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【Strange Days】(1967) The Doors 非現実へと誘う幻の世界

ドアーズの不朽の名盤と言えば有名なデビュー作ですが、この2ndアルバムも私はかなり好きです。(でも私的な1番は3rdかも)
高校生の頃、インパクト強烈なこのジャケットと「まぼろしの世界」という邦題が心に突き刺さって、即CDを購入。受験勉強もせずに浮遊する世界に耽っておりました。

先ずは文字どおり "Strange Days" に連れて行かれるような一曲目を。キラキラした音の正体は、当時出たばかりのムーグ・シンセサイザーなんだそうです。


ドアーズがアマチュア時代のレパートリーを勢いもそのままに録音したのがデビュー作ならば、多少のスタジオワークも駆使して、色彩感ある楽曲で取り揃えたのが本作といったところでしょうか。
サイケデリックな時代にも異端の個性だったドアーズ。詩人・奇人ジム・モリソンの狂気が鮮やかに伝わってくる本作は、もしかしたらバンドを1番端的に表した作品かもしれません。


(アナログレコード探訪)

〜アナログとCDの音の違い〜

小柄な男性は、裏ジャケの男性と双子らしいデス

摩訶不思議な世界を切り取ったジャケット。非日常へと連れ出すドアーズの音楽を見事に表現したアートワークですね〜。
曲芸師はすべて本物ではなく、ジャグリングを披露するのはカメラマンのアシスタント、トランペット吹きはタクシーの運転手を5ドルで雇ったそうです 笑。

ハーフシャドウのカッコ良いモリソン!
(インナースリーブ)
エレクトラ・レコードの米国初期盤

本作の米国初盤。エレクトラが1966年から69年まで使ったデザインです。微妙な色加減から茶色とゴールドの2種類に時期が分かれるとも言われていますが、私は時系列の差はなかったと考えています。

マトリックス番号は
左「APC10-5-7」、右「APC10-10-17」

初盤を2枚持っていますが、内周無音部の幅は全く同じ。確認しづらい極細な手書きのマト刻印は上の通り。おそらくラッカー盤が同一の兄弟盤だろうと思われます。聴き比べたところほぼ音質は同じ。ただし古い盤なのでコンディションは写真右の方が良好でした。

90年代のリマスターCDと聴き比べると、アナログ盤は音の分離が良く、ベース音のゴリゴリ感など際立ちます。CDは音像が平たく、モリソンの声が周りに埋もれているのが気になります。


〜モノラル録音の切り札!?〜

日本ビクター株式会社の初回盤

日本の初回はビクター。1stの発売が遅れた為に間髪なく発売されています。定価1750円。本家エレクトラが創業時に使った「ギターマン」デザインのレーベルが粋。音質は若干詰まり気味ですが、米国盤に寄せたシッカリした音です。中古でよく見かけるワーナー・パイオニア盤は後発盤で、8000番台なら73年、10000番台から75年頃の再発盤となります。


ところで、本作のような60年代の作品ならばモノラル録音で聴いてみたいもの。歴史的に英米がモノラル盤の発売をほぼ終了したのは1968年。67年9月発売の本作は、ギリギリとあって市場でもあまり玉数が無いようです。(3rd【太陽を待ちながら】はテスト盤のみ)

ところが、近年盤に良いのがありました〜。

2017年発売の再発モノラル盤(EUプレス)
エレクトラの初盤レーベルが嬉しい

こちらライノが発売50周年を記念して復刻したモノラル盤。私は近年盤に殆ど興味が無いですが、試しで買ったこの盤はホントに文句ナシ。
具体的には、モノラル特有の中央から音が飛び出してくる感触、近年盤では消えてしまう残響の拡がりが有りました。内周部にエレクトラの規格番号が刻印されているので、オリジナルマスターから起こしたのでしょう。買って損は無しです。
ちなみに1stのモノラル復刻盤は音が潰れてます。最悪です。手を出さないでください。マスターの保存状態に差があったみたいです。

レコードなんか聴けるか!という方には、50周年アニバーサリー・デラックス・エディションをオススメします。ステレオも割とオリジナルに忠実なミックス。モノラルと両方聴ける徳用2枚組CDです。


Side-A
② "You're Lost Little Girl"

ジム・モリソンが情感たっぷりに歌うこの曲好きです。マイクを両手で握りしめながら目を瞑って歌う姿が思い浮かびます。イントロからリードするベースラインを弾いているのはダグ・ルバーンというセッションマン。甘く幽玄な世界をモノラル音源で。

③ "Love Me Two Times"

ギターのロビー・クリーガー作の2ndシングル曲。ブルースバンドとしての魅力が良く出ています。でもブルースとは言っても、冷たくて緊迫した感触がこのバンドらしい。

Side-B
① "People Are Strange"

本作の1stシングル。邦題は何故かこちらが「まぼろしの世界」。高校時代にこの曲が好きで、この何とも言えない虚脱感、疲労感に憧れました。浅い夢を見ているような曲です。

④ "When the Music's Over"

レイ・マンザレクの印象的なオルガンから始まる大曲。1st収録の「ジ・エンド」と双璧をなすドアーズの長尺叙情詩です。自己に陶酔するジム。語るように吐き出すように身を削って歌います。ジョン・デンスモアのジャズ上がりらしいドラムがスリリング。演劇性のある呪術的な演出と構成の11分…どっぷりと惹き込まれます。

衝撃のデビュー作から8ヶ月後に発表された本作は内容的にも姉妹編です。他には喩えることが出来ない唯一無二の音楽性と存在感。ドアーズのようなバンドが出てくるところがロック黎明期の面白さですね。

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