梔子(クチナシ)

思ったこと 感じたこと そんなことをつらつらと。

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【創作】 祀る村

『近年この麻吊村は首都圏からの移住者が急増し全国住みたい村ランキングでもトップに入る勢いで…』 綺麗な作り笑顔の女性キャスターが文章を読み上げる。 インタビューに答える移住者たち。 「自分は埼玉から」 「自分は神奈川から」 「決め手は環境ですかね。水も空気も綺麗なので」 移住者たちは知らない。 子供たちも知らない。 この村に伝わる「掟」と「存在」を。 受け継がれる忌まわしい「祭り」を。 知られては、ならない。 例に漏れず首都圏から麻吊村に移住者してきた青年は麻斗

    • 愛憎

      恋人は居ないし好きな人も居ない。 事実。 人間として好きな人はいっぱいだけど、愛してるのは一人だけ。 ずっと前から愛し合ってるのにどうしても上手くいかないから試行錯誤をして出した二人の結論。 5年くらい前の話。 「一緒に地獄に堕ちよう」 「梔子が賽の河原で罪を許されるために石を積んで積み終わる頃に俺が蹴り壊してあげる」 「それを永劫繰り返そう」 今年のゴールデンウィークに二人で栃木の殺生石を見に行って、その周りは賽の河原という名前で、そこを歩いてる時にその話を振った

      • 爪を彩る

        ネイルポリッシュが苦手だった。 私はとても不器用で大雑把で面倒臭がりで、自分の爪にネイルポリッシュを塗るのが本当に苦手だった。 ベタベタになってムラになって、いつも何度も何時間も掛けて塗り直すのが億劫でネイルサロンでプロにお金を払ってジェルネイルをしてもらうようになった。 足の指だけは自分で塗った。 ヘタクソでもあまり目立たないから。 5月の末に手の映る撮影が決まり、少し前からネイルを辞めていた。 少し寂しい気もしたけれどすぐに慣れた。 でも、やっぱり指先にも彩りが欲し

        • 珍しく早々に目が覚めた。 五時台。 とりあえずバナナを食べる。 足りなくて卵スープを作り、残っていた白米と納豆でこれまた珍しくしっかりと朝食を摂った。 昨日は充実した一日を過ごした。 写真家とのモデルとしてのコラボの話、知り合いの作家のアクセサリー着画モデルの話、会社が取ってきたアパレルブランドのモデルの話。 やる事が多くなってきて楽しくなりそうだと思ったが、被写体やモデルを個人的にやるにはお金を貰わないと会社的にトラブルになると言われてしまった。 それでも無償でやる

          それでも、だからこそ

          抽象画を描いている。 廃材でアート作品を作っている。 最近はピアスを作るようになった。 ピアスはあくまでも短期間、極稀にギャラリーに納品する程度に作っていこうと思っていた。 絵は値段も高いし好みもある。 なかなか売れない。 しかしピアスの売れ行きは良い。 急に企業から連絡がありその企業でオリジナルのブランドを立ち上げピアスを販売する話まで発展した。 「私はアクセサリー作家じゃないのに」 「私は絵を描いて生きていきたいのに」 散々悩み、散々打ち合わせをし、やっと自分の

          それでも、だからこそ

          作者と作品

          絵を描いている。 文章はずっと書いている。 最初は日記のようなブログだった。 読んでくれる人が少しでも笑顔になってくれる為に面白可笑しいものを書いていた。 「読んでいて楽しい」 「思わず笑っちゃう」 そんなコメントが嬉しかった。 当時勤めていた会社の上司からの過激なセクハラが始まってから楽しいブログが書けなくなった。 気をつけても所謂「病みブログ」の雰囲気を抑える事が出来ず、読者は離れ、ブログの内容は一層過激になっていった。 数年後に写真詩という存在を知り、note

          暖色の間接照明に照らされる 自分の影が部屋の壁に落ちる 大切なぬいぐるみは腕の中に ふと誰かの事を想っては止め そしてまた同じ事を繰り返す 願わくばというエゴの行先は 存在すらしないカミサマの掌 それでも想う事は変わらない 君の誰かの辛い夜をください 共に抱いて夢で逢いましょう

          暖色の間接照明に照らされる 自分の影が部屋の壁に落ちる 大切なぬいぐるみは腕の中に ふと誰かの事を想っては止め そしてまた同じ事を繰り返す 願わくばというエゴの行先は 存在すらしないカミサマの掌 それでも想う事は変わらない 君の誰かの辛い夜をください 共に抱いて夢で逢いましょう

          ねがい

          きらり ひかり ぽつり こぼし 最初はみんな無垢だった 白か透明か わからないけれど ふわり つつみ やわく むすび 子供の心はいつも其処に 忘れているだけで 失くしたわけではなくて ゆびに ふれて おもい はせて たまに思い出して 難しくても あの頃の笑顔 確かにあったから ゆめに おちて きっと あすは 新しい日が昇り 同じじゃない一日で ささやかな喜びが 誰かを優しくしますように

          循環、選択、死のにおい

          気付くと夕暮れの田園に一人立っていた。 太陽はちょうど山の向こうへ沈み、忘れ形見のような弱々しい明かりが山のシルエットを強調している。 ここは故郷だ。 あれ?東京へ戻ったのになんで帰って来てるんだろう。 …ああそうだ。 夜ごはんを食べに来たんだ。 財布の中には千円札が四枚。 お気に入りのマスタードカラーの財布。 そうそうこれはクリエイター作品でそこそこ高かったんだ。 本革だから使い込むほど手に馴染む。 なのに四千円しか入っていないのは少し面白いな。 黄色の財布と言えば

          循環、選択、死のにおい

          年越しだろうが正月だろうが本当は別にどうでもいい。だって2024年になったからって自分が突然変わるワケでもないし周りも然り。ただの習わしと言えばそれまで。しかし年末年始が無いと連休が取れない、その直前にはクリスマスがあったし。だからさ、楽しくなくても平和であってほしかったよ。

          年越しだろうが正月だろうが本当は別にどうでもいい。だって2024年になったからって自分が突然変わるワケでもないし周りも然り。ただの習わしと言えばそれまで。しかし年末年始が無いと連休が取れない、その直前にはクリスマスがあったし。だからさ、楽しくなくても平和であってほしかったよ。

          ショート【私の猫】

          深夜2時、霞む目を擦りながらキャンバスに向かう。 淹れたてだったコーヒーはほとんど口を付けないままとっくに冷めているし、顔には絵具が付着していたがそれすら気にならない。 「…ねぇ、まだ寝ないの?」 寝室から出て来た彼女が寝惚けた声で訊ねる。 「ああごめん、起こした?」 「そうじゃないけど。来ないから」 「作業がなかなかキリにならなくてさ。そこまでは持っていきたいんだよね」 「そう」 短く返事をしてペタペタとこちらへ来る。 「どうしたの?寝ないの?」 「だって

          ショート【私の猫】

          瞑目半夜

          真夜中、ベッドの中で目を閉じる。 窓の外からたまに聞こえる騒音にも慣れた。 窓の外からたまに聞こえる奇声にも慣れた。 慣れた、気がしていた。 人間は鈍感になる。 それは慣れじゃない。 ただ鈍くなるだけ。 何年前だろう、色んな人に訊いてみた。 「人間らしさとは何か」と。 その中で喜怒哀楽がある事だと答えた人がいた。 二足歩行する事だと答えた人もいた。 正直その二つしか覚えていない。 当時鼻で笑った答えと斜め上を行く答えしか今は思い出せない。 どうしてだろう。 他

          純粋な衝動を守る為に不純な選択をする矛盾を抱えて誰に知られる事も無く熟す日々の夢の中ですら苦しむ事実を秘めて雑多な空虚を整理する暇も無く何時しか光りの消えた瞳に何時の日か陽の光のように柔らかな抱擁を与える手が伸びても恐くて振り払ってしまうような悲しい事の無いようにと

          純粋な衝動を守る為に不純な選択をする矛盾を抱えて誰に知られる事も無く熟す日々の夢の中ですら苦しむ事実を秘めて雑多な空虚を整理する暇も無く何時しか光りの消えた瞳に何時の日か陽の光のように柔らかな抱擁を与える手が伸びても恐くて振り払ってしまうような悲しい事の無いようにと

          静かな激情

          はじめて一枚の絵が売れた。 自分の知らないところであっさりと。 なんだかamazarashiの無題みたいだなぁ、なんて。 思ったりして。 自分の絵が手元から離れた喪失感と 自分の絵が誰かの元で空間を彩る喜びと 入り混じる。 そういうモノだと聞いていた。 そして結果後者が勝つのだと。 いつか慣れる日が来るんだろうか。 否、来なくては困るし来るようにする。 自分のためが誰かのためになるように 今よりもっと広い視野と長いスパンで。 そういえば、 人間て脳の本来の機能の

          大切なモノは少ない方がいい。 いつか手放さなくてはならない時が来るなら その痛みはなるべく少ない方がいい。

          大切なモノは少ない方がいい。 いつか手放さなくてはならない時が来るなら その痛みはなるべく少ない方がいい。

          他人事

          ほかのひとのこと そう書いて「他人事」 皮肉めいた使い方をされる事が多い言葉。 確かに他人の事など解らない。 他人の頭の中など見当もつかない。 ましてや他人の心の内など知りようもない。 それは誰でも同じだろう。 似ているか否か。 入口は同じでも分岐がありそれぞれの出口がある。 きっと誰もが同じではない。 似ていると思った。 似ていて欲しいという願望がその時に存在しただけ。 きっと片方だけが気付いてる事。 出口。 出口が無い場合の方が多いんじゃないだろうか。 幾つにな