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【Blondes Have More Fun】(1978) Rod Stewart 70年代最後を飾る賛否両論のヒット作

ロッド・スチュワートとの出会いって、世代ギャップもあるので人それぞれだと思うのですが、私の場合は本作なんです。
中学生の頃、深夜に洋楽を紹介するTV番組を観ていたところ、エンディングはゲストのリクエストを紹介するらしく、この時のゲストがアイドルの石川秀美(うろ覚え)で、彼女が選んだのが「アイム・セクシー」だったのです。金髪女性がジュースを飲んでるPV映像です。

思わず、この曲知ってる!と私。実家が幼少期から飲食店を経営していて、有線放送から絶えず洋楽が流れていたので何度も耳にしていたのでしょう。不思議と懐かしさがこみ上げてきました。後日、早速中古レコードで本作を購入。私のロッド・スチュワート初体験となったのでした。

ベスト盤CDにあったロッド自身のコメントによれば、「沢山の人に支持されたが、風当たりも厳しかった。今も愛憎入り交じった曲だ」とのこと。発売当時「アイム・セクシー」がディスコに走ったと叩かれたことに複雑な感情があるようです。そして本作自体も、ロックファンの間で好き嫌いの賛否が分かれるのも確か…。

チャラいジャケットにしてこのタイトル(ブロンド女の方が良いよ、みたいな意味??)。
まるでロッドのパブリックイメージを逆手に取ったようなあざとさに、敬遠する方も多いかと思います。「ロッド、変わったなぁ」と。

でも私は本作悪くないと思うんです。擁護派です(笑) 世間の評判とは逆で、寧ろ良く出来たアルバムだと思うんですよね。ジャンルもカントリー、R&R、レゲエ、ブラジル音楽…とバラエティに富んで幅広く、何より楽曲が良い!演奏もカーマイン・アピス(drums)、フィル・チェン(bass)の重いリズムに、トリプルギタリストを揃えた全盛期ロッド・バンドの豪華布陣。やっぱりアルバムタイトルが良くなかったのかなぁ…。


(アナログレコード探訪)
〜「アイム・セクシー」に関する色々〜

米国ワーナー・ブラザーズの初期盤
裏はブロンド

本作の日本盤邦題はお馴染み【スーパースターはブロンドがお好き】。ワーナー・パイオニアの発売です。直後の来日公演もあってオリコン2位の大ヒット。かなり売れたようです。昔聴き比べましたが、音は米国盤の方が遥かに上。米国原盤なのかもしれません。

日本盤シングル「アイム・セクシー」

来日記念盤と銘打たれた国内7インチ盤。太い音ですが、音抜け、粒立ちはやはり米国盤LPというのが私の感想です。

当初の作者クレジットはロッド、カーマインの2人でしたが、現行ではDuane Hitchingsの名前も加えた3人です(2000年代のリマスターCDから)。この人物、カーマイン・アピスも在籍した米国ハードロックバンドのカクタスの最末期メンバーなんです。4th【汗と熱気】(72年)に参加した鍵盤奏者。カーマイン人脈だったのでしょう。「アイム・セクシー」で印象的なシンセフレーズは彼によるものです。貢献度から追加クレジットに至ったと思われます。

さて、日本盤7インチジャケットはアルバムと同じ写真を使用…と一見して思いがちですが私はこれ、別テイクなような気がしてならないのです。それぞれの写真、ロッドの口元、女性の腕の角度、ライトの当たり方など、皆さん比べてみてください。どうでしょうか!?

アルバムジャケット
シングルジャケット

よろしければコメント欄にて御意見を!

さて、当然ながらこの曲はディスコでのフロアヒットも狙っており、米国では12インチ盤も発売されています。

米国盤 "Da Ya Think I'm Sexy?" Special Disco Mix

7インチと比べて、若干異なるミキシング。音量レベルも高くて、低音もドッシリした臨場感ある世界はいかにも12インチ。後半はロッドのボーカルも別録り、演奏もパーカッシヴでダンサブルな仕様となっています。

最後に私が兼ね兼ね謎に思っている曲について。黒人ソウル歌手、ボビー・ウーマックの "(If You Want My Love) Put Something Down On It" という1975年の曲です。昔ベスト盤で聴いてビックリ。テンポは違えどストリングスのフレーズがまんま「アイム・セクシー」なのです。似てませんか??
現在は公式にロッド側がパクったことになってますが、クレジットにボビーの名は無し。裁判沙汰になった話も聞かず、どんな収め方だったのか気になります。


Side-A
①"Da Ya Think I'm Sexy?"

4週連続全米No.1の大ヒット、言わずもがなのロッドを代表する一曲です。ツッタタ、ツッタタというベースラインはその後、色んな曲に借用されたように思います。
中間部のサックスソロのパートは演奏も結構ファンキー!凡百のディスコ曲とはわけが違うと私は思ってます。セックスアピール全開の頃のロッド。良くも悪くもイメージを決定付けてしまった曲ではあります。

③"Ain't Love a Bitch"

米国シングル盤

本作の魅力はバラエティに富んだ内容。ほのかにカントリー色を覗かせるのがこちら。マーキュリー時代のいなたい感じが嬉しい限りです。派手になっても初心を忘れてかったのかな、ロッド。


Side-B
③"Last Summer"

何とこちらはボサノバの雰囲気を持ち込んだ好ナンバー。ブラジルの乾いた風がヒュッと吹き抜けるようで、私好きです。ロッドがシンガーとしての幅を広げていく様子が窺えますね。


④"Standin' in the Shadows of Love"

前作ではシュープリームを取り上げ、本作ではフォー・トップスをカバーとロッドのモータウン好きを確認。豪華バンドによる重量級のロックアレンジがカッコいいです!

⑤"Scarred and Scared"

最後は淋しげなハーモニカで始まる感動のバラード。スケールが大きく、イーグルスの「ラスト・リゾート」にも似た黄昏れた気分が沁みます。70年代が終わっていく……そんな感傷的な幕引きに涙で拍手です。

私がロッド・スチュワートを真剣に聴けるのは本作までです。80年代に入った途端にデジタルっぽくなってしまい、シンドいのです。今や名実ともにザ・シンガーの風格のロッドですが、やっぱりバンドでロックしてた頃が良かったなぁと思いますね。

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