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【自由詩】道端の草花

「道端の草花」

ある日 歩いていると 
ふと 気づいた
道端に咲き誇る 草花に
思わず郷愁に駆られ
手を伸ばして ふれようとしたけれど
その手は 届かなかった
僕の背が 伸びすぎたせいだ
ふれるには しゃがまなければならない

子どものころなら 手を伸ばせば
ふれあえたのに
今だって ふれあうことは
できるけど
「しゃがむ」
その動作ひとつさえ
煩わしいと 感じるようになっていた

そうか 
そうだったのか
手を伸ばせば そこに草花がある
子どものころは そうだった
自然はいつも
身近で
対等で
ぼくの目の前に 広がっていた

今も同じだ
自然は 目の前にある
でも 僕には果てしなく 
遠く感じた
ふれてこなかったからだ

僕の目が くもっていたのだろうか
先を急ぐあまり
僕のこころが よどんでいたのだろうか
灰色の人工物に 囲まれたせいで
僕の耳は なにを聞いていたのだろう
耳にしていたのは
慌しく過ぎ去る 鉄のかたまりと
生命の宿らぬ 自動音声だったのか 
道に生えた草花の彩りも
風が運ぶ豊かな香りも
それを感じて めばえる
詩的感性も
すべてが 長らく
失われていたのか

どうりで僕の日々が
味気なくなるはずだ

自然は感性を育て
感性は詩を育て
詩は芸術となり
暮らしの糧となる
そして子どもは 最も
自然に近い存在だ
伸び切らぬ背は
草花と対等の視点を保ち
自然と一体化して
豊かな感性を育ててゆく

子どもこそ
真の芸術家だ
技巧を凝らさずとも
修辞を知らずとも
ただ自然にふれあうだけで
彼ら自身が
詩となり 
芸術となるのだ

僕にもまた できるだろうか
あのころのような
純真な 気持ちで
自然とふれあうことが

草花はなにもこたえず ただ
風にゆられていた

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