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丸山真男先生の『「文明論之概略」を読む』を読む(その2)

丸山先生の思想史的なことの博識と洞察力には、本書を読んで、本当に感銘を受けました。ただ、東京大学法学部出身の教授の癖は、抜けてないなと思いました。みんな学部卒だけで大学教授に就任するので、ちょっと薄いんですよね。若いころに、修士課程とか博士課程とかで、長く勉強しないので、ちょっとみんな薄いんですよね。深みがないというか。丸山先生は、思想史に関して、すごい物知りですよね。それは、思想系の先生だから、当たり前というところでしょうか。丸山先生の解説で、ごく簡単に、それらの思想系の西洋哲学者の概略の要点の知識も得られる本ともなっています。丸山先生って、顔のお写真から推察すると、「東大!東大!」の権威主義的じゃなくて、お優しそうな先生ですよね。

福澤諭吉の原書を先に読むよりも、丸山先生のこの解説を聞いてから、読んだほうが、面白いと思いました。丸山先生って、戦後の論壇をリードするのに、ふさわしい評価を学部時代に得られた先生なんだと思いましたし、72歳で、この「切れ」はないと思いました。4年間かけた読書会の文庫化ということで、丸山先生の大学引退後、よくこの本を出版社の人は残してくれたとも思いました。大変な力作だと思いました。
福澤諭吉の『文明論之概略』は、現代社会の人からしてみると、当たり前のことを言ってるだけのような気もするんですけど、開国・明治維新・西洋の輸入学問の一気の流入などの時代にあっては、革新的な道しるべとなった本なのだろうと思いました。福澤諭吉の『文明論之概略』も、丸山真男先生の『「文明論之概略」を読む』も、両者とも、何回も精読して、味わって、吟味してみる価値はある本か、逆に、現代社会ではその価値はあまりない、という両極端な評価を受ける本だと思いました。原書、解説本の両者ともに、なんか決定的な内容じゃないんですよね。丸山先生は、原書の音読を薦めているんですけどね。
一般の庶民が、(西洋)学問を勉強できるようになったのは、ここ100年の話なんですよね。それは、中国・韓国・その他のアジア諸国も、同じことなんですよね。だから、そういう学問が勉強できる学部に入った学生は、もっと有難いことなんだと思って、意欲的に勉強しなくちゃいけないわけですよね。(西洋)学問に、文盲だと、ちょっと辛いですよね。(西洋)学問は、今、生きていくための必須のツールになってますからね。中央省庁でも必須の現状分析のツールになっています。といっても、従来の東洋的な学問を研究している学者(国学院大学など)はいるわけで、日本は、両手に花の状態で、すごく有難い状況になっているとも言えます。
ただ、本書は、丸山先生の解説も、福沢の原書も、大したことは言っていないし、ゲームにもならない話だと思いました。切れ味も悪いと思います。座右の書にはできないと思いました。良いところを挙げれば、丸山先生の解説によって、その政治思想史や政治学の周辺知識(欧米・中国・江戸時代、明治時代の日本)が手に入ることです。この丸山先生の解説を足がかりに、他の思想史や政治学の勉強の入門書になりうるということです。丸山先生が、福沢諭吉の『文明論之概略』周辺の知識に詳しいので、自分もそれをしっかり読めた気になる本です。この本を政治思想や思想史の入門書にすることは、歴史的に考えても正しい方法で、とても良いことだと思います。あくまで、丸山先生の推察なわけですが、いろんな思想史の本や哲学者が出てきて、勉強になると思います。また、丸山先生のおしげもない解説のおかげで、いろんな知識が手に入ります。今の大学で学問に触れた者も、そうでない者も、福沢諭吉の『文明論之概略』の延長線上に生きているともいえます。福沢諭吉の『文明論之概略』を読むと、「基本」に戻れますよね。文系の学問をやっている人間からすると。こんな本が書けるのも、丸山先生の学問的努力の結晶なんだろうと思います。そういう丸山先生の学問的努力を惜しげもなく、教えてくれてるので、読者は、すごく助かりますよね。思想史って、すごく大変な分野の学問だと思います。すごい努力が必要だし、好きじゃないとできないし、「古い」とか、「すでに乗り越えられちゃった」とかいう限界がある本や思想家も「一読の労」を取って検討しなくちゃいけないので、大変な分野だと思います。読書の秋に、福沢諭吉の『文明論之概略』を丸山先生の解説とともに再読するのは、とても良いことですね。福沢諭吉の『文明論之概略』は、当時の政治関係の状況を感ずることができる良書ですよね。最近は、立ち読みだけで読める本が増えちゃって、含蓄がある貴重な本ですよね。丸山先生の補助解説がなければ、福沢諭吉の『文明論之概略』を読むことはできなかったと思います。それくらいの本です。この時代が大きく変わろうとするときに、福沢諭吉の『文明論之概略』と丸山真男先生の著作は「一読の労」を取るべき、必須の本とも言えるかもしれません。福沢諭吉と丸山真男先生がいて良かったと思えます。といっても、福沢諭吉も、丸山真男先生も、日本国内だけで通用する、ローカルな人ですからね・・・。加えて、丸山真男って、あまり面白くないかもしれませんし、中国の官僚や知識人には、届かないですよね。福沢諭吉の『文明論之概略』が、外国の思想家の本をほとんど丸写しにした章があることにも初見の知識で驚きました。あまりわかりやすい本ではないとも思いました。思想史で、世界で翻訳されるようなビッグな日本発の本を期待しますが、なかなか厳しそうなのが現状なようです。日本の思想はまともなものがないですよね。妙に偏ったり、そこまで大事にするかというような内容なものが跋扈したりね。しばらくの間、世界に翻訳された、グローバルな日本の本を検討してみようかな、という気になりました。でも、思想史じゃあ、そういうのって、ないんですよね。

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