見出し画像

紙が存在する限り、ペーパーレス化は普及しない

デジタル化のメリットの1つに「ペーパーレス化」がある。

紙に書いたり、印刷して配布したり、ファイリングするといった物理的な手間や保管の負担がなくなる。

紙媒体から電子媒体にすることにより、モニター上で処理を済ませ、サーバ上でデータとして保管し、それをPCやスマホで閲覧することができる。

これらは通信機器も通信環境も進歩しているので、いつでもどこでも実現できる。

誤字脱字があったら新しい紙に書き直したり、二重線を引いてハンコを押す必要もない。それどころかハンコレスも進んでいる。

1つの情報を共有するために紙を何十枚も印刷する必要はない。貴重な資源である紙、インク、電気・・・こういった消費(コスト)も少なくなる。

法律で「✕年間は保管義務がある」とされている書類やファイルを保管するためだけの棚や部屋を確保する必要もなくなる。鍵などの物理的なセキュリティ対策も不要となる。

そして何より、「あの書類ってどこだっけ?」とデスク回りや棚をバタバタと探すこともせずとも、データベースを検索すれば見たい情報はすぐ探せるようになる。閲覧規制のある情報を除き、アクセス権さえあればいつでもスマホで知りたい情報を入手できる。

このような状態に慣れるまでには時間はかかるだろうが、社会的にデジタル管理を行うことが当たり前になれば、ペーパーレス化のメリットは大きいことは分かるだろう。

まるでアニメで見たような未来であるが、すでに未来を描いたアニメの技術を現実が追い越している部分もあるため、この先はもっと便利な技術が生まれると思う。

――― が、ペーパーレスを実現できるテクノロジーは進歩しているのに、世の中、ペーパーレスがそれほど浸透している様子はない。

せっかくスマホやカードなどキャッシュレス決済をしても、レシートという紙を渡す店舗は多い。

行政手続きも、内容は合っているのに「両面印刷して提出してください」「それを郵送で送ってください」と言われることがある。

メールでアンケートを送っておきながら、提出は(印刷して)FAXするように指示をする機関もある。

SNSやらWebサイトはスマホで長々と閲覧しているのに、書類関係だと「モニターだと文字が読みにくい」と言う人がいるため、別途印刷して配布する必要もある。

このような現状があることから、テクノロジーがペーパーレス化に向けて動いても、紙媒体を求める人たちは後を絶たない。

このような現状を招いていいる根本的な理由は「紙媒体があるから」ということである。

難癖をつけるような言い方になるが、「紙があるからペーパーレス化が進まない」という話である。

また、極端な言いかたをすると、本当にペーパーレス化を実現できる世の中となるのは、紙が枯渇する事態になったときだけだと思う。

これは在宅ワークに置き換えれば分かると思う。

コロナ禍において世界中が出勤できなくなったときに在宅ワークが浸透したが、それ以前よりオンライン化できる環境やツールはすでに存在していた。

在宅ワークをすでに行っていた人もいたが、職場に行って仕事するのが当たり前という認識を持っている企業や労働者が大多数だった。

コロナウイルスという驚異によってそれが打ち砕かれたとき、企業や労働者がようやく在宅ワークに目を向けて実現した。

・・・が、コロナが5類型になって以降はまた元に戻ってしまった。それは職場に行って仕事ができるという環境に戻ったからだ。また類似の事態にならない限り、在宅ワークは本質的に浸透しないだろう。

――― 私たちは今まで存在した環境があると、どんなにメリットがあっても本腰を入れて取り組まない習性がある。

今回はペーパーレス化をメインとしたが、社会全体でもビジネスでも、あるいはプライベートであって同様である。

別に「紙なんか滅亡すればいい」なんて極端な主張をしたいわけではない。
実際、このように書いている私もまた、紙の恩恵をたくさん受けている。

本も電子書籍も活用しているが、紙媒体の冊子だって購入する。

しかし、地球環境が変化していき紙の活用が制限されたとき、仕方がないと思って電子化に移行していくのだと思う。

そうして、ペーパーレス化という言葉もなくなったときこそ、本当の意味恵のペーパーレスの実現と言えるのではないだろうか。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?