見出し画像

RENTの来日公演に行ってきた!

ミュージカル映画が好きな人がみんな舞台のミュージカルが好きだとは限りません。どちらか一方だけが好きな人というのが結構います。

といいつつも、小さい頃から親にミュージカルに連れ回された影響で結構ミュージカルも好きだったりする私。

そんな私がいっっっっちばん大好きなミュージカル”RENT”の来日公演が今回あるということで、さっそく鑑賞してきました。

RENTとは?

RENTとは1996年オフ・ブロードウェイで初演があってから25年以上も世界中で愛されている大ヒットミュージカルのこと。ブロードウェイでの公演が終わった今も今回のようなかたちで世界ツアーが頻繁に行われ、そのたびに世界中のRENTファン(レントヘッドって言ったりします)がかけつけ大盛況となります。

作品は、あらすじはプッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』を下敷きとし、舞台をニューヨークのイーストヴィレッジに変え、そこで家賃を払わずに生活する芸術家を目指し、エイズ薬物依存に苦しみながら残り少ない寿命を生きる若者の葛藤を描いています。

特に象徴的な曲は、こちらの”One Song Glory”。エイズに感染しているため長くは生きられないことを覚悟しているロジャーが、死ぬまでに一度最高の一曲を作りたい!と叫ぶ曲です。切実な芸術家志望の叫びに胸が痛くなります。

そして、RENTといえばやはりこの曲”Seasons of love”。日本でもCMソングに使われたり合唱曲として歌われたりとかなりの知名度を誇るこの曲。

残り少ない人生を人間としての尊厳を求め魂を燃やし生きている若者たちが一同に集まり「52万5,600分しかない1年を、で数えたらどうだろうか?」と合唱する姿には否応なく心を打たれます。

そして繰り返される”No day but today”というフレーズ。そうなのです。今私たちが生きているのは、”There is no future. There is no past.”そうです。未来でも過去でもなくて今日、この瞬間なのです。RENTは忙しさで心が死んでしまっている私たちに改めて大事なことを教えてくれる作品なのです。

ジョナサン・ラーソンと伝説

このRENTという見事な作品を作り上げたのはジョナサン・ラーソンという人物。7年もの歳月をかけRENTという作品を作り上げたものの、この作品のプレビュー公開の前日に大動脈解離により亡くなってしまったのです。この事実は、作品の持つ強烈な生へのメッセージ性とも相まって、ある種の伝説となっています。

ジョナサン・ラーソンがRENTで目指したのは古臭い音楽(つまり古典ミュージカル映画のような音楽)で作られた当時のありふれたミュージカルはなく、テレビやラジオで今輝いているナウい音楽(つまり当時でいうロック)で作られたミュージカルでした。

もちろんロック音楽で作られたミュージカル自体は『ジーザス・クライスト・スーパースター』(1971年)などはじめてではありません。しかし、1990年時代のブロードウェイではそうしたロック・ミュージカルの系譜は途絶えていたのです。

もっといえば、当時の人気だったのは『ライオンキング』のようなディズニー作品だったり、アンドリュー・ロイド・ウェパー作曲の『オペラ座の怪人』のようなロンドンミュージカルで、相対的に伝統的なブロードウェイというのは元気がなかったんですね。

若くして名作『ウエストサイド物語』を作り上げたソンドハイムを目指し、新時代のアメリカのロックミュージカルの制作を目指したジョナサン・ラーソンがついにそれを達成させたのが”RENT”だったのです。

実際”RENT”は、ジョナサン・ラーソンの死後ミュージカルの最高栄誉トニー賞とさらに、ピューリッツァ賞も受賞します。そして停滞していたブロードウェイ史は再び前に進むことになったのです。

『Tick, tick... BOOM! : チック、チック…ブーン!』を見てからが良い!

もし、”RENT”をこれから見る方がいるのであれば『Tick, tick... BOOM! : チック、チック…ブーン!』を見ることをおすすめします。

というのはこの作品は予習(もちろん映画版『RENT』も見るのは大前提としてですが)にぴったりなのです。この作品はジョナサン・ラーソンのミュージカル作品の映画版なのですが、ジョナサン・ラーソン自身の自伝にもなっているのです。

この作品を見れば、ジョナサン・ラーソン自身の実体験も数多くとりこまれた”RENT”という作品が生まれる土壌、あるいは”RENT”という作品に込めたかったメッセージというものをより深く理解することができます。

そして、ジョナサン・ラーソンのソンドハイム氏への敬愛の念もとりわけ描かれおり、ミュージカル史においてソンドハイムからジョナサン・ラーソンへとつながる系譜を理解するのに役立ちます。

そして何よりも熱いのがこの『Tick, tick... BOOM! : チック、チック…ブーン!』を監督しているのが今をときめく大ミュージカルスター、リン=マニュエル・ミランダなのです。

大学生で『イン・ザ・ハイツ』というミュージカルを制作しいきなり大ヒット飛ばし、続いて作詞・作曲・主演も手がけたヒップホップミュージカル『ハミルトン』はアメリカで社会現象を巻き起こすほどの異常な大ヒットを記録。最近だとディズニー映画『ミラベルと魔法だらけの家』で彼の作曲した曲がビルボード1位を獲得するほどまでにアメリカでヒットするという人気っぷり。

そうなのです。彼も”RENT”をこよなく愛する人の一人。そして、ソンドハイムからジョナサン・ラーソンというミュージカル史の本流の系譜を受け継ぐ現代のミュージカル作家なのです。だからこそ、ジョナサン・ラーソンがナウい音楽つまりロックでミュージカルを制作しようと試みたのと同じように、リン=マニュエル・ミランダはイマドキの音楽であるヒップホップでミュージカルを作り上げたのです。

この系譜を流れを知るために一番良い見方としては、『ウエストサイド物語』ソンドハイム⇒『Tick, tick... BOOM! : チック、チック…ブーン!』ジョナサン・ラーソン(リン=マニュエル・ミランダが監督)⇒『RENT』(ジョナサン・ラーソン)⇒『ハミルトン』リン=マニュエル・ミランダの順で見ると激熱だと思います。『ハミルトン』はDisney+で見ることが出来るので是非。

さいごに

RENTが来日するのはコロナの世界的流行のためなんと4年ぶり。それでも尽きないミュージカルの圧倒的魅力と人生すら変えてしまうほどのエネルギー。これを是非皆さんにもいつか感じてほしいと思います。興味がある方は是非。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?