見出し画像

J2 10年生 新スタジアムでの挑戦〜来るJ2開幕戦に向けて〜 後編

大変お待たせいたしました。三部作完結編は2020シーズン展望を書いていきたいと思います。

↓前編はこちら↓

↓中編はこちら↓

 

 

はじめに

2月9日(日)にサンガスタジアムbyKYOCERAのこけら落としが行われました。昨季J1で5位、リーグ最少失点相手に2-3での敗戦は悔しさと不安と少しばかりの期待を抱かせる内容でした。

※私はマッチレビューを書いておりませんので、試合の詳細を知りたい方は下のブログをぜひお読みください。

Akiさん( Twitter:@NFNL_CB )

とめさん( Twitter:@tome_beta )

私が書かなかった理由は単にめんどくさかったからです。そうこうしているうちにセレッソ陣営・サンガ陣営から良質なレビューが投稿されており、本来私が書こうと思っていたことと内容がほぼ同じだったため書くのはやめました。

抑えるべきポイントが100%共通する試合でしたので、ならばこれをふまえてシーズンの展望に繋げたいと思ったわけであります。

 

第1章 継続

2020年のサンガの基本フォーメーションは4123と3421を併用。

4123

3421

※2月5日制作時点のもの

選手の並び自体は昨季と大差なさそうです。

昨季は3421の完成度が決して高くなく、オプションとしてあまり有効ではありませんでした。今季はその完成度を上げることで、相手に合わせて3バックと4バックを使い分けていきたいと考えているようです。

 

⑴チームスタイル

丁寧にパスを繋いでボールを保持し、相手を動かしてギャップを突いていく昨季同様のサッカーが基本路線となりそうです。

仙頭や小屋松といった独力で局面を変えてしまう選手が抜けたことで、シュートに至る崩しの局面では『個の力に依存しずぎず、3,4人のグループで崩していくサッカー』を目指すものと思われます。

補強理念と曾根田、中川、ウタカ、野田ら新加入選手の顔ぶれがそれを物語っています。

  
 

⑵實好監督が直面する問題

實好体制は
・前体制からの継続を基本路線にしていること
・前体制からコーチ陣としてチームにいること
・昨季サポーターの目が飛躍的肥えたこと

で期待値がかなり高くなっています。

その上で
・キャンプでJ1ガンバ大阪と練習試合を行い、昨季の課題であるカウンターから大量失点を喫したこと
・こけら落としでJ1セレッソ大阪と対戦し、似たような形から何度もピンチを迎えたこと

で既に實好監督の手腕を疑問視する声もチラホラ出始めています。

こうしたファンの期待、不安を超えていくことが求められており、また新スタジアム元年でJ1昇格を掲げるクラブの意向もあるため、超えるべきハードルはかなり高くなっています。

 

 

第2章 朗報

⑴MF黒木 聖仁(くろぎ まさと)の加入が決定

中盤と最終ラインの真ん中でプレーできる選手で、ボール奪取能力とビルドアップ能力を兼ね備えた守備的ボランチです。身長も180㎝あり、空中戦を苦にしません。
4123のIH、3421のDHをメインに、CBやHVでも計算ができるので大きい戦力となりそうです。

⑵懸念ポイントの解消

昨季は中盤に守備能力の高い選手がおらず

・カウンターや押し込まれた時に中盤で相手を止めきれなかった
・4123のウィークポイントであるアンカー周りのスペースのケアができなかった
・3バックを採用した時に中盤(DH2枚)の耐久性が低かった

といった課題があり、これを解消するためにボール奪取やカバーリングができる守備的なボランチを必要としていました。

黒木聖仁はこれらを解消できるだけの能力がある選手なので期待がかかるとともに、チームの戦術の整備も行いやすくなるでしょう。

※今後は黒木恭平との混同を避けるため、黒木゙もしくは黒木聖と表記させていただきます

 

第3章 変化

※ここでの話はあまりポジティブな内容ではありません

⑴ボール保持でのポジショニング

新体制になってから、最も気になったのがポジショニングについてです。 

サイドの選手はなぜ幅をとるのか、1トップはなぜ奥行きを作るのか、なぜ5レーン理論に基づいて人を配置するのか…といったポジショナルプレーの原則が形骸化されているように感じました。

今季トレーニングマッチ等で多く採用されている3421を例にとってみます。

 

⑵3421における基本ポジショニングと役割について

① 最終ラインでは(最低)相手+1の人数でパスを回します。安全かつ確実に相手のプレスをかわして前にボールを送ためです。
主にCBやHVがこの役割を担います。DHが下がってきて参加することもあります。

※前線にボールを送ることをビルドアップと呼びます。京都の場合はここでショートパスを多用しますが、ロングパスを用いて前線にボールを送ることもビルドアップです。

 

② 相手のFWとMFのライン間では前線にボールを供給するのがメインとなります。
後ろから前へのビルドアップ、左から右(右から左)へのサイドチェンジなど多くの場面でここを経由するため、庄司やモッタなどパスセンスに長けた選手が配置されます。

新加入の黒木゙もこのポジションです。

③ サイドでは3バックの場合はWB、4バックの場合はWGが相手を引き付けます。中央では1トップが相手のCBを引き付けます。
こうすることで相手を縦や横に間延びさせSH(4バックではIH)の所にスペースを発生させ、そこを使っていくのが狙いです。

いわゆるハーフスペースと呼ばれるところで、ここからだとゴールのある中央へ侵入することも可能ですし、サイドに持っていってクロスを上げることも可能になります。

 

京都はこの基本的な立ち位置を踏まえてプレーしています。

⑶セレッソ戦で見えた問題

パスを繋ぐとき、基本的に3人で三角形を作るのが良いとされています。常にパスコースが2つありパスを繋ぎやすくなるからです。
最近では4人でひし形を作るのが良いとされています。
斜めだけでなく縦へのパスコースもできるため、相手にとって非常に守りにくくなるからです。

これらを踏まえた上で、こけら落としのセレッソ戦で何度か見られたビルドアップを見てみましょう。

上の基本ポジショニングを基に、中盤や前線の選手が前後左右して三角形や菱形を作ろうとします。

中央の後ろではHV安藤、CBバイス、HV森脇、DH庄司でひし形になっています。これが京都のビルドアップの基本形です。
左サイドではHV安藤、DHモッタ、WB黒木、SH宮吉の4人でひし形を作れています。

右サイドを見てみると、モッタが左、庄司が中央にいることが多いためHV森脇、WB飯田、SH中川の3人で三角形しか作れていません。
この時にプレッシャーを受けてなかなかボールを前に進められないシーンが多く見られました。

この時にCFウタカがサイドに流れてくるとひし形ができます。実際にそれでボールの前進に成功していることがありました。ここまではまだよかったのです。

 

問題は、決まった配置にこだわるあまり、誰かがひとつポジションを変えたときに連動したポジショニングの変化を起こせなかったことです。

例えばCFがサイドに流れたとしましょう。

そうすると中央が空きます。順番に空いたスペースに人を移動させることで常にパスコースを生み出せます。

またサイドに流れるCFにマークを付きにくくすることができます。仮にマークがついてきたとしても、相手を動かせているのでスペースが生まれます。そのスペースを順に使っていければ自然と崩すことができます。

 

 

セレッソ相手で難しかったとはいえ、意図したポジションチェンジはあまり見られませんでした。時折ウタカや中川や宮吉が見せていましたが、おそらくは個々の判断によるものでしょう。

基本的な立ち位置は押さえてるのですが、それを生かしたボールの前進や立ち位置を応用させることができていません。

 

ポジショニングが手段の目的化にならないために、またピッチ上で柔軟な対応・判断を行うために、『どこに・どんな優位性を生み出すか』というチームの原理原則を再確認して共有する必要があると思います。

 

『3バックでも4バックでもやることは変わらない』という言葉をよく耳にしますが、これはストロングポイントが明確になっておりそのために必要なポジショニングができて初めていえることなのです。

セレッソ戦で見せた4バックでの戦い方について今回は割愛しますが、こちらのほうが幾分かポジショナルプレーの原則に沿った可変システムだと思います。

※「はじめに」に載せたとめさんのマッチレビューでは触れられていますのでそちらをご参照ください

 

 

第4章 展望

⑴チームの完成度

4バックの方は昨季とは少し違った『型』が見れることでしょう。一方3バックでは現状、選手の個の力に依存する戦い方にしかなっていません。これといった『型』がなく、早い段階でそれを作れなければ併用は厳しいでしょう。

いずれにせよ戦術の浸透度は高いとは言えず、そもそもの戦術も怪しい部分がちらほら残っています。

※『型』というのはビルドアップやポジションチェンジ、アタッキングサードでの崩しなどあるパターンに沿ってシステマチックに実行される戦術を意味します。

適当な語彙が見当たらなかったのと、私の言語化能力が足りずかなり曖昧なワードチョイスになってしまい申し訳ありません。

トレーニングマッチ(プレシーズンマッチ含む)では3バックの採用が多いのですが、完成度を高めるためなのか、3バックをメインに戦っていくつもりなのかわかりかねます。

選手編成を見る限り、4123では主力メンバーがかなり限られるため、組み合わせが比較的柔軟な3421を使いたいのかもしれません。

 

一つ言えるのは「昨季とは全く別のチームと考えたほうがよい」ということです。

 

 

⑵J2での立ち位置

主力メンバーだけを見ると最低でもPO圏内(6位以上)になってきます。

控え選手も含めるとJ2中位か少し上くらい、予算規模相応といったところでしょう。

しかし戦術の浸透度で言えば昨季とは別チームになったも同然ですので未知数な部分が多いです。實好監督自身は昨季からコーチとしてチームに携わっているので、外から新監督を招へいするよりは計算が立ちやすいでしょう。

ここから先の戦術的な上積み、実践での采配は計れません。なにしろこの数年でよい例と悪い例があったのですから。

 

 

ちなみに私は予防線を張りたいので悲観的に捉えています。これに関しては皆さん自由です。

総合してどれくらい行けるかというと

躍進してPO圏内(3位)
かなりつまずいて中位よりやや下(~14位)

と見ています。昨季と同じくらいに収まる(8位)とは思います。
理由は以下の通りです。

・J1クラスのウタカという一人で何とかできる選手がいる
・J2にセレッソほどのハイクオリティなチームがない
・ガンバの宇佐美ほど突出した個がない
・セレッソ戦での541リトリート守備を見る限り弱点はあるものの大崩れはしなさそう

ほかのチーム事情があまりわかりませんし、大ブレイクする選手や超大当たりの外国籍選手は特定できません。
しかし昨季J2得点ランキング上位がほとんど抜けたことや監督の交代が多いことで本命不在の大混戦が予想されます。

苦しみながらもしぶとく勝ち点を拾うシーズンになると思います。

 

 

さいごに

当初より書きたい内容が変わったので、書ききれなかったことについては気が向いたらそのうち書きます。4バックの可変システムや541の守備についてです。

内容を変更してポジショニングについて触れましたが、これといった正解のない曖昧なものですし、それをうまく書けてないのは重々承知です。ただ最低限のことはありますし、「今年はその最低限が怪しいよ」ということをなんとなく頭に入れてもらえればと思います。

三部にわたって悲観的に書きましたが、J1優勝を掲げるならこれくらい必要なのでは?という個人的な意見なのでそこもご了承ください。

全体的に予防線張りまくりになってしまいましたが、シーズン展望なんてこんなもんです。「知らんけど」の精神です(笑)

シーズン開幕すれば、極力試合ごとにマッチレビューも書いていきますのでお楽しみに。

長くなりましたが最後までお読みいただきありがとうございました!

三部作、これにて完結。

~完~

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?