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社会人のためのJASSO 大学院留学 給付ガイド

前回の投稿に続き、今回はややプラクティカルなトピックであるJASSOの給付型奨学金の応募書類および面接に関しての情報を置いておきたいと思います。

前提として僕は現在、5年弱の社会人(フルタイム正規就業)を経て、フィンランドのアールト大学にてデザイン学の修士課程に在籍しています。したがって今回はその観点から、現在ご支援をいただいている JASSO 海外留学支援制度(大学院学位取得型)のテクニカルな部分を含めた内容となっています。やや長いので必要な部分だけ読むことをおすすめします。

また細かなことはすっ飛ばして、実際の提出アプリケーションなどを見たい!という方は、最後のセクション「実際の応募書類+面接について」にあります。


「大学取りまとめ応募」「個人応募」

JASSO 留学給付奨学金の応募は、原則的に既卒者であっても、最終学歴の大学を通した応募がメインフローとして想定されています。しかし場合によっては卒業大学が「既卒者は個人応募で」ということがよくあり、僕も卒業大学の学事に確認したところそのように対応せよとのことでした。

個人応募では書類の不備チェックなども自ら全て行わなければいけません。そこでまずは画像のように提出が必要な書類の全体像を掴むために、その各書類の内容・指定ファイル名・書類フォーマット・注意事項などを洗い出しました。

提出書類一覧のイメージ

事実としてJASSOの留学給付型の奨学金の応募手続きは、他の奨学金制度にくらべてもかなり複雑で、言葉遣いがいわゆるお役所的です。とはいえ社会人が応募可能な貴重な給付奨学金制度ですので、不備のないよう募集要項をよく読み自己責任で行うことが必要です。都度、募集要項を読みながら一つづつ書類を作ると結果として余計に準備時間がかかるだけでなく、ミスが起きるリスクがあるため、この一覧化はパッと集中して終わらせることをおすすめします

[1] 推薦状

これは個人的な感触ですが、この制度における2通の推薦状はそれなりに重要なものな気がしています。なぜなら社会人であっても、2名の推薦者のうち最低でも1名は主に指導を受けた大学教員の方に提出をいただく必要があるという規定があるからです。JASSOとしてはこの推薦状を通して、主に学術専門家の立場から、応募者の妥当性・研究価値を検証したいという風に見受けられます。

あくまでこれは個人の憶測ですが、JASSOは文科省と極めて強い結びつきがあります。従って、国としての支援する"学術”活動はきちんと、既存の学術研究者によって精査されるべきという力学があっても不思議ではありません

従ってベストな推薦状を目指すならば、依頼をする大学教員の方が、自分がこれから専攻しようとする分野において、きちんと博士号を取得した正真正銘の専門家であると良いと思います。

私の場合は、1通目はいわゆる学部時代に所属した研究室(いわゆるゼミ?)の教授に、もう1通はメディア露出などもある職場の上司に、それぞれ推薦状を作成をいただきました。この場をお借りして改めて御礼申し上げます。

なお「学術における専門家」と「産業における専門家」を掛け合わした推薦状を作れるのは社会人ならではのアプローチです。これがどれだけ有効かはわかりませんが、学術的にも、産業的にも価値がある応募者だということが伝わると良いのではないかと思います。

[2] 願書 「留学先大学の選定理由」

この制度の応募書類(少なくとも23年度)では、実は「なぜその留学先なのか」という理由説明が求められる場所が厳密にいうと願書にしかありません。従って願書における「留学先大学及び在籍コースの概要、選択理由」では短文ながら十分な説明が必要です。

僕がここで意識したのは「なぜその大学なのか」だけでなく「なぜその国なのか」という点も織り交ぜて書くようにしました。また主観的な理由だけなく、いかにその大学が自身の専攻分野における先端地なのかを客観的な事実に基づき書き上げました。

留学国の社会や産業が、自身の研究分野と強く結びつき、先端的な取り組みをしているかを見定めるためには、私見ですが一定の社会経験が必要だと思われます。その点、こうした社会や産業に対する選球眼は社会人経験の力の見せ所と言えるかもしれません。

[3] 業績等について

ここは概ね履歴書的な書きっぷりですが、特段学会や大学表彰などでの客観評価が可能な業績がない僕の場合やや苦労しました。ここは無難に履歴書的な時系列を書きつつ、学部時代の学業活動・学生時の課外活動・職場での業務内容について、成績や成果を加えて仕上げました。もし主に学術的な業績がある場合は、大いにアピールするといいかもしれません。

[4] 研究計画及び修了後の進路計画書

ここでの僕のとった構成はまず上段に箇条書きで「超ハイレベルな研究概要」「修士1年次の計画」「修士2年次の計画」「修了後進路」を書き、その下にまとまった文章でそれからの詳細を書くようにしました。

特に僕の場合は「デザイン学における参加型デザイン」という一般にあまりピンとこなそうな専攻・研究分野だったために、まずは分野としての学術的な位置付けや社会における知見活用の現状を前提情報として1段落目に記載。

そして2段落目では、その分野における現状研究の限界性を指摘し、研究課題(テーマ)を明確に提示するようにしました。

その上で3段落目では、そのテーマにどのように取り組むのかをハイレベルな情報粒度で触れ、4段落目ではそれを修士1年次・2年次にブレイクダウンし、具体的に参加を想定している授業やプロジェクトを書き連ねました。

最後の5段落目では、そうしたテーマへの取り組みを通じて得たものをどのように将来の進路に活かすかを具体的に示しています。

ここでのポイントはいくつかあると思いますが、まずは論理としての一貫性です。何を・どのように探求し、それをどう活かすのかを非常に単純な論理構成で書くことを意識しました。

二つ目のポイントは学術的な背景の理解力を示すことです。これからその分野での探究をするにあたって、どんな既往研究があるのか、そしてそれらの研究成果の限界性はなんなのか、を書くようにしました。とはいえフォーマットのサイズに限りがあるため、学術的に厳密な研究計画書のように書くのは避ける結果となりました。

最後の3つ目のポイントは、留学先の大学院での授業やカリキュラム内容にできるだけ具体的に言及することです。このために僕の場合は、留学先の大学のシラバスを可能な範囲で閲覧し、その内容を盛り込みました。

なぜこれが重要なのかというと、おそらく多くの応募者が上限の2校を願書に書く可能性があるためです(僕は1校のみでした)。本当にどちらの大学院の内容も自身の研究と親和性があるのか、本当に行きたいという前提でどちらの大学院を見定めているのか、ということをきちんと伝えるためにも、より具体的な学修内容を書くべきなのではと考えています。

[5] 日本社会への貢献

このセクションがおそらく最も社会人経験を活かすべきものと言えるかもしれません。なぜならすでになんらかの分野での実務経験は、学部からストレートで海外大学院(修士)を目指す人との差別化につながりやすいためです。

そこでまず僕は、自身の専攻分野が現状の日本社会でのどのような狙いをもって活用されているかを客観的に示しつつ、自身の実務経験から交えながら、その知見活用における課題、自身の学修がそれを解決する可能性に言及しました。

ここでのポイントは“どのような狙いをもって”その専門知見が(日本)社会で活用されているかという点です。その“狙い”は裏を返せば、日本政府や日本社会が期待する貢献です。そして自らの実務経験は、そうした貢献を生み出すために実務側にいたリアリティになるため、その両者をうまく接合されらるとより納得感のある書きっぷり仕上がると考えました。

またここでの「日本社会」とは、可能性として「日本の学術界」を含むことになります。従って僕の場合は、文章を2つに分け、自身の専攻分野が現在の日本でどのように教育・研究されているのか、その課題は何かを言及し、そこへの貢献も示唆するように書き上げました。

繰り返しになりますが、ここでのポイントは“日本社会”への貢献です。海外に正規留学をする場合、日本という1国を超えた、地球市民的な視点を持ち合わせているかもしれませんが、そこまで壮大な貢献を書き連ねると、結果として聞かれている質問に答えられていない文章に仕上がるリスクがあるかもしれません。

実際の応募書類 + 面接について

最終的に応募時に使用した書類のサンプル(一部墨塗りありですが、実際に提出したものと限りなく同一)を掲載します。とはいえややパーソナルな情報へのアクセスとなるため、一定のハードルとして有料にさせてもらっています。どうかご理解ください。

また、書類審査通過後の面接審査についても以下に記載しておきます。

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