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創作小話「古今東西ゲームと屁理屈な友人」

「暇だな……」
「なんかゲームでもする?」
「ゲームって言っても遊ぶ道具がないだろ。しりとりか山手線ゲームとかしかできないよ」
「山手線ゲーム? 古今東西ゲームのこと?」
「ああ、地域によってはそう呼ぶ人もいるかな」
「それいいじゃん。やろうよ」
「え、やるの? まあ暇すぎるからいいけど……」
「お題簡単なのにして」
「わがままだなあ。じゃあベタだけど都道府県とかで。俺からでいい?」
「いいよ。古今東西ゲーム、都道府県」

「、、北海道」
「、、ジロンド県」
「え?」
「どうした? フランスの県だよ、ジロンド県」
「いやいや。日本の都道府県を言えよ。フランスの県って。」
「それは日本のって言ってなかった君が悪いよ」
「言わなくてもわかるだろ」
「だって、古今東西の東西は『あらゆる場所』って意味でしょ? 対象を自国だけに限定しちゃったら、それはもう『古今ここ』だよ」
「古今ここ。」
「こが多いな。織田信長じゃないんだから」
「…………いや、織田信長が子だくさんだったかは知らないけど。変な例え方すんなよ」
「はい、ジロンド県の次」
「待って待って。一回仕切り直すわ。『日本の』都道府県で最初からやらせてくれ」
「2個目のお題ね」
「2個目とかじゃないんだけどな。じゃあ俺から」
「どうぞ。古今東西ゲーム、日本の都道府県」

「、、東京」
「、、日光」
「おい、日光市は都道府県じゃないだろ」
「日光市じゃなくて日光県だよ」
「……日光県?」
「そう。明治時代にあった日本の県」
「もうやめてくれよ。普通にやってくれ」
「……まあこれは最初に東京と言った君のほうにも問題があるけどね。今は東京都だけど当時は東京府があったんだから、どっちを指すのか区別できるように言ってくれないと。」
「ああもううるさい! 現在の名称だけに決まってるだろ!」
「えー。でも古今東西の古今は『昔と今』って意味じゃん。時代も場所もそうやって限定したら『今、ここ』になっちゃうよ。瞑想法かよ」
「うるせえ、もう喋るな! 百歩譲ってゲームが進まないのは許そう。でもさっきから何なんだ、織田信長とか瞑想法とか。俺は上手いことを言おうとする奴がいると腹立つんだよ。それ以上言われたら殴りそうだ」
「ええっ」
「鬱陶しいんだよ。ずっと会話のノリがお笑いみたいだし」
「お笑いみたいな会話で、なおかつ鬱陶しいかあ。でもこのゲームの話をしてた時点でそうなることは当然でしょ?」
「え?」
「だって、古今東西の中には『コント』と『ウザい』が含まれてるんだから」

(殴られる音)

お後がよろしいようで。

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