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ロリィタ短歌朗読ライブ「衣裳箪笥のアリス」

短歌:川野芽生 脚色:犬間洗 演出:嬉野ゆう(PSYCHOSIS)
(会場/御茶ノ水RITTOR BASE)

歌壇賞、現代歌人協会賞受賞の歌人で、芥川賞候補作家でもある川野によるロリィタ短歌の朗読ライブ。
少女をテーマにした内容で、ウラジミール・ナボコフの『ロリータ』から題を採った歌も朗読される。
ロリィタ服を見に纏った女優たちによる朗読ライブ、というコンセプトだけでは終わらない。
垢ぬけない一人の少女とロリィタたちの交流の物語が紡がれていく。彼女たちの心情は短歌で描かれて物語は無言劇で進行される。
垢ぬけないと書きつつもテンプレートな姿ではない。その凛とした佇まいは原石の輝きがあって、終盤にロリィタの手ほどきに導かれ、立派なロリィタになった彼女は見送られ、部屋のドア(会場の出入り口)を開けて本当の意味で下界へ飛び立つ。
嬉野ゆう(PSYCHOSIS)の演出により彼女たちのコミュニケーションが、幻想的にしかし、どこか牧歌的な雰囲気も漂わせ描かれる。
その描写の中で流れる音楽は硬めのギターが鳴り響く。かつて読んだロリィタというのは武装であるというのは私が好きな解釈だ。自分の美をまとう鎧、ロリィタの強さを表す音として、それと同時に複雑な心情を表す音としてギターは効果的だ。
幻想的な世界で短歌が紡がれる。

今回は朗読ライブだが、音楽でも演劇を組み込み物語としてのライブを上演する例は多い(七尾旅人『兵士A』、三浦大知『"完全独演"公演「球体」』)など。
公社は、出自の一つがポエトリーリーディングであり詩や短歌の朗読パフォーマンスで優れたものを数多く見てきた。しかし、それが世間一般に広がるまでは時間がかかると思う。
それらは、例えばオープンマイクやゲストを読んでのライブにおけるパフォーマンス単体の魅力であった。
しかし、ここで上演されたシアトリカルな朗読公演としてパッケージされたものは、短歌や詩の世界をより深く伝える。
詩人の中でも演劇活動を行う人は何人もいる。
詩人、歌人は演劇人とより深く交流を。朗読ライブに演出家を。
これは新しい可能性だ。

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