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愛すべき愚者

そこそこ面倒な人生を送ってきて、
「普通」に固執した時期も通り越して、
「異常」に固執した時期も通り越して、
いつからかありのままの自分を心底愛するようになった。


惨めで情けない自分も
歪みがちな愛情表現も
夢中になると突っ走る癖も
嘘みたいに熱が冷める癖も
大切にされると逃げ出す所も
大切にし過ぎて壊してしまう所も
色々考え過ぎて嘔吐する弱さも
自分の足で立ち上がろうとする強さも
限界が来ると思考放棄してしまう愚かさも
いつもその瀬戸際に立ちがちな振る舞いも

自分の全てを受け入れられるようになった。

特別である必要は無く、
個性に拘る必要も無い。

何者かに成ろうとする以前に
既に「自分」という唯一無二である事に気付く。

こんなにも弱く浅慮で愚かな屑でも
この世の何より愛せてしまう。

私はいつ、何に気付いたのだろう。

「当方馬鹿で愚鈍です」
卑下でも何でもないただの事実。
痛くも痒くもない。

全てを引っ括めて私は私を愛している。
生物としての本能と言えばそれに近い。
何ひとつの無理もなく胸を張れる。
褒められた事など無くても。
これが自分であると言い切れる。


これからの人生をどのように生き、
そしてどのように終わるのか。

後悔の無い人生などは有り得ない。
その後悔を飲み込めるかどうか。
拒絶し続けたらきっと自分を愛せなかった。


泣き喚き血反吐を吐いて地べたを這いずり回る人生が待っているとして。
さて其れは今までと何が違うだろうか。

私の今までの人生の縮図はそれなりのアンタンシテ。
だからこそ愉しかったとも言える。

自分も他人も強く憎み呪った過去。
淡い希望が尽く絶望に変わった過去。
全てどうでもいいと自暴自棄になった過去。
自分はただの「モノ」であると割り切った過去。
大切な人を悲しませて自責の念に駆られた過去。
何処にでも有るような小さな幸せが泡沫に消えた過去。

沢山の様々な経験が今の私を形作っている。
恐らくは愛情というモノも知っている。
ただ「普通」を知らないだけで。


幾億の小さな小さな一粒。
上を見てもキリがなく下を見てもまた然り。
ならば自分自身を見ればいい。
意外と最低で最高かもしれない。

自分にしか書けない物語を綴る。
幕が下りるまで。

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