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読書感想文【デカルトの憂鬱】津崎良典著

こんにちはコウカワシンです。

今回は、津崎良典(つざき・よしのり)さんの著書【デカルトの憂鬱】から学ばせていただきます。

本書は「マイナスの感情を乗り越えるための方法論」を教えてくれる本です。

「我思う、故に我在り」(われおもう、ゆえにわれあり)

フランスの哲学者ルネ・デカルトは著書『方法序説』で残した「我思う、故に我在り」(われおもう、ゆえにわれあり)という言葉がとても有名です。

文字通り「私は思う、だから私が存在する」ということですが意味は、「世の中のすべてのものの存在を疑ったとしても、それを疑っている自分自身の存在だけは疑うことができない」ということです。

私たちは何気なく日常を過ごしていますが、何かにつれ「感情」に支配されいつしか冷静に考えることを放棄しているのではないでしょうか。

本書は著者の津崎良典(つざき・よしのり)さんがデカルトの思想を基にマイナスの感情を物事を冷静に考えることで乗り切る方法を説いてくれています。

つまり、「冷静に考えることこそがすべてを好転する」ということです。

なぜ冷静に考えることがすべてを好転させるのか?

なぜ冷静こそが物事を好転させるのかの理由が次のとおりです。

  • 「早とちり」や「思い込み」を回避できるから

  • 物事を「明確かつ判明」に認識できるから

  • 自分自身のうちを知ることができるから

たぶん誰でも感情に支配されると正しい判断をするのが難しくなります。

そうすると「早とちり」や「思い込み」を引き起こし誤った判断をしかねませんし、物事がぼやける可能性もあります。

一方で冷静に物事を見ることでそのものの本質を「明確かつ判明」に認識できるのではないでしょうか。

冷静に一から考え直すことで自分自身のうちにある判断基準を知り、見つめ直すことができます。

結果、深く物事を捉えることができ、少なくとも感情に左右されない自分なりのニュートラルな答えにたどり着くことができるというわけです。

結果、熟慮した答えを出すことができ自分自身のうちを知ることもできます。

そうなれば、自分でも納得し、物事も好転する可能性が大きくなるということです。

冷静に物事を考えるには何が必要か?

冷静に物事を考えるためには何が必要かというと次のとおりです。

  • 正しい検証の実践

  • 「初志貫徹」と「臨機応変」の両立

  • 休み

早とちりや思い込みを回避するためには、正しい検証を実践するべきです。

それは、「何ごとも明確かつ判明ものにだけ注目し、小さく分け、順序立てて考えていく」ということの実践です。

正しい検証を実践するためには、ただ単に検証で得た知識を詰め込むだけではなく知識を知恵に結びつけるための学びが必要です。

それには「初志貫徹」と「臨機応変」の両立が鍵を握ります。

一見相反することに見えますが、自分がベストだと判断したことを最初から最後まで成し遂げることが第一だが、あくまでも「しなやかに」ということです。

なぜなら、人間は長い年月の間に少しずつでも思考が変わっていく可能性があり、そうなることは誰にもわからないからです。

たとえば、過去にお酒を飲まないと決めたからといって、十年後とかもそのままかは本人を含め誰にもわかりません。

初志貫徹だからといって「お酒を飲まない」という意志は本性からすれば自由であり、決して強制されてはいません。

ならば時と場合、さらに本性に自由になって臨機応変に思考を変更することだってあるかもしれません。

それには第一に冷静に対応することが必要ではあります。

「休む」ことも必要です。

物事が煮詰まってくると頭のなかがグジャグジャになり、思考停止になる場合があります。

そんなときはとにかく休みましょう。

デカルトを含め、多くの哲学者は煮詰まった思考をほぐすためによく散歩をしたそうです。

あれこれ考えていたことを散歩しながらいったん忘れる。そして余裕のできたところに別の思考が生まれるということがあります。

精神的にまいっているときの解消だって何も考えずに休むしか方法はないでしょう。

デカルトは王女エリザベトにも散歩することでの精神安定の効用を説き進言したと言います。

冷静に物事を考えるには、何よりも物事を正しくとらえる必要があり、それには意志をもちかつ臨機応変に対応することが必須です。

それに加えて、正常な精神状態に保つよう心がけ、必要に応じて休むことが大切なのです。

どうすれば冷静に対応することができるか?

では、どうすれば冷静に物事に対応できるのでしょうか?

本書から見た方法が次のとおりです。

  • 難問は分割する

  • 悲しみは少しずつ解消する

  • 知識を獲得する手段を手に入れる

難問をかたまりのまま考えても答えにつなげるのは難しいものです。

というのも難問をまずは単純で原初的な概念のレベルにまで分解しなければ、いったい何に悩んでいたりつまづいているかがわからないからです。

その何かを見つけるためにも小さく分解し、その一つ一つを明晰にするべきです。

正しい判断をするためには精神を安定させなくてはいけません。

こと悲しみなどの感情にとらわれた状態では、精神を安定させることはできません。

しかし、悲しみというのはそうは簡単に解決しません。ですので悲しみは少しずつ解消するすべも必要でしょう。

デカルトは悲しみに打ちひしがれた親友に当てて、「どのようなことであれ自分の身に起きた辛い出来事は、自分にとって好都合な角度から眺める努力をしてごらん」とアドバイスします。

なんだか慰めにもならない意見に見えますが、それを承知の上で、このようなアドバイスを送りました。

いくら悲しみや辛いことでも見方を変えることで「これならギリ耐えられる」という視点を見つけられれば、少しは精神的に楽になるはずです。

悲しみをただ単に「悲しい」とだけ考えないことに哲学の深みを感じるのは私だけでしょうか。

そして、冷静に考えられない理由の一つに「何も知らない」「何もわからない」ということの不安があるのではないでしょうか。

そういった場合は、正しく情報を知ることでいくぶん冷静になれるというものです。

つまり、「知識を獲得する手段を手に入れる」ことで対応できるということです。

デカルトは知識を獲得する手段は少なくとも4つあると言います。

まず第一に「物事を理解できる状態に分解する」。第二に「自分の感覚を研ぎ澄まし経験する」。第三は「他者との情報交換」。第四は「読書からの学び」ということです。

他にもあるでしょうけど、私たちが知識を獲得する手段の主なものはこんなところでしょう。

このとき大事なのが、「常にニュートラルにとらえる」と「事実としてもまずは疑ってみる」という哲学的な見方なのでしょうね。

偏見や妄信することが一番よくないということです。

情報過多の現代に生かすために

情報過多で移り変わりの速い現代社会は、自分で判断し取捨選択することがすごく難しいと感じる人は少なくありません。

そんなときに物事を瞬時に考え処理できる人は、難なく乗り越えていけるのでしょうけど、その他大勢はなかなかに大変だと感じているはずです。

ですので、あらかじめどんな場合でも冷静でいるための準備は必要だと思います。

デカルトは誰もが持っている心理、そして絶対的な「真理」をうまく融合させるための方法を哲学を通じて教えてくれていると感じます。

ちょっと偉そうに言いますが、デカルトを知るための入門書として本書はかなり優秀だと感じました。

この本は読んだ人の数だけ答えがあると思います。ぜひ社会人なら読んでいただきたい一冊です。




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