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調理品紀行録 マーモットステーキ

 マーモットステーキ。
 マーモットの肉を薄切りにして焼き、そこにオニオンとガーリックを添えた料理である。
 新米調理師が初めて挑戦する肉料理なだけあって、作るのは簡単だが、極めるのは難しい……。そんな料理である。
 冒険者であった頃、初めて依頼を完了してもらった報酬で食べた料理がマーモットステーキだった。
 なので、思い出の品であることは確かなのだが。

「最近出回っているのはそこそこ美味しいんだけど、何か物足りないのよね」

 グリダニアの旧市街の一角で、マーケットで買ったマーモットステーキを一口、二口食べて首を傾げる。

「おねーさん?どうしたの?」

 声をかけられて、そちらを向くと、大量の食材を買い込んだ女性がいた。
 どうにも、落ち込んでいるような様子の私を放って置けなかったと言う。
 その女性は、私の手にあるマーモットステーキに目が行ったようで。
 「一口もらうね」と言い、それを食べると、顔をしかめた。

「うーん、これは添えてある物のせいで美味しくないのかな」
「添え物?」
「口で説明するには、なんとも……。
そうだ、私、冒険者なんだけど料理人としても雇われてるの。よかったら、一緒に行こう!」

 そう言われて、連れてこられたのは、半月ほど前にお世話になった例のレストランだった。
 突然のことに戸惑っていると、女性はてきぱきと食材を調理場にある箱へと片付けていく。
 その時、奥からさらに店主も出てくる。

「いらっしゃいませ……あれ?記者さんではないですか」

 今日はおひとりで?取材ですかね?と聞かれ、さらに戸惑い、私は――、

「あっ、倒れた!!?」

 視界が暗転して、次に光を認識したとき、店主と女性が私の顔を覗き込んでいた。
 近くからは、すごく香ばしい、ガーリックの香り。

「お、おかゆ作ったんだけど、食べる……?」

 女性の手には、おかゆの入った器とスプーンがあった。が、ガーリックの香りが食欲を誘ってきて。

「マーモットステーキが食べたいです!」

 とっさにそう、答えていた。
 店主と女性には笑われたが、やはりと言ったらいいのか傍にあったマーモットステーキを一口食べる。
 噛めば噛むほど、肉汁が出てくるステーキに、香ばしいガーリックと、あっさりとしたオニオン。
 ……そうだ、これだ。これを求めていたんだ。

「これはね、ワイルドオニオンと、ガーリックを使ってるんだよ」

 ニコニコと微笑む、女性は続ける。

「マーモットステーキの臭みを消すには、ワイルドオニオンとガーリック、
その両方がちゃんと組み合わせないとダメなんだよ」

 心の中に、メモを取り、次回来るときに取材をするということで、
 今日のところは別れることにした。


【調理品紀行録】マーモットステーキ


「あ、最後に!シェフのお名前は?」
「……なーいしょ!」

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