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傲慢な現場主義はガラパコス化をまねく。介護現場をアップデートせよ

■ 現場主義への危機感


介護の仕事は、高齢者に直接的に支援するサービス業であることから、現場で起きていることが重要となる。

現場での出来事、現場でしか得らえれない経験、現場で養われる感覚・・・こういった現場の積み重ねが、将来的なサービス提供につながる。

そのため、介護では「現場主義」という認識が強くなる。

もちろん現場主義は介護に限った話ではない。それでも、介護事業を運営していると、現場職員の意見や考え方が強いことを実感する。

一方、私は現場主義に対して危機感を抱くことがある。

それは現場に固執するあまり、発想や視野が狭くなってしまったり、まるで自分たちの現場が他よりも優れているといった誤解(傲慢さ)をしている様子が伺えるからだ。


■ 夜間のオムツ交換に対する変化


事業運営を通じて介護業界の動向を把握したり、介護に関する知識や技術を自己学習したり、ときには他業界のトレンドなどを教えてもらったりしていると、ときに現場"だけ" 見ている介護スタッフの未熟さが目立ってしまうことがある。

現場主義の名の下に、自分たちがこれまでやってきた手法や考え方の正当性を誇らしげに語るのだ。

しかし、現場主義を誇ることは結構だが、内容によっては時代遅れであったり、悪い意味で自分たちの現場でしかやっていないことがあったりする。

例えば、介護施設において「夜間帯のオムツ交換は行わない」ことが主流になりつつある。それは夜間帯は排泄よりも睡眠を優先し、日中帯にしっかり覚醒していただくためである。

排泄と睡眠どちらを優先するかの議論は難しいが、夜はしっかり寝ることは人間としてあたり前のことだ。睡眠の確保ができると日中帯にウトウトしないことはもちろん、食事摂取の改善や認知症の症状緩和にもつながる。
これを実践した介護施設の実例はあり、興味があれば「介護 夜間 オムツ交換」などで検索すれば色々出てくる。


■ 介護現場の「ガラパコス化」


しかし、このような話をしても「自分たちの施設では夜間帯は決まった時間にしっかりオムツ交換をしてます。利用者様が失禁などで不快な思いをせず、陰部の衛生も守っています」と語る施設および介護職員は少なくない。

このような介護職員の言い分は分からないでもないが、残念ながら時代に逆行している。そもそも、夜間に限らずオムツ交換そのものは減らす動きになっている。

これは人手不足だから利用者を放置するといった意味ではなく、オムツの性能(吸収力、衛生面、肌触りなど)が向上していることに由来している。

オムツメーカーが利用者および介護者のためにオムツの性能を上げているのに、それを理解しないまま「自分たちはこまめにオムツ交換をしている(ドヤ)」と言っているわけだ。

辛辣なことを言うようだが、勉強不足を棚に上げて現場主義の名の下に、今までどおりの動きをやっては「自分たちは凄いんだ!」と言っているのだ。
これは内弁慶とか、井の中の蛙とかいうレベルではなく、もはや現場主義という名の「ガラパコス化」と言ってもいい。


■ 現場はアップデートするもの


ここまでで、世の中の変化を知らないまま、自分たちの現場だけを維持することのリスクをお分かりいただけたと思う。

しかし、何も現場主義を否定しているわけではない。介護において現場が重要であることには変わりはない。

大切なことは、今までやってきた現場の流れや現状の現場のスタイルを尊重しつつ、その一方で世の中の変化に適応することで、現場をアップデートしていく姿勢が大切だ。

例えが、上記でお伝えした夜間のオムツ交換について言えば、この話を聞いたときに「夜間にオムツ交換しないなんで非常識だ!!」と反発(反応)してしまうと、それ以降は発展性がなくなってしまう。

反発したい思いもあると思うが、プロフェッショナルであれば「へー、今はそういう考え方もあるのか」「それはどのような方法か?」「オムツの性能ってどこまで向上しているのか?」など現在の動向を冷静に検証しよう。

そのうえで「尿もれするかもしれないけれど、うちの現場でも試してみようか」と実行できれば素晴らしいと思う。実行した結果によっては現場に合わないかもしれないが、それも1つの現場の経験である。それは反発してばかりでは得られないだろう。


――― 介護事業の運営・経営の立場として、現場主義と衝突することはよくある。これは現場に入って共に仕事をしてても、どんなに根拠や統計がしっかりした事例を提示したとしても、オムツメーカーが講義を行っても、「それはウチの現場では通用しない」「言いたいことは分かるが、ここのやり方というものがあるから」と言って話を終える介護職員は少なくない。

私はこのような反応を耳にするたびに「一体、何を恐れているのだろう?」と思ってしまう。

おそらくだが、やり方を変えるのが面倒とか、新しい考えに切り替えることが不快感とかあると思うが、一番は「自分たちが変わることが恐い」のだと思う。

しかし、だからと言っていつまでも安全区域(コンフォートゾーン)としての現状の現場主義のままでいいわけがない。

世の中が変化しているのに、ガラパコス化した現場を誇らしげにしても、外から見たときに「時代遅れだな」と思われて終わるだけだ。

少しずつでいいから、それぞれの現場をアップデートすることが、これからの介護業界の発展につながると思う。


ここまで読んでいただき、感謝。
途中で読むのをやめた方へも、感謝。

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