達
しかし
「おい、笑うなよ理人。声が聞こえんぞ」
「だってこういう真面目な場所って笑いが出てくるんだよ」
「サイテー」
「とか言いつつ愛も笑ってんじゃん」
くすくすと笑う理人達兎夢の取り巻き
「普通高校生になってTPOができてないって最悪だな」
呆れきった史郎に
「あいつらは誰が死んでも同じなんだよ。自分たちが楽しければ良いんだから兎夢が死んだのに何も思ってない」
「トム君も可哀想に。こんなんじゃ浮かばれまいて」
ナムナムと両手を合わせ拝む史郎に
「俺も肉体を鍛えたらあいつらに復讐できる?」
聞いてきた
「勿論。でも日にちが限られているから人数は絞らないとな。クラスの人間全員は厳しいぞ」
「俺が復讐したいのは8人だったけど、主犯格の兔夢は自殺に巻き込んだから後7人。最初に俺がいじめられるきっかけを作った担任、兔夢を一緒になって俺を追い詰めた絵留、理人、正義、愛。そして俺に無理な受験をさせようとした両親」
「成程、その7人ね。ラッキーセブンで縁起が良いじゃん」
愛も変わらず笑い続ける理人達を背に外に出た
「じゃあ早速始めようか。お前に残された時間は短い人間は死んでから四十九日が過ぎるとそこから筋肉はつかなくなり、物を動かせなくなる。だからこの期間でどれだけ鍛えるかにかかっている。後復讐の時間も欲しいから実際は四十二日だ」
軽く準備体操を始める史郎に倣い篤も準備を始める
「最初の1週間はひたすらランニングで足腰と肺を鍛える」
「ひたすらランニング?」
「ああ。もう死んでいるから息苦しさはあっても死ぬことは無いから1週間ひたすら走れる。そして時間が惜しい。はい、スタート!」
両手を叩いた史郎に促され走り始めた
体は最初は軽かったものの次第に息が上がり、ゼエゼエと苦しげな呼吸音がする
(何で死んでいるのにこんなに息が上がるんだ)
苦しそうに息を吐くが
「ほら、止まらない。まだ走り始めて10分も経ってませんけど?」
一緒に走っていた史郎がその場で足踏みしながら厳しい声を上げる
「てかさ、あいつらに復讐したいんでしょ?目にもの見せたいんでしょ?だったら今頑張らないでどうするの?君の決意はそんなものなの?」
史郎に言われ
「したいです復讐。このままで終わるのは嫌です」
ランニングを始めるも
「じゃあ体もあったまったしダッシュ」
「え?」
「え?じゃないダッシュ。ほら、そこの電信柱までダッシュダッシュ!」
リズミカルに拍手しながらダッシュを促す
「ダッシュ!」
「は、はい!」
言われた通りにダッシュをする
心無しか止まっているはずの心臓が早鐘を打つ
「はい、ダッシュ終了。また軽くランニング」
しばらくランニングを続けていると
「はいまたダッシュ。面白い顔をする暇があったらダッシュダッシュダッシュダッシュ」
それからずっとランニングを続け、気まぐれでダッシュを叫ぶ史郎
息苦しさに吐こうとするも何もでず、倒れたくても許されず
ひたすら足を動かされ続ける
「そういうキツいですアピールはしない!息苦しいのも生きてきた時の記憶に過ぎない。現にお前の額には汗は滲んでいない」
史郎に言われて篤は額に手を当てる
確かに汗はかいていない
しかも気がつけば息苦しさも足の重さも無かった
「本当だ。これならいつダッシュが来ても平気だ」
「じゃあリクエストにお応えしてダッシュ」
「えええ〜?」
1週間これを繰り返し基本の筋肉が付いた
「よし、基礎体力が付いたな。ではランニングは続けたまま次はダンベル上げだ」

「これはどこにでもあるペットボトルだ。これを持って軽く体操しながらジョギングを続ける
空のペットボトルを渾身の力を込めて持ち上げる
「これを持ち上げるのに本来は2週間はかかるんだ。篤は意外に才能があるな。余程恨みが強いんだな」
笑顔を見せる史郎に篤も笑い返すも
「そんなにヘラヘラしてる余裕があるならペットボトル2本追加ね」
両手首にペットボトルをくくりつけた状態で両手を振らされる
ペットボトルの重さは時間を置くごとに重みを増しランニングの足の負担も増えていく
「ほらチンタラしない。これじゃあランニングじゃなくてお散歩です。やる気あんの?」
同じくペットボトルを両腕に付けたまま一緒に走る史郎に檄を飛ばされる
「腕を振るのも忘れるな。その拳で相手のお顔面に一発叩き込み痛いんでしょう?奴らの顔を思い出せ。復讐を忘れるな」
「はい。奴らのことは忘れません」
自分が今こんな目に合っているのも奴らのせいだ
絵留達の顔を思い出しながら走るも
「喋れるくらいに元気ならお待ちかねのダッシュを行こうか。100メートル先の信号までダッシュダッシュ!」
両腕がちぎれそうなほどの痛みと重みが篤襲う
「死んでるくせに痛そうな顔をしない!痛いと思うのは記憶の中の事!脳が見せる幻影です」
史郎の怒声が飛び交う中再度走り始める
「でもペットボトルの重さはリアル」
「それを言うな!」
「無駄口を叩く暇があったらダッシュダッシュダッシュ!」

2週間を過ぎる頃には2リットルのペットボトルに水を入れた状態でも重さを感じなくなった


「結構順調だな」
小石を簡単に拾えるようになった篤に史郎は満足げに頷く
「自分でも驚くほどに体が軽いんだ。空も飛べそうだ」
「その領域は筋肉を付けずに透明に徹した幽霊の場合だ。空は飛べても何も持つことはできない。酷くつまらない人生?だぞ」
腕立て伏せをしながら史郎が説明する
「素朴な疑問だけど史郎は復讐は成功したの?」
ランニング中に暇つぶしとばかりに車を押して動かしていた史郎であれば相手の首もへし折ることができそうだと思っていた
「俺?言ってなかったっけ?俺はいじめじゃなくて受験ノイローゼだよ。元々勉強は好きじゃなくて体を動かす方が好きだったんだけど、うちの両親が勉強至上主義で。勉強をして良いだが国入って良い企業に入れと。最初は親の言う通りに勉強を頑張っていたけどそのうち虚しくなったんだ」
「虚しく?」
「良い大学に入学して、良い企業に入るのは誰の為か?俺のためだと言うけど、その為に好きなことを我慢している理由は?そう言うことを考えたら自分のやっていることの意味がわからなくなって」
「昭和でもあったんだ」
「俺の時代は学歴社会だからな。エリート思考が好まれたんだ。まあそれでノイローゼになって、衝動的に‥」
「そうか」
「なので死んでからは大好きな筋トレを心ゆくまで楽しんだ。四十九日を過ぎてから魂の筋肉の成長はなかったが、肉体をいじめるのが楽しくて今も筋トレを続けている。だから誰かを殺したいとかはない」
「良い感じのゴーストライフだね。俺も復讐が終わったらそう言う生活になれるのかな?」
そう尋ねる篤に
「お前みたいに復讐のために筋肉を鍛えたやつを何人も見かけた。途中で挫折する奴もいたが、無事に復讐を成功させる奴もいた。そいつらは四十九日を過ぎたらどこかに行ったからどうなったかわからない」
「まあ今は復讐しか頭にないから」
そのまま座ろうとしたが
「誰が休憩して良いと言った?時間が無いんだ。相手の首をへし折れるくらいになるまで鍛えろ」
途端に厳しい表情になった


「これからはジョギングは息抜き程度の物だ。今週は腕立て伏せだ。背中に重しをドンドン増やしていくからな」
では初めという合図で腕立て伏せを始めると直ぐに背中に重みがのし掛かる
「何乗せた?」
あまりの重みに背骨がミシミシと軋む
「そこいら辺にあった捨てられた粗大ゴミだ。そんなに重い物じゃない」
背中を見るとたぬきの置物で
「ほらほら、呑気に背中を見てないでスピードアップスピードアップ。モタモタしていたら奴らの髪を引き抜くだけしかできないよ」
生前ですら満足に腕立て伏せができなった篤にとってはただの腕立て伏せすら困難なのにいきなり重しを乗せられ、そのまま潰れた
「いや何やってんの?地面とキスがしたかったなんてギャグは要りませんから」
「いや、俺は腕立て伏せなんて2〜3回が限度。ジョギングもあんなに走ったのは初めてで‥」
うつ伏せのままもがきながら説明するも
「地面と仲良く友情でも愛情でも育みたい気持ちに地面は応える気はない。分かったらさっさと始めろ」
「いや、だから」
「お前はこの2週間で筋力は十分に出来た。魂だけの存在に不可能も無い。動こうとしないのは自分で制約を設けてるだけだ。魂は自由だ」
だから動けとつま先でつつく
篤はもう一度深呼吸し体を持ち上げるも
「腕の位置が悪い」
木の棒で手元を払われ、地面に突っ伏す
「腕立て伏せのやり方すら知らないって呆れてものも言えんわ。腕の位置はここ。ここから動かさずに腕の筋力のみで上下運動。動かすなよ。手をこの位置に釘で刺したイメージで動かすな。分かったら始め」
言われた通りに腕立て伏せを始めると
(やりやすくなった)
動きがスムーズになるも
「時間がもったいないから重しを追加」
史郎の声がしたと同時に
背中が一瞬軽くなり直ぐに重しが乗ってくる
「ほら準備完了。さ、頑張りたまえ」
背中を恐る恐る見ると腕を組んだ史郎で
「何遠慮してんの?時間が無いんだからさっさとしなさい」
史郎を背中に乗せたままの腕立て伏せに滲まないはずの汗が滲み、地面に染み込んでいく
それほどまでの負担が篤に襲いかかっていた
「汗が出てるだろうけどそれは全くの気のせいだ。人間を載せている負担で無意識に魂が反応しているだけの生理現象です。汗は直ぐに消して集中集中」
史郎が篤の尻を叩き促す
襲いくる重みと手のひらに刺さる小石の痛み
(これがリアルの痛みじゃ無いって嘘だろ?)
自分の感じる痛みが記憶に残った言うが背中にかかる重みと痛みも現実の物で
「余計な事は考えずに体を動かせ。お前が考えて良いのは奴らへの復讐だけだ。奴らはお前に何をした?」
史郎の言葉に思い出す
篤の進路について母親が一緒にいた時は
「今から成績を上げれば大丈夫でしょう」
と言っておきながら
「今から努力してどうにかなるならこのクラスの全員が東大に行けるわ。バカじゃねーの?」
と嘲笑った担任
その担任に煽られ篤を無視し、無視の次は飽きるまで暴行を加えた兎夢達
兎夢達のエスカレートする暴行に何も言わずただ傍観するのみのクラメート
篤の通夜で笑っていた理人と愛
「やってやる」
腕に力を込める
「やってやる!やってやる!」
絶対に奴らに復讐する
「その意気だ。とは言いたいが余計口は叩くな」
いきなり重みが増し、背中を見ると背中に乗った史郎が狸の置物を抱えていた


3週間を過ぎる頃には冷蔵庫を背中に乗せての腕立て伏せができるよになっていた


「この3週間よく頑張った。俺も正直驚きを隠せない。だがここは終着点では無く中間地点でしかない。気を抜くなよ」
「はい」


(正直な話期待以上の出来だ)
史郎の想像を超えるスピードで篤の筋肉は出来上がっていた
最初にに出会った頃の頼りなさは消え、たくましさすら感じる
「今までにも優秀な生徒はいたが、篤は天才なんだろうな」
それが全ては復讐を完遂する為の物だとしても
「俺はあいつの魂の筋肉の力を信じるだけだ」


「今週は顎の筋肉を鍛える。必要な武器は多い方が良いだろう」
民家の軽トラに縄をくくりつける
「はい。引っ張って」
「あ、はい」
そのまま引っ張ろうとしたが
「そう言うギャグは良いから。それとも天然さんかな?」
「これを引っ張れと言う事ですよね?」
だから腕に巻きつけて引こうとしたと説明する篤に
「あのさ、顎を鍛えるのに腕は使わないよね?動画とかで見たことないかな?車に縄をくくりつけて歯で噛み締めて車を引く動画」
「顔近い。見たことないです」
篤の答えにため息を吐き
「じゃあ今説明したからやりなさい。歯だけだよ?他の部位は使わずにね」
「顔近い」
無駄に顔を近づける史郎にため息を吐き、縄を口に咥える
(普通の人間が顎の力だけで車を引っ張るってどんな化け物だ?)
縄を咥え、足を前に出すも案の定軽トラはびくともしない
「まだふざけてる?もしかしてこんなのはできないとまた思い込んでる?」
笑顔ながら迫力ある史郎の表情に首を振り、渾身の力を込めて一歩を踏み出す
頬に食い込む縄の痛みと、折れるのではないかと思う程に揺らぐ歯
(やっぱり無理)
と篤が諦めそうになった瞬間
後ろでタイヤの軋む音がした
後ろを振り返れば僅かだが車が移動していた
「車が動いてる」
思わず篤は叫ぶが
「いや当たり前だから。動かすための練習だから。動かないものを動かそうだなんて無駄なことを俺がさせるとでも思ってんの?」
「顔近い」
青筋を立てた史郎が迫る
「分かったら車を引いて引いて!夜明けまでに元の場所に戻さないといけないんだから。ちゃっちゃとやる」
史郎に促され、車を引いていく
コツさえ掴めばこちらのものだと史郎は言うが、そのコツが掴めない
縄が擦れ痛痒さが増し、血も滲むが史郎は容赦なく追い立てる
「全てはお前のためだ」
両親にも担任にも言われたセリフを史郎は繰り返す
しかし、担任や両親の言葉よりもそれは篤の頃に響いた
史郎は見ず知らずの他人の篤のために本気で向き合い、指導し褒めてくれる
指導もなく、ひたすら怒鳴り散らすだけの両親
自分の保身のためだけにヘラヘラと笑いながら人格を否定し、他の生徒を煽った担任
その3人の言葉はあまりにも軽い物だと改めて篤は実感した
「結構進んだな。ではこの軽トラの持ち主である鈴木さんが朝の農作業に取り掛かる時間は後1時間だ。それまでにこの車を戻すぞ」
「え?鈴木さん家は確か隣町‥(鈴木さんが誰か知らないけれど)」
「鈴木さんのお仕事に支障をきたすわけにはいかないからな。通報される迄に戻すんだ」
「ちょっと待って!押していくから。もしくは車の鍵を借りるとか」
「俺もお前も免許を持っていないのにどう運転する気だ?しかも人んちの車の鍵を借りるだなんて。幽霊といえどいえどやって良いことじゃあない」
「じゃあ押していく」

それじゃあ練習にならない。無駄口を叩かずにさっさとダッシュダッシュダッシュ」
史郎に促され、時間ギリギリに車を戻した
「疲れた‥」
「鈴木さんもおでかけの時間になったな。いつも時間通りに畑に行って働く。お疲れ様です」
鈴木さんを見送った後はいつものランニングに戻り
夜中になり鈴木さんが就寝後にまた軽トラを借りての練習が行われた
「この調子でドンドンスピードを上げていく。最終目標は町内7周だ」
「7が好きだな」
「俺にとってはラッキーナンバーだからな。生まれた月は7月で。自殺したのは7日だった」
「縁起の悪い数字‥」
4週間を過ぎる頃には本当に町内を7周しても余裕で終われるようになっていた
ただし、町内では深夜に無人の軽トラが町中を走っているという恐怖の噂が起きた
「どちらにしろ鈴木さんには多大な迷惑をかけてしまった。今度夢枕に立ってお詫びしよう」
「いやそれただの嫌がらせ」


「いよいよ残すところ後2週間だ」
見事に鍛え上げられた自身の筋肉を鏡に写し、篤はマッスルポーズを取っていた
「今までボディビルダーが変なポーズをしているだけだと思っていたけど実は筋肉が1番美しく見えるポーズだったんだ」
鍛え抜かれた自分の肉体に見惚れる篤
「魅せる筋肉はそうだな。そのために食事制限や筋トレなど自身の肉体を極限までいじめ抜く。ドMとも言う」
「言い方。でもここまで来れたのは史郎のおかげだな。ありがとう」
「よせよ。改めて言われると照れるじゃないか」
照れる史郎に笑いながら
「残りもよろしくお願いしますコーチ」
改めて頭を下げる

「こちらも気合を入れてしごいていくからよろしく」
お互いに挨拶を交わし、2人は深夜の神社に向かった
「この神社は知っているか?」
「はい。地元で祭りの時にはよく参加していたし。確か鬼が運んだ大きな岩があるとか」
「そうだ。鬼引石(きびきいわ)と言う重要文化財だ」
神社の裏に回ると3メートルはゆうに超える巨大な岩にしめ縄がかけられている
「まさか」
嫌な予感が篤を襲う
「最後はただひたすらこの鬼引石を押して回るだけの単純作業だ。実元の皆さんをおどろかなさいように静かにな」
「バチ当たり!」
流石の篤も叫ぶ
「何を言う現代っ子。これは自然現象でここに転がってきたただの岩だ。何の言われも祟りもない」
「あんた昭和生まれのくせに迷信を馬鹿にするのか?この石に触ったら祟りがあるって大人たちが言ってたぞ」
「だから迷信だって。現に俺たちは死んでから他の幽霊は見たけど神様や鬼の姿って見たことがないだろう?」
「確かに」
史郎と篤が筋トレの最中にあたりを漂う浮遊霊や、民家をすり抜けていく幽霊の姿は見たが、神や鬼の姿はない
「だから安心して岩を押せ」
今までの集大成だ
と史郎が促す
「うん」
恐る恐る岩に手をかける
冷たくゴツゴツとした岩は苔むしており、何百年も前からこの町を見守ってきたのだと実感する
きっと自分がいじめられ、追い詰められる姿すらも
「それに神様がいたら俺たちがこんなに思い詰められて自殺するわけがないだろう?」
「いや神様がそんなに万能なわけ無いし」
史郎の話を受け流しながらも岩に手をおき渾身の力で押す
(重い。しかもびくともしない)
手のひらから伝わる存在感は御神体と言う言葉が相応しく、圧倒的な存在感に気圧される
(これは絶対に全身で行かないと無理だ)
上半身を岩に押し付け足を踏ん張ると、僅かながら岩が動く
「これならいけそうだ」
さらに下半身に力をこめようとするも
「はいダメー」
史郎が木の枝で篤の脇腹をつつき
「あふっ!」
弱点を突かれた篤はその場に倒れ込む
「何すんだよ!せっかく動いてたのに」
史郎の理不尽さに怒鳴るも
「それじゃあ誰でも動かせるわ」
「いや誰でもは無理」
全身の筋肉はもちろん必要だがそんなんじゃ意味がない。両腕で押していけ」
「出来ないよ!」
「何で?」
「今まではまだびっくり人間が可能なことだったけど今回はどんな力自慢でも無理じゃん!」
岩を指す篤に史郎はため息を吐く
「何でやってもないのに諦めるかな?まあ見てろ」
史郎が腰をかがめ、岩に手をかけ真っ直ぐ伸ばす
腕の筋肉が盛り上がると同時に岩は少しづつ動き出す
「で?何が出来ないって?」
「申し訳ございませんでした」
土下座して謝罪する篤に
「俺は今まで自分やお前ができないことをさせた覚えはない。人体に限界は魂には限界はない。限界を作るのは己の心だと知れ」
「ははー。恐れ入りました」
それからはずっと岩を押し続けた
史郎の見本通りにやったが岩はびくともせず虚しく夜が明ける
世が開ければ今度はひたすらジョギング
結局岩を1ミリも動かせず1週間が無駄に過ぎようとしていた
「はあ‥ジョギング中に何度もため息を繰り返す篤を黙って見ていた史郎だが
「今日は息抜きに学校かお前の家に行くか」
史郎にそう言われ、学校に向かって見た
学校の篤のクラスでは相変わらずの日常で、皆普通に授業を受け、休み時間には談笑していた
篤と兎夢の机もなく、死んだ2人は存在しないものと扱われていた
「お前達が死んでほんの1か月なのに冷たいな」
史郎が呆れた声を上げる
「まあ所詮学校が決めたクラスメイトだから」
しかしいじめられていた自分はともかく、クラスのリーダーであった兎夢の存在すらどうでも良いというクラスメイトの冷たさには篤も呆れていた
昼休みが終わり、次の授業を待つ生徒の元に青ざめた担任が駆け込んでくる
「篤の自殺がイジメだってチクったのは誰だ!」
いきなりそう言った担任は1人1人を睨む
「誰が言ったんだ!お前か?それともお前か?」
あまりの担任の迫力に生徒はザワつき
他の生徒がこっそりと動画を撮る
「うわ‥暴力教師かよ」
全員が冷めた目つきで見る
「篤は受験ノイローゼだ!それで勝手に自殺をしたんだ。こっちはいい迷惑なんだよ」
唾を飛ばし、喚く担任を次の授業のたんとうきょうしが他のクラスから応援の教師を呼び取り押さえる
「担任はちょっと疲れているようだから職員室に送ってきてすぐ戻ります。なので君達は自習をしていなさい」
騒ぎが落ち着いた後クラスメイト達は絵留達を見ながら呟く
「篤の自殺の本当の原因ぐらい皆知ってるっつーの」
「こっちは受験を控えているのに」
ヒソヒソと話すクラスメイトに荒々しく机を蹴る理人
「言いたいことがるならはっきり言えよ。代わりに明日からそいつは篤みたいになってもらうけどな」
相変わらず反省もない理人達に怒りが込み上げる

「次、家に行ってみようか」

篤の家では篤の両親が親戚と話していた
「こんなになるまで本当に知らなかったのか?」
「勉強以外に報告は聞かないようにしていたからな」
息子の自殺の原因がいじめによるものだと初めて知った両親は相変わらず無関心で
「そもそもいじめられるような弱い心だから成績が伸びなかったんだな」
父親の冷たいセリフに母親は頷く
「そもそもお前が甘やかすからこうなったんだ」
はあほやを責める父親に
「お前も父親だろうが。それにこれはいじめでなく集団暴行だ」
親戚が睨みつける
「篤が自殺した時に巻き込まれた被害者の親から訴えられたというが、この日記と証拠で逆に訴え返すこともできるだろう」
親戚の説明に
「ではこちらも訴訟が起こせるんだな」
父親の表情が明るくなる
「あいつに使った無駄金の回収ができるそ」
嬉しそうな父親に親戚がつかみかかり騒然となる
「まあ、絵に描いたような毒親だな」
史郎がため息を吐く
「昔からだよ、投資に見合った利益。いやそれ以上を求めるパワハラ系の会社経営者だから。母親はその父親の言いなりだから」
握りしめた拳をそっと握る
「今のお前なら岩を動かせるかもな」


深夜
「昼間のことを思い出せ。担任の言葉、クラスメイトの無関心。両親の心ない言葉」
怒りで沸騰しそうな頭に水を被り
目の前の岩に集中する
「では行きます」
腰を落とし、両腕を伸ばし
下半身の筋肉を意識する
次に腕の筋肉を意識
篤の腕と足の筋肉が盛り上がり
ドクドクと血管内の血が流れるのが分かる
「おお‥」
史郎の感嘆の声が上がる中、岩はゆっくりと動き出す
「そうだ。その調子だ」
史郎の声に合わせ岩は神社の境内を出て道路に出ていく
「篤、ここまでだ」
しかし途中で史郎が止める
「どうして?」
「それ以上は道路を利用している善良な市民の皆さんの迷惑になる。やるなら神社の敷地内のみだ」
(軽トラは良いんだ)
そのまま世が明けるまで岩を押し続けた
夜明けとともに神社を出て、背中にたぬきの置物を背負い寺の山門への石段をダッシュでかけああがる
「良いペースだ。このままでいけば来週にはお間wの復讐は完遂できる」
そう
四十九日はももうすぐだと史郎が呟く

最終日には岩を神社の刑だしで何往復もさせることができ
「最後の仕上げだ」
箒を渡された
「お前が岩を動かしたせいで地面がボコボコだ。参拝をなさる方々や、神職の皆さんにご迷惑が掛かるからな。ここいら辺を掃いて綺麗に元に戻すのだ」
「本当に律儀だな」


篤が死んで43日目

教室はいつもの日常を取り戻した
篤の親戚が篤の日記からいじめがあったという事実を学校側に報告されたが、事実確認中という解答で返した
担任はその間生徒達と口裏を合わせていた
「自分達も内申に響くんだからな。余計なことを言おうなんて思うなよ」
そう言われた生徒達は学校側のアンケートにはいじめはなかったと答えた
担任はその結果に満足し、いつもの様に授業をしていた
「で、この公式‥」
黒板に書いている最中に突如悲鳴が起きる「うるさいぞ。授業中に‥」
「先生‥先生の指が」
震えながら生徒が指差す先
もっていたチョークが床に落ちていた
「あれ?チョークを落とした覚えは」
拾おうとした担任は指の違和感に気付く
「指がない」
自身の指が消え、血が吹き出していた
一瞬の沈黙の後教師から悲鳴が上がる
パニックになった生徒が他のクラスに助けを求めていく間、担任の腕が何かの機械に挟まれたかのように潰れていく
「わあああああっ!お前らどうにかしろおおー」
担任が叫ぶも生徒達はどうにも出来ずただ見守るしかできず
そのうちに嘔吐するもの、気絶するもの、逃げ出す者が現れる

そのうちに誰も持っていないチョークが浮かび、黒板に文字が書かれる
『絶対に許さない 篤』
書かれた文字にクラス中が阿鼻叫喚となった
『先ずは担任』
担任の両腕と両足は潰され、救急車が来る頃には虫の息で失禁していた

「篤の呪いだ」

遡ること1時間前
篤が教室に行くといつもの担任の授業
誰も篤に気付くものはなく
黙々とノートに数式が写されていく
「先ずは誰からやる?」
史郎がクラスの後ろでスクワットをしながら尋ねる
「まあまずはこいつだよな」
偉そうに生徒に教えている担任
「こいつは人に物を教えていい奴じゃないし」
チョークを握った指を摘み、軽く力を込めると、スナック菓子を潰すように指が千切れ落ちた
「マジ?こんなに簡単な訳?」
篤は思わず吹き出す
「それはお前の鍛錬の賜物だ。今のお前は筋肉によって生まれた無敵の幽霊だからな」
しばらくは普通に授業が続き、ようやく指の違和感に気づいたクラスメイトが悲鳴を上げる
「さあ、盛り上がっていこうか」
篤は叫ぶ担任の腕を取り、両手で押し潰していく
「なんかペットボトルみたいに潰れていっておもしれー!」
おもちゃで遊ぶ子供のように無邪気に手足を潰していく
「あいつらは最後に遊んでやるとして」
黒板に字を書き始める」
「おお、犯行予告ですな」
楽しそうな史郎に
「でないと恐怖が伝わらないじゃん」
阿鼻叫喚のクラス内を闊歩し、絵留達に近づいた
「お前らも楽しみに待っていろ」


翌日の篤の家
「お前!一体どういうことだ!」
「私に聞かれてもわかりません」
学校側の緊急連絡で、篤の担任が不審死を遂げたという連絡が篤の家にも来た
しかも黒板には篤の字で
『絶対に許さない』
の文字
「ただでさえ自殺で人に迷惑をかけておきながら、逆恨みにも程がある!」
納得出来ないという父親に
「あなたがそういう態度だから恨まれたんでしょう!」
普段は言い返さない篤の母親が反論する
「あなたがそんな態度だから篤に恨まれるんです。担任だって篤を小馬鹿にしていじめを煽動していたし」
はあとため息を吐きバッグを持って出かけようとする
「待て!どこに行く気だ?」
「ここにいたらあなたのとばっちりを受けそうだからどこかに避難します」
「そんなことをするのは許さん!そもそもお前の教育が」
「あんたの頭が悪いせいでしょ!私のせいだけにしないで!」
怒鳴りつけ父親を振り払ったはずの腕が消える
「え?」
一瞬何が起こったかを理解できなかった
呆然とした父親の顎が消え
次の瞬間母親の顔に生暖かい液体がかかる
視界を赤く染めるものが血だと理解した時には激しい痛みが襲い来る
「母さん、父さん」
室内に響き渡る悲鳴に混じって息子である篤の声が聞こえた
「あ、篤!篤なの?」
父親にも聞こえたのかあたりを見回す
「篤!お母さんの子らが聞こえる?お父さん達のこと恨んでいるのでしょう?そうよね!あんな目にあえば恨むのも分かるわ」
痛む腕を庇いながら必死に話しかける
父親は顎を潰されたせいで何も話せず、ただ首をお振る
「ごめんなさいね。お母さんもお父さんに逆らえなかったから。辛かったわね。お母さんもあなたが死んでから後悔しているの」
必死で弁明し、赦しを乞う母親に
土下座する父親
「私達実の親子でしょう?だからきっと分かり合え‥ええええええ?」
いきなり口内に人間の指が突っ込まれ喋れなくなる
「そういうのはね、俺が生きてた時に言うべきだった」
耳側で聞こえる篤の声は冷たく地獄の底から聞こえてくる様だった
ブチブチと不快な音が篤の母親の耳に響き真っ赤な舌が抜き取られる
「2人とも喋らなくていい」
足首も潰され逃げられなくった2人にかつての息子の声が冷たく響き渡る
「今まで親子の時間てあんまりなかったからさ。じっくりと過ごそうよ。子供の頃みたいに遊びながら」

「一応喉の筋肉も鍛えたからな。お前の声も聞こえてくるはずだ」
史郎の説明に
「父さん達が俺の声が聞こえたのもそのせいか」
父親の耳をちぎりながら呟く
「血の繋がった親子だしな。通じるのも早いんだろ」
泣きじゃくる母親の胸を曝け出す
「昔は母ちゃんのおっぱいも吸ってたんだろ?」
「いやうちはミルクだって。母親が胸の形が崩れるのが嫌だからって母乳は捨てたって」
「そんな話もしたのか」
「父さんが言ってたんだ。母さんが母乳で育てなかったから俺がバカに育ったって」
母親の胸にはを当て、思い切り食いちぎる
「ママのおっぱいのお味は?」
からかう様な史郎の言葉に
「はい、先生。とってもまずいです」
口元を赤く染めて笑う
地面に突っ伏し這いずりながら逃げようとする父親を捕まえ、ひっくり返す
ジタバタともがく父親を見下ろし自分が優位に立ったのだと篤は実感する
「父さんがいつも人を見下ろしている気持ちがわかったよ
視界に映る青白い身体の息子の姿に叫びたくても叫べない
涙を流し手を合わせる父親の股間に思い切り足を下ろした
「ぎゃー!」
「ちょっ!なんで史郎が叫ぶの?」
股間を押さえ叫ぶ史郎に篤が驚く
「だって‥おま‥それは男がやっちゃダメな禁止事項だ」
「そもそも諸悪の根源て奴じゃない?子供を産んでそ立てちゃダメな人達が子供を産んで育てた結果がこれだし」
父親の下腹部を手で割り開き、中の精巣を取り出す
「まあこれが無ければ俺は生まれなかった訳だけど」
「皮肉な世界だなあ」
史郎がしみじみと語る中、篤は母親の腹を裂子宮を取り出し父親の腹に埋め込んでいた


翌日、訪問した親戚によって無惨に殺された篤の両親の姿が発見された

「さて、次に行こうかな‥ってええええ?」
残された復讐相手の家を巡っている時に篤は絵留が自殺しようとしているのを見つけた

「もう無理。次に殺されるの私じゃん」
クラスのグループラインに流れてきた写真
担任の死亡した姿と見知らぬ中年の男女
『次は絵留、理人、正義、愛の誰かだ。お楽しみに』
「このラインて絶対篤だよね」
自分がやったことの自覚はある
だから次に殺されるのは自分なのだ
「どうすんのよコレ。兎夢のせいじゃん」
そもそもが兎夢の提案に自分達が乗ったせいなのだ
しかも思いついた兎夢はすでに死亡している
「あいつだけ楽して死んでんじゃねーよ」
そう悪態をついた後にふと思い立つ
「そうだ。あいつに殺される前に死んじゃえば良いんだ」
天井の電灯にロープをかける
「あいつになぶりごろされるよりいっそ」
ロープをかけ、椅子に登り、首を通し椅子を蹴る
首が締まり、息苦しさに苦しむも
「やめろおおっ!」
篤の声がし、首が楽になった
「何やってんだよバカ」
絵留が気がつくとベッドに寝かされており、あるしが不安げに見つめていた
「篤」
いつもの間抜けで気が優しい篤そのもので
「勝手に死ぬなよ」
心配していた
「だってあんな他は私達を殺そうとしたんでしょ?だから先に死のうと」
「バカ!」
篤に本気で叱られ
「ごめん」
絵留は涙を滲ませる
(やっぱり篤は変わんないな。お人好しの篤のままだ)
「お前が死んだら俺‥俺‥」
顔色は悪いものの優しい篤の顔にホッとする
自分は許されたのだと絵留が思った瞬間
「俺が楽しめないじゃないか」
急に不気味な笑顔になり足首を掴む
「お前らに簡単に死なれる訳にはいかないんだよ」
ぼきりと嫌な音を立て、足が違う方向に曲がる
「なんの為に毎日ノートにお前らの殺し方を書いたかわかんなくなるだろ。しかも見られたら恥ずかしい系のキルノート」
「きゃー恥ずかし!厨二病かよ」
からかってくる史郎を無視し両腕を折る
「本当に間に合って良かった」
安心し切った顔で絵留の首にロープをかけ直す
「お前らに楽に死ねる権利はないし、死ぬ時間もお前らは決められない」
ドアノブにロープをかける
「お前の親って結構夜遅くに帰ってくるんだよな」
ロープの緩みを確認し引く
「親が帰ってくるまで骨折ゲームな。楽になれるのはどちらかが帰ってきてこのドアを開ける迄だ」
ニコニコと笑う篤に
「待って許して‥楽にして」
絵留は懇願する
「謝るからあ‥」
泣きながら懇願する絵留の指の骨を折る
「誤って許される期間は過ぎたんだ。結果俺は死んだし、お前らは俺に殺される。いや、お前を殺すのはお前の製造責任者だな」
「お願い」
懇願する間にも両手の指はへし折られ徐々に上に上がっていった


「ただいまー」
深夜に帰ってきた絵留の母親は娘の部屋から聞こえる娘の啜り泣く声と笑う男の声に不審を抱き、ドアを勢いよく開け、丁度ドアノブに紐をかけ、自分の首を引っ掛けていた娘の死刑執行人となった


「絵留の奴自殺したって」
理人と正義が青ざめた顔で話す
愛は学校には来ていない
他のクラスメイトは理人達を遠回しに見て、誰も話しかけようとしない
「ちっ!こいつら篤なんかにビビりやがって」
担任や生徒の保護者が不審な死を遂げたにも関わらす、学校側は通常の授業が行われる
民が自分達は篤のいじめに関わっていないという安心感からだろう

「今日も来てるよあいつら。どんだけ面の皮が厚い訳?」
クラス名著だけでなく他の生徒からも冷たい目を向けられ
「えー、次の問題‥」
教師に名前を呼ばれることもなかった
「俺たち透明人間かよ!」
正義がトイレの個室に篭り、悪態をつく
「誰だか知らねーけど篤が何かできるわけねーじゃねーか」
「じゃあ俺帰るから。どうせ俺がいても居なくても同じだし」
先に帰って行った理人に
「待てよ。俺もかえ‥」
帰ると言った正義だが便座から立てなくっていた
「え?」
気がつくと足の指が潰されていた
悲鳴を上げようとしたがすぐに顎が外され何も喋れなくなる
「家庭科室にすり鉢とすりこぎがあった」
「使ったらちゃんと洗って返さないとダメだぞ」
聞き覚えのある声と聞き覚えのない声
いつの間にか現れた篤に正義は涙を流す
「俺は透明人間かよ。ってお前が言ってたからご期待に添えよう」
篤は笑い、正義の腕をちぎり取る
顎が外されたまま呻く正義にちぎり取った腕を見せつけさらに細かく潰していく
「ある程度小さくしたら肉はすりつぶしてトイレに流す。骨も細かく砕いて同じくトイレに流す。そうすれば透明人間の完成だ」
鼻歌を歌いながらすり鉢に肉を入れすりつぶしていく
「他の生徒や教師がこのトイレにくるまでが勝負だ」
正義には見覚えのない学ラン姿の少年がアドバイスをする
「このトイレってさ。教室から遠いから生徒も教師も中々来ないんだわ。それまでに生きて誰かと会えたらいいな」
次々と潰されていく自分の肉を見せつけられ正義は涙を流す
放課後
見回りの教師がトイレのこ個室から水が溢れていることに気付いた
個室のドアをこじ開けると上半のみの正義の死体が血まみれのすり鉢とすりこぎと共に見つかった

「だから手短にしろと。あとトイレにいきなり塊は入れるなよ」
「しかもすり鉢とすりこぎを返してないから家庭科の先生はお怒りだな」


「とうとう正義まで」
理人は愛と共に寺の住職である理人の父親に泣きついた
「お前達のやったことはどうやっても償う事は出来ないが、このままでは篤君も悪霊と化す危険性があるな」
話を聞いた理人の父親は電話をかけ、霊能者を呼び出した
「お話は聞きました。理不尽な目に遭った篤君には同情すべき点がありますが、悪霊となったものに容赦はしません。この2人を囮にその悪霊を誘き寄せ、消しましょう」
霊能者は祭壇を組み、しめ縄で結界を作り、そこに理人と愛を座らせた
「私が良いというまでこの結界から出てはいけません」
それから霊能者は経を唱え始めた

「何か変な気分がする」
折角理人と愛が一緒にいる所を見つけたのに怪しい場所で怪しい人物が経のようなものを唱えている
しかも理人と愛は何やら四角く囲った縄の中にいて
「触っちゃダメって本能が言ってるんだ」
何故か不快感を感じた
「ああ、これはホラー系の映画やドラマとかで良くあるお祓いの儀式だ」
「マジでか!本当にこういうことをするんだな」
半ば感心する篤に
「呑気に言ってる場合じゃないそ。俺たちはここに閉じ込められたんだ。下手をしたら成仏させられる」
史郎の言葉に篤は愕然とする
「もしも。もしもだよ?もし俺が成仏したら復讐は?」
「出来ずに次のステップだな」
史郎も心なしか苦しげで
「そんなのは嫌だ。折角ここまで来たのに!後たったの2人なのに」
「あ、篤!」
悔しげに地団駄を踏む篤の姿が見えたのか理人と愛が叫び、霊能者も2人を見つめる
「篤君ですね。もう1人は誰かはわからないけれど。もう復讐はやめなさい。この2人も十分反省しています」
ヒイヒイと泣きながら両手を合わせ謝罪する理人と愛
「彼らは許されないことをしましたが、あなたも人を殺すという大罪を犯しました。もうやめなさい。そして光のある方向を示しますからそこに向かいなさい」
霊能者が指した場所
眩しくも暖かな光の道
「さあ、行きなさい。さもなくばあなたを消滅させなければなりません」
霊能者が諭すも篤聞き入れず
「嫌だ。あんなに苦しい思いをしてこの筋肉を手に入れたのにこんな中途半端で終わってしまうのか」
膝をつき泣き出した篤を見て理人が笑う
「情けねーの。あいつ泣いてんよ」
「ぷっ!ほんとだ」
笑い出した2人に
「やめなさい。あなた方は本当に反省したのでしょう?だったらこんな時に笑えるわけがない」
いきなり笑い出した理人と愛に流石の霊能者も怒りを見せる
「すみません。俺こういう真面目な場所で笑っちゃう癖が」
「もう、真面目にやってよ理人」
「愛、おまえだって笑ってるじゃん」
「あいつら本当にバカなんだ」
史郎が呆れていると
「あなた達いい加減にしなさい!人が命懸けでお祓いをやっているのに!」
霊能者の気が削がれた
「今だ!篤!忘れるな!筋肉はいつでも裏切らない!」
史郎が霊能者の体に乗り移る
霊能者の体内では正に魂同士の肉弾戦が行われていた
相手の霊能者も魂を鍛えていて、重いパンチに史郎は苦戦している
「史郎!」
「四十九日で限界まで鍛えた筋肉に敗北はない!」
史郎の渾身のパンチが
霊能者の顔面を叩き潰し、霊能者の魂は倒れたまま動かなくなった
「この人死んだ?」
恐る恐る聞く篤に史郎は頷く
「これが霊に取り殺されるという事だ。魂を破壊され体を乗っ取られる」
霊能者に取り憑いた史郎は抱き合い震える理人と愛の結界を破壊する
「我々の筋肉の勝利だ」
にこりと笑う
「ああ、筋肉しか勝たん」

「ごめんなさいごめんなさい!」
「許してください!」
霊能者の死体の前で必死に謝罪する理人と愛

「いや、謝らずに笑えよ。真面目な場所で笑うのがお前らの癖だろ?」
指をポキポキと鳴らし篤が笑う
「本当にごめんなさい」
泣きながら懇願する愛の衣服を引き裂く
「先ずは愛だな。一皮剥けて良い女になってもらう」
史郎が理人を押さえつけ、逃げられないようにする
「人間の皮もだけど動物の皮を剥ぐのは結構難しいぞ」
「うん。あ、ちょうど良いものみっけ」
霊能者が祭壇に飾っていた小刀を光らせる
「じゃあ背中からいってみるか」
背中に切り込みを入れ、指を入れる
ビリビリと嫌な音を立て自分の皮膚が剥がされていく音に愛は泣き叫ぶ
「んっ!結構難しい。しかも堅い」
無理やり引き剥がそうとして太ももに足をかけ、力を入れると愛の足の骨が粉砕される
「あ、ごめん」
想定外のことに篤が思わず謝罪する
「もう篤君てば不器用さん。仕方ないから小刀で皮を剥いでいくと良いよ」
「そうだな」
ゾリゾリと小刀を肉と皮膚の間に滑らせ丁寧に剥いでいく
「あー、そんなに肉がついて。下手くそだな。お前果物も綺麗に剥けないタイプだろ?」
「史郎は器用そうだもんな。それに今は果物の皮剥きにはピーラーがあるし」
愛の全身の皮を剥き終わった後に血まみれとなった篤が理人に向かう
「さて、最後はお前だな」
泣きながら懇願する理人の足首の関節を外す
「お前は記念にじっくりゆっくり殺してやるよ。全身を脱臼させてからジワジワと首を絞める。それまでに親父さんが来てくれたら良いな」
簡単に骨が外され、痛みにもがく理人
「そういえば関節を外したら人間の手足って伸びるらしいから試してみそ」
「そうなんだ。えいっ!」
試しに腕を伸ばしてみた篤だったが、腕は伸びすぎてちぎれる
「もう何やってんのこの子は!誰もちぎれとは言ってないよな」
「ごめーん。でもまだ伸ばせるところはあるから他ので試してみるよ」
「頑張れよ」

翌朝、霊能者のふりをした史郎に呼ばれた理人の父親は惨たらしく殺された我が子と対面することとなった


「これで全部終わったな」
篤のいじめに加担した全員が不審な死をとげ、学校側にもいじめの隠蔽をしたとして結局は篤のクラスメイト達は進路が無くなり学校自体も来年で取り壊されるという
「呪われたクラスって呼ばれてたな」
「まああいつらも見てみぬふりをしていたから自業自得だ」
笑う篤に史郎が時計を見る
「時間だ。後10分でお前が死んでちょうど四十九日。俺ともお別れだ」
固く握手を交わす
「最初はどうなるかと思ったけど、楽しかった」
「俺もだ。久しぶりに骨のあるやつに出会えて幸せだった」
「俺、生まれ変わってもお前のこと忘れないから」
涙を滲ませる篤に
「何言ってんだ?来世なんてないから」
史郎は笑顔で応える
「え?」
「復讐とはいえ成仏の道も考えずに人を殺しまくった奴が次のステップにいけるわけないじゃないかしかも最初は復讐だーって言っておきながら、あの殺し方はどう見ても人殺しを楽しんで。サイコパスかよって思ったわ」
大きな袋の口を開け、篤に向ける
「お前が殺した連中もこの中でお前が来るのを待っている」
袋の中に光る無数の人魂
「じゃあな篤。お前のこと嫌いじゃなかったよ」
袋に吸い込まれそうになり、慌てて踏ん張る

「おお、俺の指導の賜物だな。しぶといしぶとい」
楽しそうに笑う史郎に背を向け必死で踏ん張る
あの袋に入ってはダメだと本能が叫ぶ
全身の筋肉に意識を集中させ一歩ずつ前に足を進める
「その意気だ、と言いたいが」
史郎が巨大な草刈り鎌で篤の足を払うと
篤の足は宙にうきそのまま吸いこまれていく
篤を吸い込んだ後は袋の入り口を絞め、背中に担ぐ
「いやあ、今回は大漁だった」
目の前に現れた巨大な門をくぐると史郎の学ランは黒いマントとなり、顔には肉がなくなり骸骨となる
「よお史郎、今回も大漁みたいだな」
史郎と同じように袋を背負った仲間の骸骨が寄ってくる
「おうよ。今回もクライアントが喜ぶクズの魂だ」
自分の袋を開けて見せる
「しかしまあ毎度毎度良くそんだけ集められるな」
「そりゃあ鍛え方が違うからな。筋肉さえあればなんとかなる。筋肉は裏切らない」
骨だけになった腕を見せる
「骨だけじゃねーか」
笑いながら骸骨も史郎と一緒に歩く
「クライアントが喜ぶ極悪人の魂を千個集めたら良い条件の人間に生まれ変わることが出来る。俺もまだまだ先なんだがお前はどうよ?」
「俺?後7個」
「すげえな!」
「魂8個分の超ドクズの魂があるから今回は上手くいけそうな気がするんだ」
「そうか。で、どんなクズどもだ?」
「いじめをけしかけて、いじめを隠蔽しようとした教師と、いじめの首謀者。同級生を自殺に追い込みながらそいつの通夜で笑った奴ら。自分の息子に無茶振りを仕掛けて精神的に追い詰めた挙句息子が死んでも金のことしか考えなかった父親。そして自分の保身のために父親に同調して息子が助けを求めても無視した母親。そて1番お葛葉復讐にかこつけて殺人を楽しんだ自殺者。すぐに毛押せる力を手に入れたのに嬲り殺しって。しかも笑ってたし」
「うわー!サイコパスじゃんそれ。最近よくそう言う魂に遭遇するわ〜!どんだけ今の世の中狂ってんだか」
「元からだよ。出なけりゃあのデカい戦争も起きなかった訳だし。ほら、この行列」
「毎度この行列もうんざりするな。まあそれだけ生まれ変わりたい奴とクズの魂の比率が合っているんだろうな」
史郎達はたくさんの骸骨達の列に並ぶ
「生まれ変わったも篤の事忘れないからな」
どんよりと曇った鉛色の空を見上げ史郎は呟いた


終わり



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