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なぜ給与デジタル払いだけがやり玉にあげられるのか

 今春から解禁予定と発表がされていた、給与のデジタルマネー払いについて、どうやら先送りとなりそうだ。

 既にPayPayをはじめとするQRコード決済事業者において、銀行口座からチャージされているにもかかわらず、なぜ給与のデジタルマネー支払いだけが規制の対象となるのか。既存の法律がある中で、網にかかることは仕方のないことではあるものの、解禁が先送りとなってしまうのはいかなる事情なのだろうか。

 利用者のニーズを最大限優先させて、早急に単なる規制ではなくルールの整備が求められるのではないだろうか。

 以前の記事でも取り上げましたが、給与の支払いについては労働基準法によって、その支払い方法が定められています。

労働基準法24条
①通貨で支払うこと(円、ドル、ユーロなど)
②直接労働者に支払うこと(親兄弟名義の口座ももちろんNG)
③全額を支払うこと(分割払いや、支払い滞納はNG)
④毎月1回以上支払うこと
⑤一定の期日を定めて支払うこと(多くの企業だと毎月25日とか26日ですね)

 「②直接労働者に支払うこと」とあるように、原則は現金で支払うことと定められていますが、労働基準法規則7条の2に「例外規定」ということで、労働者本人の同意があれば銀行口座等への振り込みも例外として認められています。 

 しかしこの例外規定が盛り込まれたのはなんと昭和22年のことのようです。昭和22年というと今から74年前です。つまりこの74年間、銀行はこの法律に守られ続け、労働者の給与が自分たちの口座へと振り込まれることで、新規の口座開設顧客を簡単に獲得してきたとも言えるでしょう。

 今回「マテ」がかかっているポイントとして、厚労省の資料を見る限り「資産の保全」と「セキュリティ」であることがわかる。他にも運用面についても議論されているようだが、正直些末なことだ。

 もちろん銀行には強い規制がかかっていて、資金保全の義務が課せられており、銀行が万一破綻した場合には、預金保険法に基づき、決済債務は全額保護されることとなっています。

 一方、PayPayはじめとするQRコード決済事業者は資金移動業者も、利用者から預かった資金と同額以上の額を供託等によって保全する義務を負っています。

 この銀行法(預金保険法)と資金決済法における、両者の保全義務の重みの違いが分からないのが正直なところではあるものの、すでにQRコード決済においては銀行口座からのチャージが認められており、多くのユーザが利用している実態がある。私もそのうちの一人だ。

 それなのに、給与の支払いに関してここまでやり玉にあげられて、先送りとなってしまうのかが謎である。資産の保全やセキュリティはもちろん重要な事ではあるが、それを議論するのはもっと以前の話なのではないだろうか。

 給与支払いの解禁となった途端、今さら蒸し返されるのは既得権者である銀行が騒いでいることは容易に想像できる。今回は給与全額ではなく、金額の上限が設けられることになるが、どう考えても今後は銀行の存在意義がより一層問われることとなる。

 なぜ給与は全額銀行口座に振り込まれなければならないのか?というユーザからの問いに対して、法律で定められているから、としか答えようがなくなる。

 キャッシュレスファーストな人からすれば、金利も0に等しい銀行口座にお金を置いておく意味はもはや無い。

 各○○Pay事業者は鼻息荒く、今回の解禁に向けて動いていただろうが、とんだ肩透かしとなってしまいそうだ。


▼給与のデジタル払いについての記事▼


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