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日英伊の次期戦闘機共同開発と防衛装備移転原則の緩和(後編)

前編はこちら はじめに前編の記事では、日英伊の次期戦闘機の共同開発の概要について解説した。今回の後編の記事では、今年3月26日の次期戦闘機の第三国への輸出の容認するという今回の政府による決定が一体どのような意味を持つのか、ということについて考察していく。 武器輸出三原則等による武器輸出の事実上の禁止実は、以前の日本政府は、国際紛争などを助長することを回避するという「平和国家」としての基本理念に基づき、武器や装備品一般の輸出について長年かなり慎重な立場をとってきた(参考:

    • 日本のサイバーセキュリティスタートアップ情勢

      はじめにサイバーセキュリティは、現代のデジタル社会において極めて重要な課題である。日本でも、経済のデジタル化が進む中でサイバー攻撃の脅威が増大しており、これに対応するための技術と対策が求められている。サイバー攻撃は、企業や政府機関に対する直接的な経済的被害のみならず、個人情報の漏洩や国家安全保障に対する重大なリスクを伴う。したがって、効果的なサイバーセキュリティ対策は、国や企業にとって不可欠である。 本記事では、日本のサイバーセキュリティスタートアップの現状について考察する

      • 日英伊の次期戦闘機共同開発と防衛装備移転原則の緩和(前編)

        はじめに(出典元:NHKニュース、2024年3月26日付) 政府は、本年3月26日に行われた閣議で、イギリス・イタリアと共同開発を進めている次期戦闘機について、第三国への輸出を容認することを決定した。実際の輸出にあたっては、無条件に容認するというわけではなく、与党で協議を行うようにするため個別の案件ごとに閣議で決定するほか、戦闘が行われている国には輸出しないなどとしている。 実は、今回の政府が見せた動きは、一部のジャーナリストや専門家からは「平和主義政策からの転換」(BB

        • セキュリティクリアランス法案の狙いとポイント

          はじめにセキュリティークリアランス制度 創設に向けた法案 閣議決定(2024年2月27日、NHK) 「セキュリティークリアランス」法案 衆議院本会議で可決(2024年4月17日、NHK) 「セキュリティ・クリアランス法案」が参院で審議入り 保全情報の範囲など懸念点の説明を野党側は求める(2024年4月17日、TBS NEWS DIG) 「セキュリティークリアランス」法律 参院本会議で可決 成立(2024年5月10日、NHK、以下の動画参照) https://www3

        日英伊の次期戦闘機共同開発と防衛装備移転原則の緩和(後編)

          サイバー攻撃の実行プロセスと攻撃種類

          はじめに現代社会において、サイバーセキュリティは企業や政府機関、個人にとって無視できない重要な課題である。特にサイバー攻撃は、その手法の進化と共に、我々の日常生活や経済活動に甚大な影響を与える可能性がある。本稿では、サイバー攻撃の実態と分類に焦点を当て、それらがどのようにして我々のデジタル世界を脅かしているのかを紹介する。 サイバー攻撃は多岐にわたり、その手法も常に変化している。攻撃者は新たな技術を駆使して防御機構を突破しようとするため、防御側もまた技術の進化に合わせて対

          サイバー攻撃の実行プロセスと攻撃種類

          イスラエルを取り巻く中東情勢

          はじめに4月13日、イランは、4月1日の在シリアイラン大使館領事部への攻撃に対する報復として、「トゥルー・プロミス作戦」を実行した。24時間以内に、計300以上のドローンとミサイルが、イスラエル本土を目掛け発射された。イスラエル軍の発表によれば、イランからイスラエル目掛けて発射された飛翔体の99%が迎撃され、イスラエル本土への被害はわずかなものにとどまったという。 4月19日、イスラエルによるものと見られる爆発がイランで起こったという報道があったものの、幸いにも、これ以降こ

          イスラエルを取り巻く中東情勢

          米国におけるDefense Techのスタートアップ投資トレンド

          はじめに近年、米国におけるDefense Techのスタートアップへの投資は顕著な増加を見せている。これらのスタートアップは、革新的な技術とビジネスモデルを通じて、従来の防衛産業に新たな動きをもたらしている。本稿では、その背景と具体的な事例を紹介し、将来の展望についても考察する。 Defense Techに対する投資の増加は、特にAI、ロボティクス、サイバーセキュリティなどの分野で顕著だ。これらの技術は、ミッションの自動化や効率化を促進し、軍事作戦の安全性を向上させる可能性

          米国におけるDefense Techのスタートアップ投資トレンド

          イスラエルにおけるSecurity / Defense Techのスタートアップ投資トレンド

          イスラエルのSecurity/Defense Tech分野におけるスタートアップ投資のトレンドは、近年、顕著な発展を遂げている。特に、ソフトウェアベースの防衛システムへの関心が高まり、これがさらに加速されると見られている。AI、自律兵器、衛星技術、再利用可能なロケット、サイバーウォーフェアなどの技術が新しい軍事能力として注目されている。本稿では、このようなイスラエルの投資トレンドを広く紹介していく。 イスラエルのDefense Techにおける投資トレンド イスラエルの

          イスラエルにおけるSecurity / Defense Techのスタートアップ投資トレンド

          イスラエルのDDR&Dとは

          はじめに以前の記事で紹介された防衛イノベーション技術研究所(仮称)。 防衛のための研究開発を中心に行う防衛省所属の研究機関であるが、似たような組織がイスラエルにも存在することはご存じだろうか。中東情勢が混迷を極めていることは連日の報道の通りであるが、そのような状況の中で「国防のための技術開発」が大きな役割を果たしている例をそこに見ることができる。 今回の記事では、イスラエルの技術力を支えている「イスラエル国防研究開発局(Directorate of Defense Rese

          イスラエルのDDR&Dとは

          防衛イノベーション技術研究所の基となったDARPAとは

          はじめに以前の記事で紹介した、「防衛イノベーション技術研究所(仮称)」。防衛省の外局である防衛装備庁の下部組織として2024年秋にも発足する。 先端技術に裏付けられた「新しい戦い方」が顕在化が顕在化している中、防衛装備品の開発を強化し、将来の技術的優越を確保できる機能・技術の創出することが目的だ。 この「防衛のための研究開発」というコンセプトは、日本独自の全く新しい取り組みというわけではない。モデルとなった取り組みがアメリカにすでに存在する。 今回の記事では、日本が防衛イノ

          防衛イノベーション技術研究所の基となったDARPAとは

          【イベントレポート】「イスラエルのスタートアップの現状と日本企業の取り組み〜戦時下での協業・投資・M&Aの可能性〜」

          はじめに先週4/11(木)、株式会社K Squared主催、イスラエル大使館、TMI法律事務所、Frontline Initiative後援の下、「イスラエルのスタートアップの現状と日本企業の取り組み〜戦時下での協業・投資・M&Aの可能性〜」が開催されました。およそ150名の方々にお申し込みいただき、盛況のうちに終えることができました。 当イベントでは、イスラエルに強く関係する政府関係者およびベンチャーキャピタル、日本企業、業界専門家の方々をお迎えし、現在の環境下における

          【イベントレポート】「イスラエルのスタートアップの現状と日本企業の取り組み〜戦時下での協業・投資・M&Aの可能性〜」

          防衛装備研究の新組織「防衛イノベーション技術研究所」とは

          はじめに令和6年度、防衛省の外局である防衛装備庁が「防衛イノベーション技術研究所(仮称)」を創設する予定だ。 (参考:2月24日読売新聞オンライン、2月26日日本経済新聞) 防衛装備品の開発を強化し、将来の技術的優越を確保できる機能・技術の創出することが目的である。官民双方から幅広い人材を登用しつつ、早ければ今秋にも100人態勢で発足する。 今回の記事では、この「防衛イノベーション技術研究所(仮称)」の創設に至った経緯とその具体的な内容について解説する。そして結びとして、新

          防衛装備研究の新組織「防衛イノベーション技術研究所」とは

          Defense Tech界のGAFAM、SHARPEを読み解く

          はじめに本記事では「SHARPE」と呼ばれるDefense Techにおいてユニコーン企業となっている6つのスタートアップについて紹介する。各社の事業内容の実態を細かく見ていきたい。 SHARPEが設立した背景2022年の段階で、国防分野における企業において、過去10年間の資金調達において評価額が10億ドルをこえた会社が6社になった。これにより、今回取り上げる「SHARPE」への注目度は大きくなり、現在のDefense Tech領域の盛り上がりを牽引している。 米国のスタ

          Defense Tech界のGAFAM、SHARPEを読み解く

          GAFAMがなぜサイバーセキュリティに投資するのか

          はじめに本記事では、GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)のサイバーセキュリティへの投資の裏にある動機や、その実例などをもとに、サイバーセキュリティへの投資が加熱している背景について考察していく。 GAFAMはサイバーセキュリティに多く投資している 2021年、GAFAMはサイバーセキュリティ関連企業23社への資金調達や買収に対し、合わせて24億ドルを費やし、CB Insightsが集計したデータによると、約18億ドル

          GAFAMがなぜサイバーセキュリティに投資するのか

          ヒト、モノ、カネ、情報を守り抜くための技術「Security Tech」とは

          はじめに弊社K SquaredではSecurity Techにおけるコンサルティングおよびリサーチサービスを提供している。Security Techと聞いた際に真っ先に思い浮かべられるのはサイバーセキュリティかもしれないが、本来はさらに広義に定義される技術領域である。そこで、今記事は弊社におけるSecurity Techの定義を詳らかにし、当該領域に取り組む方々に周知いただくことが目的である。 Security Techとは我々はSecurity Techを「個人、企業、

          ヒト、モノ、カネ、情報を守り抜くための技術「Security Tech」とは

          民間のセキュリティインシデント事例〜モビリティ編〜

          はじめに現代社会においてモビリティサービスは、交通やロジスティクスの利便性を高める重要な役割を果たしている。しかし、その利便性の裏側では、サイバーセキュリティの脅威は増大している。特に、個人情報の取り扱いや車両の遠隔操作など、技術的な進化により新たなリスクは生まれている。以下では、モビリティセクターにおける顕著なセキュリティインシデントの事例を挙げ、その影響と対策を考察する。 モビリティセクターにおけるセキュリティインシデント事例トヨタモビリティサービス(2022年)

          民間のセキュリティインシデント事例〜モビリティ編〜