2024明治安田J1リーグ第1節 柏vs京都



試合結果

2024明治安田J1リーグ 第1節
@三協フロンテアスタジアム

柏レイソル 1-1 京都サンガF.C.

【得点者】
マテウス・サヴィオ (77分・柏)
安齋悠人(90+4分・京都)


戦評

雨の開幕戦ということもあり、90分を通して球際の競り合いが激しい試合となった。
互いにロングボールを蹴ってはこぼれ球を回収し攻撃に繋げるという、スピーディで落ち着きのない展開だった。
長所を生かすだけでなく、雨でリスクを負いたくないという部分も作用しただろう。

両者とも最終ラインが相手の攻撃をシャットアウトしたこともあり、前半アディショナルタイムのクソンユンのビッグセーブを除けば、特に大きなチャンスとはならなかった。

後半に入ると柏が最終ラインでのビルドアップをしつつロングボールのターゲットを細谷からマテウスサヴィオに変更し攻勢を強める。
開始15分ほどは柏のペースで進んだが、京都もそれに対応できるようになり、高い位置で奪ってカウンターを繰り出すシーンが増えた。
 
拮抗したまま試合が進んだが、京都がフリーキックで長いボールを放り込んだあとのカウンターから、柏のマテウスサヴィオがゴラッソ。追い込まれた京都は空中戦に強い山﨑やドリブルが持ち味のルーキー安齋を投入し攻勢に出る。
その安齋が得たフリーキックで、途中出場の福岡→原とビッグチャンスを作り、最後はこぼれ球を安齋が押し込んで、なんとか勝ち点1を持ち帰った。

雑感

京都は右サイドの豊川と福田に高い位置を取らせてかき回し、左サイドでは鈴木冬一が攻守でバランスをとりつつ原のチャンスメイクを活かしたいという具合だった。
一方柏は、原を抑えつつマテウスサヴィオ、ジエゴの左サイドを生かすべく、京都右SB福田の裏を狙いとしていた。
ここから分かるように、京都左サイドではクローズド、右サイドではオープンな展開になった。

柏にとっての誤算は京都の最終ラインの堅さだろう。
細谷が制空権を得れず、マテウスサヴィオも福田相手に苦労していた。また裏のスペースもアピアタウィアの好走に阻まれていた。

京都はサイドの豊川だけでなく中央のマルコも最終ラインの裏を取る意識が非常に高く、鋭いカウンターを演出していた。
大きなチャンスこそ少なかったものの柏を苦しめたのはたしかだ。

後半に入り、柏はボランチの高嶺を中心に後ろでパスを繋ぎ、ロングボールに備える京都(主に中盤3枚)を前に引きだしてから前線に蹴りこんできた。
ターゲットは細谷から左サイドのマテウスサヴィオに変更。
福田を引き出して裏のスペースを作りつつボールを収めるプレーを披露していた。スペースにはSBのジエゴが抜け出し、逆サイド(柏右サイド)ではマテウスサヴィオのサイドチェンジを受ける準備をしていた。
左右に揺さぶりをかけられたことで京都が明確に押し込まれた。

京都が推し返せなかった要因として、両ウイングが守備に奔走させられたことが挙げられる。
特に豊川はジエゴについて最終ラインまで下がることも多く、マテウスサヴィオをマークする福田と立ち位置が入れ替わることもしばしばであった。
またマルコが明確なターゲットでない以上、ポストプレーで時間を作れず押し上げるタイミングを失っていた。

しかし60分を過ぎたあたりから、京都の中盤3枚のプレスとの連動やロングボールに備えたポジション修正が効き始め、柏の攻撃を食い止めるどころか高い位置で奪えるシーンも増えていた。

実力が拮抗していることは間違いないが、(恐らくピッチ外からの)修正力と対応力はJ1に上がって磨かれてるのだろうと思う。

そうした中で幾つもの稚拙なミスから失点を招いたことは反省材料だ。
また失点シーンやPKを与えたシーンでも、やはりサイドに揺さぶられているので、そこの守備も課題のひとつになりうる。

失点によって山﨑の投入を余儀なくされたことで配置が442になったのは、スクランブル的な意味合いが強いと思われる。

過去にも同様の配置になったことは何度かあるが、いずれにしても交代枠と選手の特長を組み合わせた結果起こることであり、442にしたからといってなにか特別なことを準備してるわけではないからだ。


結局試合を振り出しに戻したのは安齋や福岡の投入後で、その際の配置は343である。
サイドに突破力のある選手、前線に高さと決定機のある選手を置くこの手法は、昨季でいえばパトリックが途中から出てきた時とほぼ同じで、攻撃的なメッセージ性が強いものだ。



マイナーチェンジ

ボールを奪う為の守備、手数をかけない素早い攻撃、球際の激しさなどは曺貴裁監督就任後、曺貴裁京都のスタイルとして定着したと言えよう。
その中で、毎年ほんの少しずつ変化をつけている様子はこの開幕戦からも伺えた。

一昨年、昨年と試合の感想をまともな文章として残していないので、あくまで私自身のTwitterや他者の京都サンガ試合レビューを参考に、今年における変化(これから起こりうる変化)を書いていこうと思う。

①攻撃時における両SBの高さの違い

右サイドに福田、左サイドに鈴木冬一が起用された。
福田は極力高い位置を取り、ほとんどウイングのような役割を任されていた。
左の鈴木冬一は、2CBとボールに絡みながら徐々にポジションを上げ、原とのコンビネーションを模索していた。
また鈴木冬一が上がれば福田はやや自重するなど、SBを同時に上げすぎないことで、カウンターへのリスクを減らす試みが昨季より明確になったであろう。

②裏抜けの多さ

これは3トップの中央に山﨑を置くかマルコを置くかで変わってきそうな部分もある。
昨季は主に豊川の役割であったが、開幕戦では特に中央のマルコに目がいった。原や平賀も含め、全体として裏を取る意識は高まっている。

補足として、クロスにおいても開幕戦ではアーリークロス(早い段階でクロスを上げること)の選択が多かった。
裏抜けの多さとあわせて鑑みるに、京都の弱点を克服するためではないかと思われる。

京都はパスを回してじっくり攻めるのができない。
できないことをするのではなく、奪ったら相手の陣形が整う前に最短距離を貫けばいいというのだ。金子が再三縦パスを狙い、中央でマルコや豊川が動き出していたのがその最たる例である。
アーリークロスも、ドリブルで手をこまねいて相手が帰陣するくらいなら、さっさと放り込んでセカンドボールでさらに波状攻撃を仕掛けようという意図が見える。

これが、山﨑が入れば空中戦を仕掛けられるので、昨季のような戦いを選択することもでき、人によって使い分けれるので少しばかり幅は広がったのではないか。

③守備時のSBのポジショニング

京都のディフェンスはとにかく人を見ること。
自分がマークすべき選手を確実にとらえ、ボールが入ったら奪いに行く。
そのプレー原則に縛られるあまり、SBとCBの距離が開き、スペースを与えてピンチを招くシーンは珍しくなかった。
開幕戦ではSBはCBとの距離を保ってスペースを消しながら、サイドにボールが入れば相手と対峙するようになっていた。

サイドから多少危ないシーンは作られたものの、ワンタッチツータッチで崩されていた昨季のことを思えば、この修正は守備の改善に繋がりそうだ。

今後は最終ラインのチャレンジアンドカバーや、SBが相手と間合いを詰めるタイミングなどがさらに重要になってきそうだ。


最後に

開幕戦たった1試合ではわからないことも多い。
またより上位相手に通用するのかもわからない。

ただ昨季のように何かを模索してるというよりは、スタイルは変わらないまま、現有戦力でよりJ1にアジャストする方向に向いている。
メンバーが入れ替わる中でのマイナーチェンジ。
属人的であるが故に人が変わればサッカーの質も変わるのが曺貴裁サッカーであるが、チームとして今後さらにどう改善されるかに期待したい。


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