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ゴールデンカムイについて原稿用紙10枚分語り尽くす

今この記事を書き終えて、4000字を超えていることに気がつきました。原稿用紙10枚分、読書感想文は2枚埋めるのも苦労したのに熱意があれば書けるものですね。

原作終了1年を超え、今更な解釈を語っているかもしれません。でも私は自分の中の好き!これが良かった!を残したくてnoteを始めたので、ある意味これがやりたかったのだと思います。だから私は満足です。いや本音を言えばまだまだ書けます。

書きたいことを書き殴ったので読みづらいかもしれませんが、熱量だけでも伝われば嬉しいです。

※最終話までのネタバレしかありません。


最終話まで読破しました、ゴールデンカムイ。ちょっとずつ読み進めてます、時間かけてますとか書いていたくせにアニメ放送以降の話は面白すぎて一気に読み切ってしまいました。

バトル漫画や冒険ものって中だるみの展開がどうしても挟まってしまうと個人的に思っていて。「ここの展開が長すぎて追えなくなった」とか「最初の頃の話の方が好きだった」とかで止まってしまったり読まなくなることがすごく多いです。

金カムは中だるみなく「次どうなるの?」のハラハラが最終話まで続いて飽きずに読み進められました。リアルタイムで見ていたら次の展開が待ち遠しくて頭がいっぱいになっていたと思います。

飽き性が最後まで断念せずに読めたのは

・シリアスな展開の中に差し込まれる笑い

日露戦後が舞台となるので、特に過去編などについては重い話も多いです。眉間にグッと皺を寄せながら集中して見ているシーンの中、唐突にギャグシーンが差し込まれてきます。

例えば樺太編の終盤、キロランケが息を引き取るシーン。本来であれば長く旅を共にした登場人物の死の淵はとことん泣かせるお涙頂戴展開にしたいと思うはず。
特にこの樺太の旅は今後のアシリパにとって道標となった重要な道程です。「この旅は無駄ではなかった」というキロランケのセリフと共に流れる樺太の人々の暮らしや文化、自然の走馬灯。そして唐突に差し込まれるスカンチェとバーニャ。「いや結構無駄なことしたな」の一言に涙も引っ込んでふふっとなりました。結局ソフィアが出てくる回想シーンですぐにぐずぐずに泣いてしまうんですけど。
泣かせた5秒後に笑わせてまた泣かせる、野田先生とクドカンにしかできない芸当だと思いました。唐突な笑いどころでいえば樺太編での再会シーンと、ビール工場の杉元vs第七師団の戦闘も好きです。

グッと引き込んでからの感情の緩和。このギャグシーンの入れ方が絶妙で勢いのままに終わるので、個人的には気持ちが落ちることなく見進めることができました。


・戦闘シーンは短く人間ドラマへの焦点を当てている

金カムは他のバトル漫画に比べて戦闘シーンが短かったように感じました。個人的に戦闘シーンだけで何話も引っ張られると「まだ決着つかんのか…」と思ってしまったりするんですけど、金カムは一つの戦闘が間延びせずスパッと終わる。テンポよく次の展開に続きます。
話の途中で色んなキャラクターの過去編が差し込まれるなど、人間ドラマの要素が強いように感じました。

人間関係で言えば4期を見てて菊田さんが出てきた時に「ここへ来てまだこんな種類のイケオジが出てくる?」って思ったんだけど、終盤になってまさか主人公が進む道のきっかけを作る重要な関係で出てくるなんて思わないじゃないですか。
ずるすぎる、好きにならないわけがないと思ったところにズドンですよ。中尉コラ!
作品を通して野田先生キャラクターの造形と関係を描くのが本当にお上手だと思いました。関係性オタクより。


・パーティーが目まぐるしく入れ替わる

これも展開がマンネリ化しないひとつの理由だったと思います。登場人物が1回は味方サイドとして共闘するという演出が面白かったです。
私は特に樺太編で杉元擁する先遣隊とアシリパ組で話が交互に切り替わる箇所が好きでした。主人公組のストーリーが切り替わることで、それぞれの旅に同行している白石や鯉登などサブキャラの感情の変化も違和感なく受け入れられたと思います。

その分誰が本当に敵で味方なのか疑心暗鬼になり、最後まで気の抜けないVIVANT状態だったのですが。色んな登場人物にスポットが当たるのでもれなく全員好きになっちゃいました。


ここを語りたいんだよゴールデンカムイ

・土方陣営・鶴見陣営について考える

刺青人皮を集める2大勢力、土方歳三率いる囚人アイヌ諸々連合と鶴見中尉率いる第七師団の終焉が対極だったのが印象深かったです。両者ともカリスマ性のあるリーダーだったと思うけど、土方は小細工はなく男気で引っ張っていくタイプ。尾形も杉元一派もそんな自由に出入りしちゃっていいの?と不安になるくらい来るもの拒まずの土方、器がでかい。
正直戦力となるのは、新撰組ズと都丹、牛山くらい。まあその牛山が作中最強ではあるんですけど。月島を以て「歯が立たん」はやばすぎる。

キラウシも夏太郎も初めは流れで陣営に加わってきたと思うけど、最終的にはアイヌや土方のために身体を張っている。全員が土方を慕っているのが伝わってきて、終盤になるにつれどんどん土方陣営が好きになりました。
キラウシが大砲を撃つシーンの回想でアシリパを見て微笑んでるシーンなんか一コマで泣ける。でもキラウシで一番好きなのはビール工場の「門倉〜〜わああ〜〜」です。めっちゃちいかわ。あそこは声だして笑った。土方陣営は杉元たち主人公組含め、全員最後まで一致団結感があって爽快でした。それぞれの散り際もカッコ良すぎた。

対する鶴見陣営。
軍人なだけあって個々の戦力が高く、各キャラクターの個性も強い。野望のためにあらゆる手を使って裏から手を回して、嘘を重ねて自分に尽くす兵士を育て上げてきた鶴見。土方陣営とは逆に、終盤になるにつれ鶴見の部下たちは死別や裏切りでどんどん彼の元を去っていきます。
嘘で固めた土台が徐々に崩れていくようで、鶴見中尉推しとしては苦しい展開でした。

「私の力になって助けてくれ」と まっすぐにアタイを見てそげん言ってくいやっちょったら そいでもついて行ったとに

30巻第295話『ふたり』

鯉登のこの言葉が全てだと思います。
土方にもなれたはずなのに土方のようにはなれなかった、それが鶴見中尉というリーダーの終焉なのかなと思いました。


・鶴見中尉の「愛」

ここまで書いてきましたが、私の最推しは鶴見中尉です。鶴見中尉といえば甘い嘘で救いを与えるのがお得意ですでお馴染みの策略家。

そんな鶴見を象徴する227話の「愛です」シーン。この台詞を最初に見た時「いかに自分に奉仕してくれるだけの愛情を持たせられるか」と解釈していました。最終巻まで読んで、「むしろ部下への愛情が強かったのは鶴見の方では?」と思うようになって色々考えました。そもそも最初に「愛を育む」って言っているから一方向からの愛情じゃなかった、ってこと…?

鶴見はところどころ顔が黒く塗りつぶされ表情がわからないシーンがあります。
この真っ黒シーンが出てくるの、記憶の中では所謂愛ですメンバーとの離別の場面とソフィアが持っていた昔の写真を見た場面だったと思います。
この時の鶴見はどんな表情をしていたのか?
てっきり見下したような冷めた表情をしているのだと思って読み進んでいました。けれど310話、尾形の名を呼んだ後に描写される部下たちが乗る後継車を「道連れにはできん」と切り離します。

そもそも鯉登の懇願によって最後まで付き添わせていた月島を手放し、2人に何の制裁も加えず立ち去っている。ラスボスなら「残念だよ」とか言って鯉登を始末する展開も十分あり得るのに。少なくとも最後まで自分に付いてきてくれた部下たちのことは心から大切に思っていたんだろうか。「部下を駒だと思ったことはない」も本心だったの?愛の人じゃん鶴見篤四郎。

そう確信したのが313話の1コマ。
土地の権利書を選びきっと肌身離さず持っていただろう妻子の骨を掴まず形見を手放してしまうシーン。この1ページ後の表情。悲しみと愛に満ち満ちている。この表情こそが、愛ですメンバーとの別れの時の隠されていた表情なんだと思っています。ただ307話のコマはもしかしたら最後の表情は鯉登でなく月島にだけ向けたものだったのかもしれないとも思う。他3人と違って鯉登の愛は最後には離れてしまったわけだし。

と、いくらファンが想像しても、鶴見の一番のファンであると公言している野田先生にとっては解釈違いかもしれません。それでも色々考察してしまうのが私という生き物です。


・アニメと漫画の相違

私はアニメから入って原作を読み始めましたが、カットされているストーリーが思ったより多かったです。杉元のアシリパに対する庇護欲、土方陣営にいつの間にかいるメンバー、いつの間にか距離が近くなっている谷垣とインカラマッ。
「なんで?」と疑問に思っていた箇所は原作を読むことで登場人物の心情への理解がより深まりました。確かにこれは地上波では放送できんよなぁってシーンが満載でアニメと原作で2度楽しめたのは良かったです。

特にアシリパとインカラマッがボートの上で話すシーン、アニメをみている時には特に深く思わなかったのですが「ウイルクにとって私は子供でしたから忘れちゃったかもしれません」とインカラマッが涙を流してアシリパが杉元を想うカット。ここの話はそういうことだったのか!と得心がいきました。アニメにもこのカットは欲しかったな。

反対にアニメだったから良かったこと。
もし先に漫画を読んでいたら、尾形をそこまで好きにならなかったんじゃないかと思います。尾形すっごい邪魔してくるな!猫っぽいのもあざといぞ!としか思わなかったかも。CVがツダケンさんだったことで私の中のキャラの魅力がグッと上がりました。今では上位で好きなキャラクターです。声優さんは偉大なり。
あと鶴見中尉を芳忠さんにしようと言ったのは一体誰ですか?心より感謝申し上げたいです。


・散りばめられた伏線と人間関係

話の大筋には関わらないけど「ここで!」と思う細かい伏線回収が随所でありました。特に「うわぁ」と思ったのは身代わりお見合い任務の話で判明した月島のあの子の生存。

金カムストーリーの中でも月島の過去編と谷垣とインカラマッの逃亡劇は上位で好きな話です。逃げることを選んだ谷垣と光属性マシマシで眩しすぎる鯉登の選択が本当に好き。インカラマッに「あの子は…」と尋ねる月島が切なすぎてな。あとこの直後稲妻夫婦の子がしれっと出てくるのがいい。

もうあの子の生死はどちらでも物語には大きく関わらないけど(結局月島はどちらか知らずに生きていくわけだし)、生きていて本当によかった。
本当に三菱の幹部と結婚してたんだな。…てことは最初の鶴見中尉の話が本当なわけで。月島を兵士として仕上げたいタイミングでこの嘘を使ってきたんだから全然甘い嘘じゃないんだよなぁ。推しが怖いよ。


・私の中の北海道:占守島の戦い

エピローグでこの話が描かれると思いませんでした。私が占守島の戦いを知ったのは、TEAM  NACSの公演「PARAMUSHIR」です。北海道を拠点とする彼らの、他の本公演とは少し毛色の異なる作品。太平洋戦争終戦から数日後に起こった北海道を守るための戦い。
私はこの公演を見るまでこの出来事を知りませんでした。自分の知識がつながっていくのが嬉しいし、教科書でも大きく取り上げられないこの戦いをより考えるきっかけになりました。

余談ですが私がNACSの本公演で一番好きな「HONOR」。「すべての心にふるさとを、笑って泣ける郷愁人情ファンタジー」とゴールデンカムイでも使えそうなキャッチコピーです。こちらも北海道のとある村の人々を描いた作品で、アイヌの紋様を彷彿とさせる衣装も出てきます。劇中音楽を担当されているNAOTOさんのヴァイオリンも素晴らしいです。おすすめの作品。

思えば私にとって初めての『推し』は北海道を拠点とするTEAM NACSでした。
土方歳三最期の地である北海道・函館も新撰組好きにとっては重要な場所。
そしてゴールデンカムイ。
今までも好きな土地だったけど、北海道がますます私の中で聖地化されてます。


終わりに

終わりとは書いたものの、まだ全然語り尽くせていない。
今なら4期のOPの話だけで1本記事が書けそうです。心がしんどくなったらyoutubeで4期のOPを見てメンタルを回復させる日々を送っています。

原作を読見終えた勢いそのままで書き殴っているので、あとで解釈違い!と気づいたらこっそり修正するかもしれません。多分噛み砕ききれていないことがもっとあるはず。
素敵な作品に出会えてよかったです。今からゆっくり読み直して、5期放送と実写映画を楽しみに待ちたいと思います。
あとゴールデンカムイ展大阪巡回とかありませんか?切に願ってます。

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