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【beyond…】(1986) 杉山清貴               お茶の間に届いた夏のリゾート・ポップス

夏ですねぇ。神奈川県も毎日暑いです。
朝から午前中とは思えない日差しの強さに参ります。
それでも青く爽やかな空、白い雲など見ていると夏の解放感はいいものです。

こんな季節には清涼剤になるような音楽が似合います。とはいえシティポップやAORなるお洒落なジャンルにまるで疎い…。

そんな私が昔「ザ・ベストテン」を一生懸命観ていた1984〜86年頃、お茶の間レベルで「夏」を体現した音楽を聴かせてくれたのが杉山清貴でした。

1985年末に杉山清貴&オメガトライブ解散。翌年ソロになり、初夏に発表したデビュー曲「さよならのオーシャン」はヒットしました。

当時、私は中学生。友人と訪れた名古屋市内のデパートのとあるレコード店で、新生・1986オメガトライブの「君は1000%」か、杉山清貴の「さよならのオーシャン」か、2枚を手に取りながら、どちらを買うべきか数時間悩んだことがありました笑 

結局、悩みに悩んだ末「君は1000%」を買ったのですが、当時は、確かにオメガトライブ関連(バップ系)のリゾート志向の音楽は分かり易く、お茶の間レベルでしか音楽を知らない中学生には格好の入り口でした。

そんな訳で杉山清貴は、本作【beyond…】をレンタルレコードで借りてカセットテープにダビングして聴くことに。これが結構お気に入りであの頃よく聴きました。

バップレコードから86年7月2日発売。ジャケットからして、当時のリゾート感満載です。

今年になって初めて中古レコードで買いました。数百円。あの頃には買えなかったLP盤を手に出来て感激…。

ヒゲを蓄えた杉山さん。
インナースリーブの写真からはそれ程リゾート感はありませんがしっかり海外での撮影。

レコーディングは東京なのに!

写真撮影だけに海外に出向くとはリッチな時代ですよね。

あと気になるのが…

全編アルファベットのタイプ打ち風のクレジット!

これ、全くもって読みづらい!!オメガトライブ時代もやってました。流行ですね。

日本人なのにミドルネーム入れるのもこの頃からチラホラ。業界臭が私には不快です笑

うるさい話はともかく【beyond…】久しぶりに聴いてみました。

A-①「ocean」
「さよならのオーシャン」1分強のリミックスエディットバージョン。始まるよの演出。

A-②「what rain can do to love」
雨音のSEから始まる爽やかなAOR。歌詞は杉山清貴、英訳詞を山口美江(後にタレント)。英詞と杉山清貴のクリアボイスが何とも似合っていて、夏のリゾート気分を盛り上げます

A-④「Alone」
アップテンポの後に、静かに始まる本作中傑作のバラード。作曲佐藤健、作詞松井五郎。乾いたギターのカッティング、シンセの優しい音色、間奏のサックスなど過不足ないアレンジが心地よいです。少し気弱な失恋男の歌詞もいい。

B-①「you don't know me」
B面頭は仕切り直しのアッパーなナンバーから。アナログ時代にはよくある構成です。
曲は杉山清貴。覚えやすいサビが好きです。
歌詞は離れていく恋人に「笑顔で行けばいいさ」と優しく見送る男の強がり。…くぅ~(泣)イイですね!男のヤセ我慢、これぞ昭和よ!

B-②「long time ago」
フェイドインで入ってくるこれまたトロけそうなAORバラード。これも曲は杉山清貴。
本作は曲間がクロスフェイドだったり、意図的なトータルアルバム志向が見えます。
遥かかなたの水平線が見えてくるような、ボンヤリとした音像が夏を思わせます。

B-③「さよならのオーシャン」
砂浜?でカセットデッキにテープをセットするSEから始まるアルバムバージョン。ドライブで聴くこと前提の演出が古いけどニクい。
今聴くと結構歌謡ロック風です。ドラムも歌もリバーブ深めでこの頃らしい。でも名曲。


改めて聴いてみると、どぎついシンセや電子ドラムの音など、この時代を感じる箇所はあります。

しかし杉山清貴のクリアボイスとリゾート感覚に徹したAORサウンドは相性抜群!今聴いても心地よいです。特にバラードは秀逸。

緩急ある曲順やクロスフェイドなどの演出は車でドライブしながら、ノンストップで聴くことを想定していたのではないでしょうか?

当時、私は【beyond…】をダビングしたカセットに、ビーチの写真が入った市販のカセットインデックスをあしらい、その背表紙にアルファベット文字を転写するレタリングシートでアルバム名、歌手名を記していました。

我ながらリゾート感を演出した自作カセットに気分満足。


あの頃は音楽は所有して聴く時代でした。


カセットは外に持ち出して聴くことも多く、装飾を施して楽しむような文化が当時はあり、ちょうどリゾート志向のシティミュージックはドンピシャのジャンルでした。

【beyond…】とビーチ写真のカセットインデックスは、今だに私の中では、あの当時の記憶と共に焼き付いています。

自分だけの音楽として大切に聴いていた80年代。いま振り返ると、夏の砂浜のようにキラキラと眩しく蘇る思い出です。

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