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(希望の新聞HOPE)ホタテの手入れの繁忙期を楽しむ、漁師妻の挑戦

(この記事は2022年10月に発行された『希望の新聞HOPE』のアーカイブ記事です。当時の情報をそのまま掲載しているため、現在とは状況が異なる場合があります。あらかじめご了承ください。)

 食のインフラを支える第一次産業で働く人は忙しい。仕込みから収穫、出荷まで、季節は待ってくれない。個人よりも仕事が優先されることが多く、後継不足や産業離れも取り沙汰されやすい。

 その忙しさを「仕方ない」で済ませるのではなく、工夫して楽しもうとする人がいる。北海道オホーツク海のサロマ湖で、夫と共に漁業を営む井田貴子さんだ。
「地域で働く良さは、お互いさまの精神で助け合えることです。お互いが心地よく過ごせるように工夫することで、自分の時間も大事にしてもらえます」

 サロマ湖の漁は、流氷が去っていく4月から湖が凍結する12月末まで。井田漁業ではホタテ・牡蠣・マスを扱う。夏の繁忙期はホタテの手入れが特に忙しく、雨や強風で沖に行けない日以外は毎日作業がある。
「ホタテも生き物、手早く扱わなくてはならないので、みんな必死です」
 朝は2時に起きて3時に出航、4時に従業員がきて、決まった量の作業がお昼1時頃まで続く。

 忙しいからこそ、お互いを気遣い補い合うことで、自分の時間も楽しめるようになると井田さんは語る。
「一緒に働く人にも休みを取ってもらうようにしたり、なるべくたくさん感謝の言葉を伝えるようにしたり、普段の関わりを大切にすることですね」

 今年の夏は、隣町の野村萬斎の狂言や札幌の友人のレストランだけでなく、鹿児島にも友人の結婚式に顔を出すことができた。ホタテの手入れもまわりの人の理解と協力のおかげで無事に済ませられた。
「大変な時期こそ、予定より人の気持ちに目を向けたいですね。オホーツク地域も漁の仕事も、魅力を伝えるには私たちが楽しむ姿を見せるのが一番だと思います」
 家族も従業員も、そして自分も、誰も犠牲にしない働き方へ。自然を相手にする仕事だからこそ、「お互いさまの循環」が大切なのかもしれない。

井田漁業 HP

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